新人が職場に適応し、いきいきと働くためのヒント 昨今の新入社員の特徴 〜研修現場を通じて〜

執筆者情報
人材開発トレーナー
足立 美穂

新人研修に携わって10年近くになります。毎年、100名を超える新人の方々と関わらせていただいていることを振り返ると、この10年で1,000名以上の「社会人としてのスタート」をサポートしてきたことになります。ゆとり世代、就職氷河期といった環境を経てきた新人の特徴と、新人が職場に適応し、いきいきと働くためのヒントを考えたいと思います。


年の差や立場の違う人に対し自ら働きかけられない

最近は、受講者の気質や行動の変化を感じます。例えば研修の最初に自己紹介する時間を設定すると、以前でしたら、「趣味は?」といった即興的な質問が次々に飛び交い、ざっくばらんな場が形成されていたものでしたが、ここ数年、そういう質問は出にくく、一人ずつ淡々と話していく杓子定規な場になってしまうことが多くなりました。

また、「あの講師、怖そうだから、きちんとやろうよ」「ここさえ乗り切ればあとは楽っぽいよ」といった“やんちゃな発言”も聞こえてこなくなりました。同じ年代ですから、ある程度の時間が経てば、グループ内で自然に打ち解けあったりするものですが、最近は打ち解けるまでに時間がかかるようになりました。
グループのリーダーを選出する際も、以前は自ら立候補したり、「あなたが適任よ」と女性が男性を指名したりして、自然に決まっていくことが多かった。しかし最近はそうも行かない。時間がかかることはもちろん、誰もが尻込みした挙句、「リーダーは決めなくていいんじゃないですか?」という意見が通ってしまうグループも存在します。 同世代間でその状況ですから、年上の人とのコミュニケーションは難しいと感じている方がほとんどです。例えば、研修時に、トレーナーが「トレーナーを職場の上司と捉えてみてください。何でも質問、相談してください」と伝えても、丸一日、誰も相談に来ないということも増えています。そして、質問がないのかというとそうではなく、「○○についてはよくわかりませんでした。質問したいと思っていました。」という話が後で出てくる。

以前は「トレーナー、すみません!」という声があちこちから上がりました。その場合は「実際の職場でも上司を自分のところに呼びますか?」という具合に、職場での行動や言葉遣いについて考えさせることができました。今はまず、上司に声をかけることの重要性を認識してもらうことからのスタートになっています。

今年目立つのは、周囲を気にする「状況適応型」

若手社員や職場の上司に話を聞いてみると、実際の職場でも新人は同じ状況で、先輩や上司に、仕事でわからないことや困ったことを教えてもらおうと思っても、悩んだ挙句、「『忙しい』と断られたらどうしよう」「『こんなこともわからないのか』と怒られたらどうしよう」と、躊躇する傾向が強いそうです。
実際、そうやって断られたり、怒られたりすると、新人は「言わなければよかった」「『空気をよめ!』と言われてしまった」と落ち込むことも多く、ダメージを受けると聞きます。

実際の職場では、上司や先輩と関わらずに仕事がうまくいくことは少なく、こんな状態が長く続くと、自己効力感も持てず、最悪の場合はメンタル不全を発症して会社を辞めるという結果にもなりかねません。
こうした現象の背景には、集団で活動する、年齢が上の人と会話するという経験が少なく、同時に自ら積極的に周囲に働きかけるという経験が少ないという現実がうかがえます。子供の頃からゲームを手に遊ぶ、携帯電話でコミュニケーションをとり、中学〜大学におけるクラブ活動やサークルへの参加率も年々減少の傾向が見られます。不況というと学生はアルバイトをしているというように思われがちですが、実際は学生より時間の融通がきくフリーターが優先され、なかなかアルバイトに就けないといった厳しい現実もあるようです。

しかし、ここ数年は新人を集団として見た時に、一括りにはとらえられないと感じます。集団活動や年齢が上の人との会話の経験値が多い人と少ない人、また、積極的に自ら周囲に関わっていける人とそうではない人もそれぞれ存在します。そして、後者の人数が多いように感じるというのが現状です。

後者の人は、その場の状況をよく観察しています。それに応じて自分の行動をあわせていきます。自ら前に出て行くという人は少ないような気がします。これは空前の就職難の影響も考えられます。第一志望どころか、何十社受けても話も聞いてもらえなかった、という人が多い。新入社員研修の自己紹介で「今までで一番辛かったこと」というテーマでは「就活」、「今までで一番嬉しかったこと」というテーマでは「内定がもらえたこと」、そんなエピソードが今年は特に多かったです。研修場面においても、面接場面がよみがえっているのか、萎縮しているように見える人も少なくありません。

「小粒」ではなく、「自己完結」してしまっている

最近の新人たちを、職場の人たちは「小粒」「草食系」と呼ぶことも多いようですが、「自己完結型」なのではないでしょうか。
今どきの新人のもっている能力が低いとか人間としての器が小さいというわけではありません。課題を与えると、こちらが感心するくらい、高いレベルまで仕上げてくるグループがある。細かい部分へのこだわりのようなものもアウトプットに反映されていることも多いのです。

つまり、困ったことがあっても周囲に働きかけず、自分だけで何とかしようとする傾向が強いだけ。それが周囲には小粒と映り、草食系に見えるのではないかと思います。でも職場では自己完結型ではやっていけません。研修を通じて、新人自身もそのことに気付き、自らの行動を変えようとしているのです。

研修を通じて変化は生まれます。研修の中での課題に対して、多くのメンバーが最初はただ取り組んでいる状態です。その状態から「いい仕事をしたい」「結果を形にしたい」「自分も相手も満足する状態を実現したい」「相手の期待を超えたい」という状態に変化していきます。一緒に課題に取り組む同期に対しても真剣に関わっていく状態が生まれ、最後には「このメンバーで仕事ができてよかった」という感想も出てきます。受身だったメンバーが「研修の最後に○○について全員で話したいので、時間を下さい」と相談してくることもありました。先ほどの自ら積極的に周囲に関わっていけないという人にも変化が起きるのです。

私たちが実施している新入社員研修の存在意義はそこにあると思います。集団で働き、成果を上げるための基本を学ぶ期間です。とはいえ、こちらが教える、導くのは簡単ですが、それだけでは自らが変わったことにならず、会場を出たらすぐに忘れてしまいます。そうではなくて、新人自らが気付き、意識することが大切だと考えています。

新人にとって職場は大きな意味を持っている

ただ、職場で新人自ら気付き生まれているその変化を定着させることができるかどうか、そのことの鍵を握るのは本人だけなのでしょうか。

同じ職種に配属され、1年で辞めてしまう若手、辞めない若手、双方の話を聞いたことがあります。辞めてしまう若手は上司との会話といえば仕事の数字の話をすることが多く、いかにも辛い顔の上司が印象に残っていたそうです。

一方の辞めない若手。仕事がきついのは同じでも、上司と一緒に出張したり、よく飲みに行ったりして、通常の仕事以外の場面で接する機会がとても多く、上司が笑ったり喜んだりする顔をよく見ていたといいます。
辛い顔を見ていると話しかけづらく、笑っている顔を見ていれば話しかけても大丈夫かなという感触が彼らの中には生まれていたのかもしれません。
だったら、飲みに行けばいい、ということではありません。上司と新人の関わりのなかで、「自分から周囲の人に働きかけても大丈夫」といった感触を新人が持てるかどうかに始まり「自分はこの職場で仕事をすることによって成長できる」といった気持ちになれるかどうかが新人定着の「鍵」につながっている気がします。

さらには、上司以外の存在も重要です。「そんなことは俺も失敗した」「誰でもあることだよ」先輩にとってはただのつぶやきかもしれませんが、新人にとっては大きな意味を持つ一言になることもあります。例えば「海外を視野に入れて毎日を過ごすことが大事なんだ」と上司が唱えても響かない若手に「君は国内だけにいるのはもったいない。海外でもやれるよ」といった同期や先輩の一言が刺さることがあります。
小さなことかもしれませんが、自らの気付きによって周囲と関わっていこうとする新人の姿勢、上司や先輩、同期との接点、関わり。それらを大事にしている職場においては新人は成長を実感しているように思います。研修で出会った新入社員の方々がそういう状態になっていくことをこころから願っています。

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