「きく、はなす、みる」の3つの領域をさらに細かく分類 コミュニケーション力は本当に向上するのか?

執筆者情報
人材開発トレーナー
隈本 秀夫

現在、コミュニケーションの基本的なスキルを向上させるプログラムを開発中です。まだトライアルの段階ですが、その過程で起きたいくつかのエピソードなどをご披露し、私見ではありますが、コミュニケーション力の向上のポイントとは何かを、お伝えできればと思います。ここでは、“コミュニケーションとは意思の疎通、意味と感情の交流である”(「コミュニケーション力」 齋藤孝著)と定義しておきたいと思います。


1.コミュニケーション力低下の現実

トレーニングの現場で14年間仕事をしていますが、最近、グループ討議が面白くありません。議論が平板で、個々の話が絡んでいかないのです。自分の言いたいことを一方的に言い、素直に相手の話をきくだけで、突っ込んだり、反論したりしない。議論を経ても、新たな意見に昇華していかず、いわゆる議論の生産性が落ちてきているように思われます。

その原因はいろいろと考えられます。しかし、議論している場面をじっくり観察すると、コミュニケーションの基本的なスキルができていない人がたくさんいることに驚かされます。話の要点が不明確であったり、相手の意見をきちんときけていなかったり、場の状況がみえていなかったりといったことです。
職場の現状をみれば、状況はさらに深刻になっているようです。「パソコンの方を向き、お互いの顔をみずに会話を交わす」、「至近距離の人とメールで情報を伝え合っている」、「そもそもオフィスで挨拶をしない」などです。パソコンやメールでの情報のやり取りを否定するものでは決してありません。しかし、メールで送信したから、“伝わった”“理解してもらっている”と思っている人もいるようですが、いかがでしょうか。ある部長さんの話。「こんな大事なことをメールだけで済ませるつもりか!と部下をしかったら、『お詫びの絵文字を添えているのをご覧にならなかったのですか?』と怪訝そうな顔で言われて、唖然とした」という笑えない話もあります。

2.向上のポイントは、自己理解を深め感受性を高めること

このプログラムは、コミュニケーションリテラシーとして、「きく、はなす、みる」の3つの領域をさらに細かく分けて、ロールプレイ中心に繰り返し訓練していきます。

例えば、「きく」は、
1.相手を見てうなずく
2.相づちを打つ
3.相手の言葉を繰り返す
4.言い換える
5.質問する など。
1〜5のステップを、個別にテーマを決めてトリオで行います。カーディーラーのトップセールスのかたですら、実は、相槌のタイミングに苦労していたり、相手の言ったことを自分の言葉に言い換えることの難しさを実感されているようです。しかし、繰り返しの中でみるみる上達し、単純に相手を「みて」「きく」こと、「はなす」ことだけでも、話の伝わり方が大きく違うことを体感されます。

繰り返しロールプレイを実施することには、スキル向上のねらいもありますが、それ以上に、相互にフィードバックしあうことに意味があります。3分から20分程度のロールプレイをみて、相手に対して、細かくアドバイスすることを課すことで、自然と相手の表情や微妙な言い回しにどんどん敏感になっていきますし、それを相手に伝えていけるようになっていきます。「目線が下がっていましたよね」「返事のタイミングが一呼吸早いので、いやいや言っているように感じました」。びっくりするくらい、詳細なフィードバックがなされ、徐々に自己理解や対人感受性が高まっていくのがわかります。こうしたこと繰り返しながら、質問したり、話したりするときに、相手の表情から読み取って、どのタイミングが効果的か、何を言えばよいのかを感覚的につかんでいただけます。

プログラムの総仕上げとして「みる」をやります。
セッションのメインは会議場面を想定したロールプレイです。会議リーダーとして、場をみながら、「きく」「はなす」をトータルに駆使し、やり取りができるようにしていきます。印象レベルではありますが、いわゆる、“場”がみえていて、相手に対してどのような状態であったかをきちんとコメントできる人と、会議運営でスムーズなやり取りができる人の相関が高いように思われます。効果的なコミュニケーションは、「きく・はなす・みる」のトータルな力が必要ですが、とりわけ「みる」スキルが“要”となるようです。自分自身を「観る」力=自己理解が深まり、自分のクセを修正することにもつながっているようです。

3.壁にぶつかる。突破力は家族とのコミュニケーション

「きく・はなす・みる」のどの領域においても、ある一定のレベルに達すると、いくつかの壁にぶつかります。
1.基本行動が継続しない、日常化できない
2.意味を理解できる範囲に限界がある
3.自分の気持ちや感情、癖をコントロールするのは難しい、などです。

これらを突破するには、明確化した課題を日常生活の中で地道に改善していくことに尽きます。その時に、家族は絶好の練習対象となるようです。

プログラムの中で、家族の方と一緒に「きく・はなす・みる」の個別課題に取り組んでいただきます。例えば「相手をみて、うなづきながら話を“きく”こと!」などです。「急に態度が変わり、気持ちが悪い〜どうしちゃったの?」など、家族から皮肉られながらも、受講者は果敢にチャレンジされます。「よめさんとこんなに長時間、向き合ったのは何年振りでしょうか…」「じっくり聞くと、家内が本当はなにが言いたいかが分かりました」「相手をみて、話をきいていると話が弾みますね」「娘から、話をきいてもらってうれしかったといわれました」など、訓練を超えたような感想をもらうこともたびたびでした。

企業や組織においては、その人の立場や権威で相手を動かすことも可能ですが、家族にはそれは通用しません。コミュニケーション態度の変容において、家族は本物と偽者を見分ける機能を持っているように思われます。家族から「お父さん、話し方が変わったね」と言われることは本当の意味で「本物」になったということかもしれません。

より本物に近づけるには、身近なところでの変化・成長を自分のものとして体得し、定着させることが重要です。そのことを通して、はじめてコミュニケーション力向上も可能になるように思われます。

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