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用語集

ハインリッヒの法則とは

  • 公開日:2023/06/20
  • 更新日:2024/03/16

ハインリッヒの法則とは、アメリカの安全技師であったハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏が調査をもとに導き出した法則で、「1:29:300の法則」とも呼ばれています。ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の裏には29件の軽傷事故と、300件の無傷害事故が隠れていると考え、事故の背景にはさまざまな危険性(ヒヤリ・ハット)があることを示しています。そのため、重大事故を防ぐためには、日頃からヒヤリ・ハットに注意を払うことが非常に重要です。
ハインリッヒの法則は1931年発行の『Industrial Accident Prevention-A Scientific Approach』という著書によって広まり、1951年には日本でも『災害防止の科学的研究』として翻訳されました。その後、日本でもハインリッヒの法則が重視されるようになり、現在もさまざまな労働現場で活用されています。

ハインリッヒの法則とはどのような意味?

ハインリッヒの法則とはどのような意味?

ハインリッヒの法則に似た「バードの法則」

ハインリッヒの法則に似たものとして「バードの法則」があります。バードの法則は1969年にフランク・バード氏によって提唱されたもので、297社における175万件の事故報告をもとにした法則です。

ハインリッヒの法則が労働災害のリスクを1:29:300という比率で考えるのに対し、バードの法則はハインリッヒの法則に物損事故が加えられ、1:10:30:600という比率でリスクを表しています。そのため、「1:10:30:600の法則」とも呼ばれています。ハインリッヒの法則とリスクの比率は異なりますが、「重大事故の背景には多数のヒヤリ・ハットがある」という考え方は同じで、重大事故を起こさないためには、事故が発生する可能性の芽を摘み取ることが大切です。

〇バードの法則における事故比率
1:重症をともなう重大事故
10:軽傷をともなう事故
30:物損のみの事故
600:怪我や物損寸前の危機的状況

ヒヤリ・ハットが起こる理由

ヒヤリ・ハットが起こる理由

ヒヤリ・ハットとは、労働現場において大きな事故につながる可能性のある事象のことで、ヒヤリとしたり、ハッとしたりする出来事を指します。

ヒヤリ・ハットは「設備などの不具合によるもの」と「ヒューマンエラーによるもの」の2つに分けられます。「設備などの不具合によるもの」としては、設備の老朽化や整備不良などが挙げられ、定期的なメンテナンスや設備交換でヒヤリ・ハットを防ぐことが可能です。

一方、「ヒューマンエラーによるもの」には、作業への不慣れや油断、焦り、疲労、コミュニケーション不足などが挙げられます。例えば、入社したばかりの新入社員は業務に慣れておらず、リスクに対する認識も曖昧なため、ヒヤリ・ハットが起こりやすいといえるでしょう。ベテラン社員においても油断したり、疲労で判断力が低下したりすると、ヒヤリ・ハットが起こりやすくなります。このようなヒューマンエラーから生じるヒヤリ・ハットに対しては、事故事例の共有や安全教育を実施することが有効です。

ハインリッヒの法則の考えでヒヤリ・ハットを防ぐポイント

ヒヤリ・ハットは重大な事故につながるケースもあるため、業種に限らず未然に防ぐことが重要です。ハインリッヒの法則の考え方においては、以下の項目を実践することでヒヤリ・ハットを防げます。

ヒヤリ・ハット報告書の作成を実施する

ヒヤリ・ハットが発生した際は報告書の提出を義務付けましょう。 ハインリッヒの法則をうまく活用するためには、ヒヤリ・ハットが起きた段階で状況把握や情報収集をすることが効果的です。同じミスでも、ヒヤリ・ハットと捉えるかどうかは人によって異なるため、まずは危険性が高い場所や作業を割り出し、起こりそうなリスクを指摘してもらうところから始めると良いでしょう。

ただし、なかには報告を面倒に思ったり、個人の特定を警戒したりする人もいるでしょう。手間をかけず安心してヒヤリ・ハットを報告してもらうためにも、報告書には名前の記入を求めず、手軽に報告できる仕組みをつくることが大切です。

ハインリッヒの法則を用いた安全研修を実施する

ハインリッヒの法則の概要やその重要性を理解してもらうために、安全教育を実施しましょう。ハインリッヒの法則は多くの企業で活用されているものの、安全活動に関わったことのない従業員にとっては初めて聞く言葉かもしれません。また、聞いたことはあっても内容まではよくわからないという人もいるため、安全教育は必須です。

安全教育を行うことでハインリッヒの法則や重要性への理解が深まるほか、従業員全員が同じ認識を持ってヒヤリ・ハット予防に取り組めます。

ヒヤリ・ハット事例を出し合い従業員に討論させる

従業員からの報告や関連業界などの事例をもとに、ヒヤリ・ハットが発生した原因や対策方法について議論する機会を定期的に設けましょう。これにより、安全に対する意識の向上につながります。

ただし、定期的な議論や討論は形骸化しがちなため、毎回違うメンバーを参加させたり、議論の内容を人事評価に役立てたりするなどの工夫も必要です。

全体がそろう場面で事故予防への意識を高める

安全大会などを実施し、全従業員がそろう場面でヒヤリ・ハットの事例や実体験、防止策の共有、発表や報告が多かった従業員の表彰などを行いましょう。安全大会とは従業員を災害から守る目的で開催される集会で、建設業や製造業などでは定期的に執り行われています。内容は各企業によってさまざまですが、安全講話や対策訓練、表彰式などを行うのが一般的です。

安全大会のような全員参加の場での発表は、ヒヤリ・ハットを自分事として捉えさせ、安全への意識を高めることにつながります。

ヒヤリ・ハットを社内で共有する

ヒヤリ・ハットの情報を社内で共有できる環境を整えましょう。

また、ヒヤリ・ハットの報告書を提出しても、その内容を従業員が閲覧できなければ予防につながりません。報告された内容と同じような状況に陥らないためにも、報告書の内容は社内で共有することでヒヤリ・ハットを予防することが大切です。

社内共有の方法としては、掲示板に貼ったり、メールで周知したりして、従業員の目にとどまるようにするのが一般的です。特に重大なヒヤリ・ハットの情報については、報告書を一緒に掲示するなどして注意喚起を促しましょう。

ハインリッヒの法則の考えでヒヤリ・ハットを防ぐポイント

企業におけるヒヤリ・ハットの事例

ここからは、厚生労働省のヒヤリ・ハット事例のなかから、特に数が多い事例をご紹介します。

墜落・転落に関する事例

キャビネットに並べてある資料をとろうとしたところ、転落しそうになった

職種
全般

作業の種類
事務作業

ヒヤリ・ハットの状況
クライアントを間違えてメールや資料を送ってしまうことや、相手の名前を間違えてメールを送信してしまった。

原因
思い込みやケアレスミスで送信先や相手の名前を確認せずに送信してしまった。

対策
メールを送る際に宛先や文章などに間違いがないかチェックを習慣付ける。そのほかにもツールを使用し、メール送信に一時保留をする時間を設け、誤送信が発生した際に取り消せるようにする。

転倒に関する事例

席から立ち上がったとき、引き出しにつまずき転倒しそうになった

職種
商業

作業の種類
事務作業

ヒヤリ・ハットの状況
事務所内で、机の席から、FAXを送信しようと立ち上がり振り向いたところ、移動式袖机の引き出しにつまずき転倒しそうになった。

対策
机や椅子のまわりは常に片づけを行い、歩くスペースを確保する。机や袖机の引き出しは使い終わったら閉める。

引用:職場のあんぜんサイト:ヒヤリ・ハット事例(転倒)| 厚生労働省

飛来・落下に関する事例

ロッカーから段ボール箱が落ちて身体に当たりそうになった

職種
その他の事業

作業の種類
事務

ヒヤリ・ハットの状況
午後3時30分頃、事務所において、書類を取り出すため、両開きのロッカーの扉を開けたところ、ロッカーの上に置いてあった段ボール箱が落下し、身体に当たりそうになった。

引用:職場のあんぜんサイト:ヒヤリ・ハット事例(飛来・落下)| 厚生労働省

厚生労働省のサイトに掲載されている事例以外にも、ヒヤリ・ハットはあらゆる職種や職場に潜んでいます。経営危機を招くような重大なコンプライアンス違反の背景には、一歩間違えれば不祥事につながる可能性のあるヒヤリ・ハットが多数隠れているものです。

また、お客様から寄せられた1件のクレームの背景には、同様の不満を持つお客様が多数存在していることが考えられます。そのため、ハインリッヒの法則はあらゆる職場に有効だといえるでしょう。

まとめ

ハインリッヒの法則は建設業や製造業をはじめ、あらゆる職種や職場で活用できる法則です。

重大な労働災害の背景には300件以上の小さな事故が隠れており、トラブルを未然に防ぐためにはヒヤリ・ハットを起こさないようにすることが大切です。まずは安全研修などでハインリッヒの法則の理解を深めたうえで、身近なところに潜むヒヤリ・ハットを洗い出してみましょう。

また、ヒヤリ・ハットの防止には状況把握や情報収集が欠かせません。報告書の提出を職場に浸透させつつ、事例の社内共有や討論、安全大会などを実施し、従業員の安全に対する意識を高めていきましょう。

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