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さあ、扉をひらこう。Jammin’2023 entrepreneur interview

Awardの事業案のいくつかは、本当に実行したらいいと感じた。これはスゴイ成果だ〈起業家インタビュー〉

  • 公開日:2023/09/25
  • 更新日:2024/05/16
Awardの事業案のいくつかは、本当に実行したらいいと感じた。これはスゴイ成果だ〈起業家インタビュー〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」は、2023年で5年目を迎える。 Jammin’2023がスタートするにあたって、「2022 Jammin’ Award」で審査員を務めていただいた田口一成氏にインタビューした。 ボーダレス・ジャパンの創業者として、これまで世界中で数々のソーシャルビジネスを創出・展開してきた田口氏に、事業創出のポイント、Jammin’ Awardの感想、今後のJammin’に期待することなどを伺った。  

その事業案には、小学生が見ても分かるインパクトがあるか?
大企業のリソースが社会課題解決につながることを期待して
スモールビジネスの1歩目まで経験できたらよいのでは

その事業案には、小学生が見ても分かるインパクトがあるか?

田口 一成 氏
株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長

1980年生まれ、福岡県出身。早稲田大学在学中に米国ワシントン大学へビジネス留学。 卒業後、(株)ミスミ(現 ミスミグループ本社)を経て、25歳で独立し、ボーダレス・ジャパンを創業。
現在、世界13カ国で48のソーシャルビジネスを展開し、従業員は約1,500名、グループ年商は75億円を超える(2023年7月現在)。
日経ビジネス「世界を動かす日本人50」(2019年)、Forbes JAPAN「日本のインパクト・アントレプレナー35」(2019年) に選出された。
著書に『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(PHP研究所)がある。

オンライン画面の田口様

オンライン取材でJammin’へのエールを送ってくれた田口氏


――田口さんのこれまでの人生を教えてください。

高校や大学の頃から、有意義な人生にしたい、人生を賭ける価値のある仕事をしたい、と思っていました。大学2年のとき、アフリカで飢餓と栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て、「これだ!」とNPOの世界に飛び込んだんです。その現場で、NPOが予算不足によって活動の制約を受けている現実を知りました。それなら、自分はNPOをお金で支える方に回ろうと思い、大学3年のときにワシントン大学に留学し、自分なりのビジネスプランをつくりました。卒業後は、経営者修行のためにミスミに入社。2年間、実地で経営を学び、相手を大切にしながら働くことの大事さを肌で知りました。

そして25歳のとき、仲間と共にボーダレス・ジャパンを起業し、2年目からソーシャルビジネス専業の会社になりました。やはり人助けをする事業でないと意味がないと思ったからです。そうして20年近く、ボーダレス・ジャパンを続けてきました。2023年8月現在、世界13カ国 で48社のソーシャルビジネスを展開しています。2021年に『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(PHP研究所)を出版しましたが、そのタイトルどおり、私たちはビジネスで社会問題を解決する集まりとして活動しています。

――ボーダレス・ジャパンが大切にしていることは何ですか?

私たちが最も大切にしているのは、「そのソーシャルビジネスの事業案には、小学生が見ても分かるインパクトがあるか?」ということです。例えば、「世界最貧困の人たちの雇用を生み出すビジネス」という案なら、小学生にも伝わるくらいのインパクトがありますよね。そうやって誰にでも分かりやすく、明確な社会課題の解決を行うことにこだわっています。

また、事業目的をいったん定めたら、決して逸れないようにしています。例えば、「世界最貧困の人たちの雇用を生み出す」と決めたら、私たちは貧困国で暮らす働く場所のない人たちを本当に直接雇用します。そのとき、貧困国の雇用を生み出すビジネスという建前で、貧困国の既存工場に発注して間接的に雇用を生み出すこともできますが、そういうことはしないようにしています。なぜなら、一度でもそうやって目的から逸れてしまったら、自分たち自身を騙し始めるようになってしまうから。目的以上に利益を重視し始めたら、本末転倒になってしまいます。

利益も大切なんですが、ビジネスはあくまでも手段にすぎません。最も大事なのは、社会課題の解決です。儲けに走るのは簡単ですが、そうなったらダメなんです。そのために、私たちは独自のメソッドを生み出し、ビジネスが社会課題解決から逸れない仕組みをつくりました。ボーダレス・ジャパンはいま、その仕組みを活用して社会起業したい人たちの背中を押し、多くのソーシャルビジネスを生み出しています。今後は、この仕組みを世界中に広めて、チャレンジャーの数をもっともっと増やしていきたいと思っています。

――事業アイディアを生み出すときのコツを教えてください。

ボーダレス・ジャパンでは、事業プランニングは2~3カ月で終えるようにしています。事業案を考える期間は、短ければ短いほどいいですね。それ以上考えると、悩みグセがついてしまってうまくいきません。企画ができたら、すぐに実行し始めることも大切です。悩んで動けなくなるくらいなら、やりながら軌道修正していく方がずっといいんです。社会課題を放っておかずに、アクションを起こすことが最も大切です。

Awardでの田口様

半年間検討した事業案を発表し合った2022 Jammin’ Awardでは、田口氏の鋭く温かいコメントへの感謝の声があふれた

大企業のリソースが社会課題解決につながることを期待して

――審査員として参加したJammin’ Awardの感想を聞かせてください。

社会課題に関するビジネスプランコンテストなら、何か力になれることがあるだろうと思い参加しました。大企業の皆さんが参加している点にも興味がありましたね。大企業がソーシャルビジネスを1つでも生み出せば、そのインパクトは計り知れませんから。大企業のリソースが社会課題解決につながることを期待して、審査員を引き受けた部分もあります。

Awardに参加して驚いたのは、事業案のレベルの高さです。Awardで皆さんが発表した事業案のいくつかは、本当に実行したらいい、と感じました。そのまま実行するのは難しいかもしれませんが、少なくとも目のつけどころはすばらしく、アイディアの種としては十分な水準に達している事業案が複数ありました。これはスゴイ成果です。

Jammin’参加者の皆さんは、新規事業開発にはじめて取り組んだ方も多いと聞いています。そうした皆さんがチームを組み、Jammin’の方法論に従って真摯に取り組めば、たった半年間で優れた視点の事業案を創出できるようになるというのは、私にとって新たな発見でした。Jammin’の可能性を感じました。

――Jammin’オーナーの経営者や人事の皆さんにアドバイスをお願いします。

大企業から相談を受けたとき、必ずお伝えしているのは「最低でも売上〇〇億円という目標を立てるのは絶対にやめた方がいい」ということです。なぜなら、具体的な売上目標を立てると、予測可能な事業しか生み出せなくなるからです。事業創出で最も大事なのは、「予測不可能性を大事にすること」です。そのためには、売上目標をつくらないことが必須なんです。

大企業がソーシャルビジネス創出に本気で取り組むなら、社外に「出島」をつくるほかにないでしょう。出島には売上などを一切期待せず、新規事業が1つでも花開いたら丸儲け、というスタンスで臨むことをお薦めします。そうすれば、もしかしたら予想だにしなかったビジネスの創出ができるかもしれません。

私たちボーダレス・ジャパンでは最近、大企業からの出向者受け入れサービスを始めました。私たちが大企業に最も貢献できる方法を試行錯誤して、このサービスにたどり着きました。なぜなら、結局は「人」だからです。ソーシャルビジネスに挑戦したい、という想いを持つ個人を増やすことが一番大事なんですね。できるだけ多くの人がソーシャルビジネスを生み出したり、関わったりする社会にしないと、良い社会をつくることはできません。その意味で、Jammin’は私たちと同じ方向を向いています。ソーシャルビジネスに取り組む人を増やす活動として、Jammin’に期待しています。

――2022 Jammin’ Awardで、田口さんが「私たちは地球同期だ」とおっしゃっていたのが印象的でした。まさに社会を良くする「地球同期」を増やしたいわけですね。

そのとおりです。

スピーチをする田口様

2022 Jammin’ Awardでスピーチする田口氏。「私たちは地球同期だ」という言葉に会場が1つになった

スモールビジネスの1歩目まで経験できたらよいのでは

――今後のJammin’に何を期待しますか?

難しいことは重々承知のうえで提案しますが、参加者が単に事業案を考えるだけでなく、Jammin’で「スモールビジネスの1歩目」まで経験できたら最高だと思います。例えば、各々のチームがクラウドファンディングに挑戦し、50万円とか100万円とかを集めて、それを元手に2カ月だけスモールビジネスを試しにやってみるんです。

この取り組みで得られるものは2つあります。1つは「マーケティング思考」です。ボーダレス・ジャパンでもJammin’でも感じることですが、マーケティングが苦手な方が多く、ユーザー視点を深く掘り下げられていないことがよくあります。その点、クラウドファンディングでは寄付を募るために多くの人が分かるような説明をする必要があり、ユーザー視点での思考が鍛えられるんですね。

もう1つは「ちょっと経営してみる経験」です。ビジネスは、実際に経営してみないと分からないことが本当に多いんです。たった2カ月でも、自分たちでビジネスをしてみたときの学びは深く大きいでしょう。それにクラウドファンディングにチャレンジすると、寄付してもらったお金に責任を持つことを覚えます。大企業のリソースがいかに貴重なものかもよく分かるはずです。こうした学びも、企業に戻った後で役立つはずです。

――田口さんは今後、どのようなことに取り組もうとしているのですか?

引き続き、ボーダレス・ジャパンの仕組みづくりに力を尽くしていきます。この仕組みは、変化しつづける未完の建築物のようなもので、いまも一つひとつ組み立てている最中なんです。例えば、私たちはボーダレス・ジャパンの仲間たちの総体をどのような名前にするか、長く考えてきました。最近ようやく「ボーダレス・カンパニオ」という名前に決まりました。カンパニオとはカンパニー(会社)の語源で、「共にパンを食べる仲間」という意味です。社会を良くするため、共に助け合いながらチャレンジしていく仲間、という想いを込めています。こうやって仕組みをつくりつづけ、最終的には仕組みを残して人生を終えたいと思っています。

それから、「9割の社会問題はビジネスで解決できる」わけですが、残りの1割は何かというと「平和」です。平和だけは、ビジネスアプローチでは実現が難しいんですね。そこで、私たちは非営利財団を立ち上げ、平和に寄与する活動を始めています。ほかには、日本の地方議会の問題を本質的に解決する方法も模索しています。私たちがなすべきことは、まだまだたくさんあります。

【text:米川 青馬、illustration:長縄 美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

 

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