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人的資本経営とは? 意味や注目の背景、取り組むポイントを解説

  • 公開日:2023/06/20
  • 更新日:2025/03/10

人的資本経営とは、「人材」を「資本」と考え、企業価値を持続的に向上させる経営を指します。「資本」とは、ここでは「投資により付加価値を生み出せるもの」という意味です。人的資本とは、個人が持つスキルや能力などを、付加価値を生み出せる資本とみなす概念です。
近年は第4次産業革命などによる産業構造の変化や、少子高齢化、個人のキャリアに対する意識の変化など、企業の経営環境が大きく変わってきています。企業の経営では、このような経営環境の変化を見据えて人材ポートフォリオを構築するほか、イノベーションを生み出す人材の確保や育成などを行い、従業員の能力を引き出すことが大切です。
一方、投資家などは近年の環境問題や社会課題を受けて、企業のサステナビリティ(持続可能性)を評価するようになり、その判断材料として人材に関する情報開示を求めています。

人的資本経営とはどのような意味?

人的資本経営とはどのような意味?

従来の経営との違い

従来の経営では従業員を「人的資源」と考えるのに対し、人的資本経営では投資対象となる「資本」と考えるのが大きな違いです。企業の経営資源のおもな要素は「ヒト、モノ、カネ、情報」の4つで、「人的資源」はこのなかの「ヒト」にあたります。従来の経営では、終身雇用や年功序列などのように人材に対する囲い込みが発生していました。

一方、「人的資本」は従業員を資本と考える概念です。変化が激しい時代に企業価値を持続的に向上させるのは人材であると考え、人材の育成に費やす時間やお金を戦略的な投資と捉えます。また、従来の経営では、終身雇用や年功序列などで従業員を囲い込む相互依存の関係でしたが、人的資本経営では企業と従業員が互いを選ぶ自律的な関係という点も大きな違いです。その他、従来の経営では経験や勘に頼っているところがありましたが、人的資本経営ではそれだけではなくデータをもとに客観的な意思決定を行います。

その他の資本との違い

人的資本は、従業員の能力や経験といった「形のない資本」であり、無形資本(無形固定資産)の一つです。無形資本には、人的資本のほかに、著作権やノウハウといった「知的資本」、再生可能・不可能な環境資源である「自然資本」などが含まれます。これに対し、「形のある資本」として分類される有形資本には、株式や借入といった「財務資本」、建物や設備などの「製造資本」が挙げられます。近年では、米国や英国で無形資本への投資額が有形資本を上回るなど、無形資本の重要性が高まっています。

人的資本経営と従来の人材戦略の大きな違いは、人材を「資源」として管理するのか、「資本」として投資対象と捉えるのかにあります。従来の人材戦略では、人材をコストとして扱い、終身雇用を中心に人材の囲い込みが重視されていました。

一方、人的資本経営では、人材を企業価値創造のための投資と見なし、戦略的かつ積極的なアプローチをします。この手法では、感覚や経験に頼らず、データや客観的な指標に基づいて意思決定を行うため、企業と人材の双方が成長できる関係の構築が期待できます。これにより、短期的な成果にとどまらず、持続的な競争力の確保を実現するのが特徴です。

人的資本経営が注目を集めている背景

人的資本経営に注目が集まっている要因としては、例として以下の4点があります。

投資家や消費者の意識変化

目先の利益だけを追求するのではなく、自然環境や社会システムにも目を向ける「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉があります。近年の環境問題や社会課題を受けて、投資家や消費者は企業のサステナビリティを評価するようになってきました。サステナビリティには環境、社会、経済などの観点があり、このうち「社会」への取り組みとして人的資本経営が注目されています。

技術進化による市場の成熟

今後、第4次産業革命が本格的に加速し、AIやロボットが大量の情報を活用して業務を最適化できるようになっていくことが予想されます。さらに市場が成熟することで、企業では技術力のみでの差異化が難しくなっていくでしょう。そのため、競合との差異化の面で、企業においては従業員が価値を発揮できる経営が求められています。

働き方の多様化

非正規雇用や外国人労働者の雇用、テレワークやWork(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせたワーケーションの導入など、企業における働き方が多様化しています。それぞれの事情や状況に合わせた働き方を用意し、それぞれの従業員の価値を引き出す経営が求められています。

ESG投資の浸透

ESGは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を組み合わせたもので、企業が環境や社会への責任を果たし、健全な経営を行っているかを評価する重要な基準です。このESGを重視する投資アプローチである「ESG投資」が、近年注目を集め、多くの企業がその基準に対応する動きを見せています。

人的資本は、ESGの「Social(社会)」と「Governance(ガバナンス)」の要素に直接関わる重要な資産と見なされています。例えば、企業がどのように従業員に投資し、適切な労働環境やキャリア形成の機会を提供しているか、また経営において透明性や公正性をどれだけ確保しているかといった点が、企業の成長可能性を評価する重要な指標となっているのです。

こうした背景から、投資家は企業に対し、人的資本に関する情報を積極的に開示することを求めています。この情報には、従業員の多様性、スキル開発への投資、エンゲージメントの向上施策、健康と福祉への取り組みなどが含まれます。

企業はこれらを明確に示せば、投資家からの信頼を得るだけでなく、長期的な成長の基盤を築けるのです。

日本と海外での人的資本経営

日本と海外での人的資本経営

人的資本経営における人的資本の情報開示に関して、日本と海外では状況に差があります。人的資本の情報開示とは、企業の人的資本に関する情報を有価証券報告書に記載し、投資家などへ公開することを指します。ここでは、日本と海外のそれぞれの現状を紹介します。

日本における人的資本経営

日本では、企業における人的資本経営について議論が進められている状況です。日本においては、人的資本経営に関する取り組みが以下のように進んでいます。

  • 2021年6月:東京証券取引所と金融庁によるコーポレートガバナンス・コードの改訂
  • 2022年5月:経済産業省が「人材版伊藤レポート2.0」を発表。人的資本経営の土台となる議論がされた

日本では、2021年6月に東京証券取引所と金融庁がコーポレートガバナンス・コードを改訂し、人的資本や知的財産への投資などに関する情報開示と提供を求めました。

そして2022年5月には経済産業省が「人材版伊藤レポート2.0」を発表。人材戦略における3つの視点(Perspectives)と5つの共通要素(Common Factors)からなる「3P・5Fモデル」を示して、人的資本経営を具体化する際に取り組むべきことや、その際のポイントなどを表しました。

海外における人的資本経営

海外では、人的資本の情報開示に関する議論が増加傾向にあります。例えばアメリカでは、以下のように人的資本の情報開示に関する取り組みが進んでいます。

  • 2020年8月:米国証券取引委員会が上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化

米国証券取引委員会は、財務情報の開示項目をRegulation S-Xで、非財務情報の開示項目をRegulation S-Kで規定しています。人的資本の開示項目に関してはRegulation S-Kで示されています。

2022年8月、米国証券取引委員会はRegulation S-Kの第101項を改訂し、上場企業に対して人的資本の状況や人的資本に関する指標、目標などの記載を義務付けました。記載する内容の例としては、企業の事業内容や従業員の性質に応じた人材育成、従業員の入社や定着の促進、離職防止のための施策などが挙げられます。

人的資本経営に取り組むメリット

人的資本経営に取り組むメリットには以下の5つがあります。それぞれ詳しく解説します。

生産性が向上する

人的資本経営を推進すると、人材への投資が活発化し、従業員のスキルアップや成長が加速します。これにより、一人ひとりのパフォーマンスが向上し、業務全体の生産性が高まると期待されています。生産性の向上は、企業の持続的な成長に不可欠な要素であり、従業員のスキルアップやスキル獲得が企業の競争力を強化します。また、企業の成長が従業員のさらなる成長を後押しするという好循環が生まれ、組織全体の効率性や成果を最大化する効果も期待できるでしょう。

企業ブランディングにつながる

人材へ積極的な投資を行う企業は、優秀な人材を引きつけやすくなり、「働きたい」と思わせる魅力的な職場として認識されます。これにより、企業ブランドの価値が高まり、採用競争力だけでなく、消費者や投資家からの信頼性向上にもつながるのです。結果として企業の社会的評価が向上し、持続的な成長を支える基盤を築けるでしょう。

投資家の注目が高まる

人的資本経営に積極的に取り組む企業は、社会的価値を重視する投資家から高く評価されやすくなります。この結果、投資対象として選ばれる機会が増え、資金調達が円滑になる可能性があるのです。調達した資金を活用してさらに人材への投資を強化し、企業価値の向上と人的資本経営の充実を実現すれば、持続的な成長を後押しする好循環を生み出せるでしょう。

従業員の能力を可視化できる

人材育成に注力していくと、従業員の成長過程において従業員一人ひとりの能力やスキルが可視化されていくこともあります。従業員一人ひとりの能力やスキルを存分に生かせる業務が見えてくれば、それらの情報を一元管理することで戦略的な人事配置や人材開発を行うタレントマネジメントの貴重な情報資産となり、自ずと適材適所の人員配置も実現しやすくなるはずです。各従業員が得意なことや能力を発揮できるフィールドで活躍できれば、業績向上・利益拡大にも結び付くでしょう。

従業員エンゲージメントが向上する

人的資本経営を推進し、人材への投資を強化すると、従業員に成長機会を提供しやすくなります。この取り組みは従業員のモチベーションを高め、企業への帰属意識や信頼感を向上させるでしょう。その結果、従業員エンゲージメントが向上して、定着率の改善や離職率の低減につながり、組織全体の安定と生産性の向上を後押しするのです。

人的資本経営の実現に向けて必要な開示情報

2022年8月、内閣官房は「人的資本可視化指針」を公表しました。この指針は、企業が人的資本を見える化するための情報開示の具体的なあり方を示したものです。指針では、投資家やステークホルダーが評価する際に重要となる7つの分野の情報開示が求められています。これにより、企業は人的資本に関する取り組みや成果を適切に示し、経営の透明性と信頼性を向上させることが期待されているのです。

政府から情報開示が求められている7分野は下記のとおりです。

  • 人材育成
  • エンゲージメント
  • 流動性
  • ダイバーシティ
  • 健康・安全
  • 労働慣行
  • コンプライアンス・倫理

各項目を詳しく見ていきましょう。

人材育成

人材育成に関連する開示事項の例は以下のとおりです。

  • 研修参加率
  • 研修時間
  • 研修費用
  • 複数分野の研修受講率
  • スキル向上プログラムの種類、対象等
  • リーダーシップの育成
  • パフォーマンスとキャリア開発につき定期的なレビューを受けている従業員の割合
  • 研修と人材開発の効果
  • 人材確保・定着の取り組みの説明 など

エンゲージメント

エンゲージメント分野の開示事項の例は以下のとおりです。

  • 従業員エンゲージメント

流動性

流動性分野の開示事項の例は以下のとおりです。

  • 新規雇用の総数・比率
  • 離職の総数
  • 離職率
  • 定着率
  • 採用・離職コスト
  • 求人ポジションの採用充足に必要な期間
  • 人材確保・定着の取り組みの説明
  • 移行支援プログラム・キャリア終了マネジメント
  • 後継者準備率
  • 後継者カバー率
  • 後継者有効率 など

ダイバーシティ

ダイバーシティ分野の開示事項の例は以下のとおりです。

  • 属性別の従業員・経営層の比率
  • 男女間賃金格差を是正するために事業者が講じた措置
  • 男女間の給与の差
  • 男女別育児休業取得従業員数
  • 男女別家族関連休業取得従業員比率
  • 育児休業等の後の復職率・定着率
  • 正社員・非正規社員等の福利厚生の差
  • 最高報酬額支給者が受け取る年間報酬額のシェア等 など

健康・安全

健康・安全分野の開示事項の例は以下のとおりです。

  • 労働災害の発生件数・割合・死亡数等
  • (労働災害関連の)死亡率
  • ニアミス発生率
  • 労働災害による損失時間
  • 安全衛生マネジメントシステム等の導入の有無、対象となる従業員に関する説明
  • 健康・安全関連取り組み等の説明
  • (安全衛生に関する)研修を受講した従業員の割合
  • 医療・ヘルスケアサービスの利用促進、その適用範囲の説明
  • 労働関連の危険性(ハザード)に関する説明
  • 業務上のインシデントが組織に与えた金銭的影響額 など

労働慣行

労働慣行分野の開示事項の例は以下のとおりです。

  • 人権レビュー等の対象となった事業(所)の総数・割合
  • 深刻な人権問題の件数
  • 差別事例の件数・対応措置
  • 団体労働協約の対象となる従業員の割合
  • 児童労働・強制労働に関する説明
  • 結社の自由や団体交渉の権利等に関する説明 など

コンプライアンス・倫理

コンプライアンス分野の開示事項の例は以下のとおりです。

  • 業務停止件数
  • コンプライアンスや人権等の研修を受けた従業員割合
  • 苦情の件数
  • 懲戒処分の件数と種類
  • サプライチェーンにおける社会的リスク等の説明 など

人的資本経営に必要な3つの視点と5つの要素

人的資本経営に必要な3つの視点と5つの要素

前述のとおり、「人材版伊藤レポート2.0」のなかで「3P・5Fモデル」が提唱されました。「3P・5Fモデル」には、企業が人的資本経営を実現するための重要な視点や要素が記されています。ここでは、その内容を紹介します。

人的資本経営に必要な3つの視点

人的資本経営には、「3P・5Fモデル」の3つの視点「3P」が必要であるとしています。ここでは、それぞれの内容を見ていきましょう。

経営戦略と連動させた人材戦略
経営戦略とは、企業において活動の方向性を決める指標や、方向づけた活動を実現する体制作りなどの方策全般を指します。経営戦略では、将来に向けて企業の経済的、社会的、文化的価値をどのように創造していくか、実現のためにどのような体制を構築すれば良いのかを明確にします。
一方、人材戦略とは、企業が目標を達成するために必要な人材の採用や育成、配置など、人事や人材に関する戦略のことです。
人的資本経営を行うためには、人材戦略を経営戦略と連動させることが大切です。企業においては、まず経営戦略を策定し、その経営戦略を実現するためにどのような人材が必要かを定義して、自社に適した人材の採用や育成、配置などの人材戦略を練ります。

経営戦略と人材戦略のギャップを把握する
経営戦略と連動させた人材戦略を決めたら、目標と現状の隔たりを埋める必要があります。まずは目標と現状にどれだけのギャップがあるのかをできるかぎり定量的に把握し、数値化します。

「人的資本」を理解した企業文化
従来、多くの企業では人材を資源と考える傾向がありました。そのため、「人材は管理するもの」とされ、従業員の自律や自立を促す視点がありませんでした。
人的資本経営を行うためには、人材戦略を適用する前に企業や従業員が人的資本の概念を理解し、考え方や行動を捉え直す必要があります。
人材戦略を策定する際には、目指す企業文化を明確にし、経営トップが経営理念を発信して従業員に企業文化を意識付けることが大切です。

人的資本経営に必要な5つの要素

「3P・5Fモデル」では、ここまで見てきた3つの視点とともに、5つの要素「5F」が必要であると示しています。それぞれの内容を確認していきましょう。

動的な人材ポートフォリオ
人材ポートフォリオとは、企業内の人材の構成内容を表したものです。人材ポートフォリオでは、どのスキルや経験を持った人材がどの部署にどの程度いるのかなどを把握します。
「動的」には、リアルタイムという意味があります。動的な人材ポートフォリオがあれば、企業内の人材をリアルタイムで分析、把握でき、適切なポジションへの配置や将来を見据えた育成ができます。

知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
多様な人材が活躍できる環境を構築するためには、ダイバーシティ&インクルージョンの推進が必要です。
ダイバーシティには「多様性」、インクルージョンには「受容」の意味があります。ダイバーシティ&インクルージョンとは、国籍や性別、年齢などの外面の属性や、職歴やライフスタイル、価値観などの内面の属性にかかわらず、個を尊重して認め合い、良い面を生かすことを指します。
企業の人的資本経営でのダイバーシティ&インクルージョンは、上記に加え、価値創造に着目した概念です。個人が持つさまざまな経験や知見を取り入れる意味でダイバーシティ&インクルージョンを重視します。

リスキリング
人材戦略の目標と現状のギャップ解消や、従業員の自律的なキャリア構築を推進するためには、従業員に対してリスキリングに取り組めるよう支援する姿勢が必要です。
リスキリングにより、既存の人材に対して新しい技術の習得や能力の向上を促すことで、時代や経営環境が変化しても企業が柔軟に対応できるようになります。なお、組織変革のためには従業員だけでなく経営陣のリスキリングも重要です。

従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、企業や組織への愛着、貢献意欲を示す指標です。従業員エンゲージメントが高い従業員は離職率が低く、仕事にも積極的に取り組む傾向にあります。
人材を資本と考える人的資本経営において、従業員エンゲージメントを向上させる取り組みは欠かせません。従業員エンゲージメントを高めるには、対話はもちろん、従業員が納得する経営戦略の構築、就業環境の整備、多様なキャリアパスの用意などが有効です。

用語解説:エンゲージメントとは

働き方の多様性
感染症対策や災害発生などの緊急時においても事業を継続するためには、テレワークやフレックスタイム制、時短勤務など多様な働き方への柔軟な対応が求められます。
多様な働き方を用意することで、これまでの条件では働けなかった人材が労働できるようになるメリットもあります。また、前述の従業員エンゲージメントを高める効果も期待できるでしょう。

人的資本経営を行うためのポイント

人的資本経営を実践する際には、把握しておくべきいくつかのポイントがあります。ここからは、そのポイントを紹介します。

経営戦略と人材戦略の連動

人的資本経営を行うためには、経営戦略と連動した人材戦略の策定が不可欠です。人材戦略は経営の観点から立案し実行します。まずは経営課題を把握し、人材戦略に反映させましょう。

例えば、DX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)が経営課題なら、人材戦略ではデジタル人材の確保、育成への取り組みを進めます。まずは自社の経営課題を明確にし、そのうえで人材戦略を練ります。

人材戦略を策定するうえでは、自律変革し続けられる人や組織を構築することが重要です。リクルートマネジメントソリューションズでは、自律型人材の育成を一貫支援するサービスを提供しています。企業の特長を生かした制度設計だけでなく、人材開発、組織開発、運用定着といった施策遂行までを一貫してサポートします。

現実と理想のギャップの把握・改善施策の実施

経営環境の変化が激しい現代では、人材戦略と現状との間にギャップができやすいものです。人的資本経営では、常にギャップを把握し、理想と現状の隔たりを埋める施策の実施が必要です。ギャップを把握する際には、従業員のスキルや能力に関するデータを収集して分析しましょう。このとき、データはできるかぎり定量的に把握します。

理想と現状のギャップを把握したら、その隔たりを埋めて理想に近づけるために何をすべきか、施策を考えます。具体的な施策としては、採用や待遇改善などが挙げられます。これらの施策は投資と捉え、目標から逆算して考えましょう。

施策を実行する際には、目標を達成するまでの期間を設定し、この後の効果検証を含めてPDCAサイクルを回します。

改善施策の効果検証

施策を実行したら、定期的に効果検証を行います。施策実行による変化や目標達成度を把握し、施策の結果を調査します。効果検証で得られたデータは、施策の見直しに活用し、取り組みに反映させましょう。

施策の効果を高めるには、前述のPDCAサイクルを回すことがポイントです。PDCAでは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の仮説検証型プロセスを循環させることで品質を高めます。人的資本経営の実践では、目標に対して検証結果をもとに施策の見直しを図り、スピード感を持って改善策を繰り返し、実行することが大切です。

まとめ

人的資本経営とは、従業員を投資対象となる「資本」と考えて、企業価値を持続的に向上させる経営を指します。従来の経営は従業員を「人的資源」と考え、人材の育成に費やす時間やお金をコストとみなしていました。一方、人的資本経営では従業員を「資本」と考え、人材の育成に費やす時間やお金を投資と捉えます。

人的資本経営を行うためには、「人材版伊藤レポート2.0」で提唱された「3P・5Fモデル」が参考になります。実施後は効果検証を含めてPDCAを回し、スピード感を持って繰り返し改善することが大切です。

【連載・コラム】人的資本経営・開示に関する現状調査
企業の人的資本経営に対する問題意識や、今後の取り組み方針とは

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