調査サマリー

個人のキャリア自律と組織主導のリソースシフトは両立するのか

配置・異動とキャリア支援施策に関する実態調査

公開日
更新日
配置・異動とキャリア支援施策に関する実態調査

事業環境の変化への適応に向けたリソースシフトが求められる一方、従業員のキャリア志向を尊重することへの要請も高まっている。この両立はいかにして可能か。人事業務に携わる管理職を対象とした「配置・異動とキャリア支援施策に関する実態調査」では、配置・異動の課題やキャリア自律支援の取り組みの実態を把握するとともに、戦略的なキャリア支援が人材の柔軟な再配置と関連することを確認した。

調査概要

調査目的

配置・異動の課題とキャリア自律支援の取り組みを把握すると共に、個人のキャリア自律と組織主導の人事施策の両立の実態を明らかにすること

実施時期

2026年2月20~23日

調査対象

会社勤務の正社員で、現在人事業務に携わっている管理職
※「自社の人材マネジメントの全体像や短期・中長期の課題を把握している」と回答した人
※勤務先の従業員規模は300名以上

有効回答数

335名

調査方法

インターネット調査

調査内容

配置・異動の課題、キャリア自律と組織主導の人事施策の両立の実態
キャリア自律を期待する程度、期待する内容、支援の目的、管理職による部下のキャリア支援の実態、キャリア支援の統合的・戦略的な推進の程度、人事施策、HRMの柔軟性など

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.82 特集1「企業の変化適応とキャリア自律の接点」(P.23~30)
・調査レポート「個人のキャリア自律と組織主導のリソースシフトは両立するのか —人事が回答する配置・異動とキャリア自律支援の実態」をご参照ください。

調査結果サマリー

今回実施した調査の結果から、以下のような実態を確認することができました。

●配置・異動に関する課題

  • 企業における配置・異動の課題として最も多く選ばれたのは「経営・事業戦略に沿った中期的な要員計画の策定が難しい」(43.0%)で、次いで「職務要件や人材の能力・適性の情報が不足しており、適材適所の配置が難しい」(41.2%)であった。
  • 「モチベーションやパフォーマンスが低い従業員の配置転換が難しい」(31.3%)、「事業方針の転換やAI・技術革新にともなう配置転換が難しい」(29.3%)も約3割選ばれており、変化に応じた適材適所の配置に関する課題が見てとれる。
  • 全体で3番目に多く選ばれていたのは「本人の意向や事情を尊重する必要が高まり、適時適切な配置が難しい」(37.9%)。変化に応じた適材適所の配置と個人意向との調整が、現在の配置・異動における主な課題として浮かび上がった。

●個人のキャリア自律と組織主導の人事施策の両立の難しさ

  • 「自律的・主体的なキャリア形成の尊重と、組織主導の人事施策の推進を両立させることは難しい」という設問に対し、「とてもそう思う」(6.6%)、「そう思う」(24.8%)が約3割、「ややそう思う」(42.4%)まで含めると約7割が難しいと回答した。
  • 自由記述の回答から、難しさの背景としては、組織と個人のニーズの不一致や需給の不均衡による「組織・個人間のギャップ」、従業員の自律不足による「個人要因」、組織都合の優先・短期業績中心の評価・経営の理解不足などの「組織要因」が確認された。
  • 難しくないとの回答においては、十分な対話とすり合わせ、組織方針・スキル要件の可視化などを通じて両立を実現しているケースの他、キャリア自律の定義に組織との整合を組み込む、あるいは、組織主導を前提としてキャリア自律をそもそも期待していないなど、そもそもキャリア自律と組織主導をコンフリクトするものとして捉えていないケースが見られた。

●組織が期待するキャリア自律とは

  • 従業員へのキャリア自律の期待については、約9割の企業が何らかの形でキャリア自律を期待していることが確認された。内訳としては、「1.強く期待するメッセージを、経営者やマネジメント層から出している」(20.0%)2割にとどまり、「2.ある程度期待するメッセージを、経営者やマネジメント層から出している」(48.4%)、「3.期待しているが、具体的なメッセージとしては出していない」(21.8%)であった。
  • 会社が求めるキャリア自律の内容としては、「自分の価値観に基づいて、自分でキャリアを選択すること」(48.7%)が最多で、「何事も成長機会と捉えて、目の前の仕事に主体的に取り組むこと」(45.7%)、「新しい経験にチャレンジしながら、自ら成長機会を作っていくこと」(41.4%)が続いた。一方、「自分に合った働き方を主体的に選択すること」(16.9%)の選択率は低く、弊社で実施した個人調査「若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査」(2021)の結果(48.5%)と比較すると、企業と個人のあいだでキャリア自律の捉え方に違いがあることがうかがえる。
  • キャリア自律支援の目的として最も多く選ばれたのは「従業員のエンゲージメントや仕事への意欲の向上」(52.5%)であった。「従業員の自律的な学習・挑戦行動の促進」(37.6%)、「優秀な人材の採用・定着の強化」(36.7%)がそれに続く。「従業員の変化対応力の向上」(31.9%)、「組織の柔軟性・変化対応力の向上」(25.7%)も一定数選択されており、目的は多岐にわたることが確認された。

●管理職による部下のキャリア形成支援

  • 管理職に対して部下のキャリア形成支援を求めている企業は、制度・方針として明確に求めているケース(37.0%)と明文化はしていないが実態として求めているケース(36.1%)を合わせると約7割に達する。
  • 管理職に期待する行動・役割としては、「業務を通じた支援」に関する「部下が目の前の仕事にモチベーション高く取り組めるよう支援する」(54.7%)、「部下が自律的に業務を推進できるよう支援する」(52.2%)が半数以上の企業で選ばれた一方、中期的なキャリア目標の明確化や意味づけといった「中期的支援」はおおむね3割前後、ライフイベント発生時の「ライフキャリア支援」は2割未満にとどまった。管理職のキャリア支援は、中長期的なキャリア形成支援というよりも、日常業務を通じた育成の延長として捉えられている場合が多いと考えられる。
  • 管理職によるキャリア支援の課題として「管理職には、キャリア支援に割ける時間的余裕がない」(42.1%)が最も多く選ばれており、「管理職自身がキャリア不安や将来不透明感を抱えている」(34.0%)、「管理職のキャリア支援に対する問題意識・優先度が低い」(31.6%)が続いた。他には、期待役割の不明確さ、配置・異動・挑戦機会への展開の難しさ、管理職に対する支援の不足も課題として認識されている。管理職がキャリア支援の担い手として期待される一方で、その役割を果たすための環境・支援が十分でない実態も見えてくる。

●戦略的・統合的なキャリア支援は戦略配置と個人尊重の両立を実現

  • 本調査では、従業員のキャリア形成支援を戦略的・統合的に推進できている程度を示す指標として「キャリア支援推進度」を設定した。キャリア支援の目的の明確化、経営層の理解、人事制度全体における位置づけ、相談活動などを通じた課題の把握と共有、人事や上司から独立した相談機能の存在など7項目の平均値をもとに算出し、中点の3点で高低群に分けて比較した。
  • 高群では低群に比べて、異動の目的・意図の説明やキャリア展望の提示など配置・異動を円滑に機能させるための工夫が多く見られた。また、手挙げ型研修・社内公募制度・上司とのキャリア相談など各種人事施策の活用度も高群で有意に高かった。さらに、キャリア支援推進度が高いほど、外部環境の変化や事業戦略に応じた戦略的な配置・異動が行われており、個人の尊重と組織主導の配置が両立している傾向が確認された。個人のキャリア自律と組織のリソースシフトはしばしば対立的に語られるが、戦略的人材配置とキャリア支援を一体として設計・運用することの意義が示唆される結果となった。

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.82 特集1「企業の変化適応とキャリア自律の接点」(P.23~30)
・調査レポート「個人のキャリア自律と組織主導のリソースシフトは両立するのか —人事が回答する配置・異動とキャリア自律支援の実態」をご参照ください。

関連する調査

若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査(個人調査)
個人選択型HRMに関する実態調査2022(企業調査)
個人選択型HRMと個人選択感に関する意識調査(個人調査)

関連する研究テーマ

組織・人材マネジメントのこれから
人的資源管理(HRM)の柔軟性
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