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新人・若手のオンボーディング

Vol.01 なぜいまオンボーディングを再考すべきなのか ―背景となっている変化とは―

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HR Analytics & Technology Lab の研究テーマ
Vol.01 なぜいまオンボーディングを再考すべきなのか ―背景となっている変化とは―

日本の人事業界で最近よく使われる「オンボーディング」とは、新卒入社社員や中途入社社員が、企業組織の文化や仕事の仕方などを学び、力を発揮するのを企業側が支援するプロセスのことを指す。もとは船や飛行機に乗り込むことを意味する言葉だ。本記事ではなぜいまオンボーディングに注目するのか、その背景を踏まえてオンボーディングの捉え直しを行うことを目的とする。

執筆者情報

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技術開発統括部
研究本部
部長

湯浅 大輔(ゆあさ だいすけ)
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新人・若手を取り巻く環境

そもそも企業人事のなかでオンボーディングが着目され始めた背景には、個人のキャリア自律意識の高まりや中途求人数の拡大を受けた人材の流動化が2020年頃から徐々に加速し始め、転職者が増加したことで組織にとって新しい人を受け入れる機会が単純に増えたことがある。一方で、34歳未満の若年層では「よい機会があれば転職したい」と考えている割合が高く、組織側が苦労して採用~受け入れを行ったとしても優秀な新人・若手が突然辞めてしまうという実感を持つ企業も少なくない。加えてリモートワークに代表されるような働き方の変化が後押しし、いままでのオンボーディングの考え方や施策では通用しない、という課題感から相談をいただくケースが多くなっているのが実態だ。

いまの時代に適したオンボーディングのあり方を模索していくにあたり、もう少し解像度を上げて新人・若手を取り巻く環境を見ていこう。

(1)経験や価値観の変化

1990年代後半以降に生まれた「Z世代」が新人・若手として働く時代になったが、仕事や職場に対しての価値観はどのように変化したのだろうか。2011年と2021年の10年間を比較した図表1を見ていこう。

<図表1>理想の職場・上司像(2021年と2011年比較)

理想の職場・上司像(2021年と2011年比較)

上司世代にとっては当たり前だった、もしくは組織文化として叩き込まれたような要素(目標の共有・鍛え合い・活気・厳しい指導・引っ張るリーダーシップ・仕事への情熱など)の選択率が下がり、Z世代にとっては「尊重し合う職場」「話を聞いてくれ褒めてくれる上司」を理想と捉え、期待していることが分かる。

また、図表2は新入社員に「仕事をするうえで重視すること」を聞いたアンケートだが、外発的な動機(達成・承認・金銭など)よりも内発的動機(貢献・成長・やりがい)を求めていることが分かる。

<図表2>仕事をするうえで重視すること

仕事をするうえで重視すること

(2)リモートワークを中心とした働き方の変化

コロナ禍の影響でリモートワークが主体となり、その頻度が格段に増えるなど働き方が激変したことは記憶に新しい。その影響を受けて、図表3では上司とのコミュニケーションの頻度が一律に減少したこと、またメンバーと上司の間で伝えてほしい内容にギャップが生じていることが分かる。

<図表3>リモートワーク環境下でのコミュニケーションの変化

リモートワーク環境下でのコミュニケーションの変化

ただし、オンラインでのコミュニケーション自体が悪と捉えるのは早計だ。入社当時からリモートワーク中心となった2020年入社世代でも、元々慣れているチャットツールなどを駆使した文章でのコミュニケーションは逆に増加したし、気軽に情報を発信できるなどのメリットを享受して組織に馴染んだケースも多い。問題は、受け入れ側が適応できない場合や、コミュニティが限定され社内で人脈を広げる機会が減少し情報の偏りや学びの阻害に繋がってしまうことだ。

(3)転職に対する考え方の変化

冒頭でも触れたとおり、キャリア自律の高まりやJob型雇用の増加を踏まえた人材の流動化は新人・若手にとっては当たり前のこととなりつつあり、勤続意向に対する価値観も図表4で示すとおり「1社にこだわらないキャリア」志向が大半を占めている。

<図表4>新入社員の勤続意向

新入社員の勤続意向

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2022年)「新入社員意識調査」

まとめ

本記事では、「なぜいま再考・捉え直しが必要なのか」という問いに対して、主に新人・若手を取り巻く環境・価値観・キャリアへの考え方などの観点から調査結果も踏まえて現在地の確認を行ってきた。Vol.02では、実際に起こっている問題や事象をデータから詳らかにしつつ、どのように再考していけばよいのかの仮説・提言を行っていく。

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