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新人・若手のオンボーディング

Vol.02 なぜいまオンボーディングを再考すべきなのか ―実態と提言―

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HR Analytics & Technology Lab の研究テーマ
Vol.02 なぜいまオンボーディングを再考すべきなのか ―実態と提言―

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技術開発統括部
研究本部
部長

湯浅 大輔(ゆあさ だいすけ)
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実際に起こっている問題・事象

Vol.01では新人・若手の価値観や取り巻く環境を見てきたが、加えて個性尊重の教育を受けてきた経験から自身にとって意味がないことや成長に寄与しない仕事を敬遠する若者の存在に言及する企業側の上司や人事も少なくなく、どうやって関わっていけばいいか相談を受けるケースも増えてきた。また、離職増加の背景にも多様なケースが生まれ、パフォーマンスを発揮する以前に社会人や組織人として当たり前の手順やルールが守れず配属後早期のプロセスで躓くケース、組織のビジョンや文化に馴染めないケース、優秀な2~3年目社員が成長実感のないまま目の前の仕事に追われていることに周りが気づかず突然離職してしまうケースなども多く出てきている。

つまり、Z世代を中心とした若者の価値観やスタンスと、「受け入れ側の状況理解や変化が追い付いていないこと」や「正解がない仕事現場で求められる主体性や自律」とのギャップの大きさが、オンボーディング場面で歪みを生じさせているといえるだろう。

実際に問題として起こっている事象を、2種類のデータから見ていこう。

まず、入社後1年目の悩み・壁を選択率の高さ順に並べたものが図表1だ。この結果を見ると、VUCA的なビジネス環境で失敗を重ねるなかで、学びに繋がらず自信を喪失したままになってしまっているケースや、そもそも目の前の仕事に自律的に行動を起こせないケースが多いことが分かる。このまま若手の悩みを放置していると本人のモチベーションダウンはさることながら、組織に馴染んだり成功体験を積んだりすることができず離職に直結することは想像に難くないだろう。

<図表1>入社後1年目の悩み・壁

入社後1年目の悩み・壁

また、図表2は入社1年目のコンディション(負担感とモチベーションによって5段階に分類したもの)の推移を示したものである。この結果を見ると、年度の後半になるにつれて徐々にコンディションが良好な社員の割合が減少していることが分かり、人事にとっては入社直後の状況だけではオンボーディングの成否は分からず、年度後半になるにつれて問題が多発し、通年をかけて(場合によっては2年目以降も)ケア施策を実行する必要性が高くなっている状況の可能性も示唆している。

<図表2>入社後1年間のコンディション推移全体傾向

入社後1年間のコンディション推移全体傾向

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2021年)「新入社員オンボーディング再考」

オンボーディングの捉え直し

以上の背景を踏まえて、これからの時代に求められるオンボーディングには以下の2点がポイントになるのではないだろうか。

1つ目は、「企業(組織)主語」だけではなく「本人主語」の観点も加えて両輪で状況把握や施策を検討すること、2つ目はオンボーディングの定義を「組織の一員(成員)となっていくプロセス」から拡大し「本人自身が、自律的な学習や成長イメージを持てている状態」をゴールとすることで、入社1年目だけではなく2年目以降も含めてオンボーディング期間と捉え直していくことである。以上を踏まえたこれからのオンボーディングのポイントを図表3に示してみたので参考にしてほしい。

<図表3>オンボーディングのこれまでとこれから

オンボーディングのこれまでとこれから

まとめ

本記事では、Vol.01と併せて「なぜいま再考・捉え直しが必要なのか」という問いに答えるべく主に新人・若手を対象としたオンボーディングの現在地を調査結果も踏まえて確認し、さらに過去のオンボーディングの捉え方・あり方からどのように変容していくべきか、その着目点の提言を行った。

Vol.03では、アカデミックな見地からも再考を行い、仮説や提言の妥当性をモデルの検証によって明らかにしていく。

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