SPIは企業でどのように
使われているのか

SPIは企業でどのように使われているのか
多くの企業の採用選考で利用されている適性検査「SPI」。
就職活動を進めていくと、一度は受ける可能性が高いテストです。

SPIは採用の初期選考を中心に使われていると思われがちなのですが、実際は人事施策のさまざまな場面で活用されています。ここでは、応募者の方が、企業に応募し、選考を経て入社し、企業で働くまでの過程の裏側で、SPIが“企業側”でどのように利用されているのかについてご紹介します。

以下の図は、企業における採用場面~入社後場面をフェーズに分解し、そのなかでSPIがどのように活用されているかを簡単に整理したものです。今回は、この①~⑥のプロセスに沿って、SPIの企業における活用例についてご紹介したいと思います。


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面接に呼び込む応募者の優先順づけのための利用

多くの企業では、面接に呼び込む応募者の優先順位づけのためにSPIを利用します。企業における採用選考では、応募者に関する少ない情報から、短期間で人となりを理解し、採否を判断する必要があります。特に日本の新卒一括採用であれば、なおさらその傾向が強くなります。こうした場合、企業が応募者全員に会うことは現実的に難しく、何らかの方法で応募者の優先順位づけをすることが必要になってきます。こうした際に、履歴書やES(エントリーシート)に加えて、適性検査の結果を利用するのです。企業は、事前にSPIを始めとした適性検査のデータを用いて、自社の傾向を分析し(⑥のプロセス)、エビデンスを基に自社の採用基準を設計します。そうした基準に照らすことにより、より自社にフィットする応募者を、優先的に初期選考に呼び込むことが可能になるのです。

面接補助ツールとしての利用

SPIは面接場面における応募者の人物理解のための参考資料としても利用されています。採用選考における面接の主な役割は、人物理解と評価です。そのためには、まず応募者の特徴を的確に捉えることが重要なステップになってきます。しかし、面接という限られた時間のなかで応募者の人となりを理解・評価することは難しく、また面接者によって評価のばらつきが生じやすいという問題もあります。そこでSPIをはじめとした適性検査を用いて、履歴書やES、面接だけでは見極めにくい性格特性情報を補うことで、短時間でも応募者の人となりをより的確に把握することが可能になります。

内定者フォローにおける自己理解・相互理解促進ツールとしての利用

SPIは内定者の自己理解や内定者同士の相互理解を深めるツールとしても利用されることがあります。SPIの結果を元に自己理解を深め、またほかの内定者同士で見せ合いフィードバックをすることで相互理解が深まります。内定者にとっては、内定が決まったからといって「本当にこの会社で自分はやっていけるのだろうか」「ほかの同期とはうまくやっていけるだろうか」など、なかなか悩みはつきないものです。SPIでは、受検者自身が自己理解を深めるために利用する本人向けの報告書を準備しており、企業によってはこうした報告書を本人に配布するケースもあります。SPIを通して、自己理解・相互理解を深めることで、このような不安を解消し、前向きな気持ちで入社に臨むための支援をしています。

配属検討時の参考データとしての利用

SPIを入社後の配属先を決めるための参考情報として活用している企業もあります。同じ会社であっても配属される部署によって、組織の風土や仕事内容は異なります。仕事経験のない新人にとって、慣れない環境で慣れない仕事をするということは、非常にストレスを感じやすく、いくら本人にやる気があったとしても、うまくいかず落ち込むことが多々あります。入社後スムーズに仕事や職場に慣れ、伸び伸びと働き成長していくためには、職務や組織との相性という観点は大変重要になってきます。SPIでは、本人の特性情報を基に、どのような職務や組織に適応しやすいかという情報が整理されており、これらの観点を考慮した配置・配属の検討をしています。

新人の立ち上がり支援における利用

SPIは、配属の受け入れ先の上司やOJTリーダーが新人を指導する際の参考資料としても利用されることがあります。配属時の上司との関係性や周囲の関わり方は、新人のその後の定着・適応に大きく影響を与えます。SPIでは、配属先の上司や職場メンバー向けの報告書も用意しています。その内容を踏まえ、新人の特性を理解し、どのように仕事を任せるとよいのか、仕事上どういった場面でつまずきやすく、その際はどのように関わるとよいのかを事前に把握しておくことで、新人⇔上司・OJTリーダー間のコミュニケーションを促進し、新人のスムーズな立ち上がり支援につながっています。

入社後の活躍者の検証における利用

SPIは、企業においてどのような性格特徴や行動特性を持った人物が実際に活躍しているかを検証する際にも利用されることがあります。具体的には、在職社員のパフォーマンスデータとSPIデータを紐づけて分析することで、自社で活躍する社員の特徴を抽出します。こうした分析結果は、自社の人材要件の設計や選考基準などに反映されることになります。このように、企業は実データを基に、妥当性の高い基準を設けることで、自社の採用活動をブラッシュアップしています。

今回は、SPIの“企業側”における活用方法を整理してみました。思っていたより多くの場面で活用されていることをご理解いただけたのではないでしょうか。SPIは採用における「選考ツール」と思われがちなのですが、採用~入社後の多様な人事施策において活用されているのです。

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