調査サマリー

治療しながら働く上での課題と職場からの支援の実態

治療と仕事の両立に関する調査

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治療と仕事の両立に関する調査

「治療と仕事の両立に関する調査」の実施概要は下表のとおりです。

調査概要

調査概要

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.75 特集1「ワークヘルスバランス-治療しながら働く」調査報告(P.23~30)
・調査レポート「治療しながら働く人が抱える課題と職場に求められる関わりとは」をご参照ください。

調査結果サマリー

今回実施した調査の結果から、以下のような実態を確認することができました。

●疾病の種類、治療期間、働き方の変更の状況

  • 疾病の種類は、身体疾患が57.4%、精神疾患が39.4%で、身体疾患は糖尿病、がんがそれぞれ15%以上。
  • 治療期間は、「1年未満」25.5%、「1年以上3年未満」20.5%、「3年以上」54.0%。
  • 病気や治療にともなう働き方の変更としては、「仕事内容の変更」35.1%、「一定期間の休職」34.3%と多い。「勤務形態(働く時間や場所など)の変更」28.2%、「離職・転職」21.8%など。

●治療と仕事の両立にあたり重視すること

  • 約6割が「1.生活のために必要な収入を維持すること」「2.心身共に無理せず仕事を続けられること」を選び、収入と体調の維持が、同程度に特に重視されていた。
  • 1年未満群では、上記2項目の選択率は約4割にとどまり、「3.仕事の関係者の理解や協力が得られること」「4.病状に応じて、柔軟に仕事内容や働き方を調整できること」といった人間関係や業務遂行の維持が同じく約4割選ばれている。
  • 3年以上群は、他群に比べて1.の収入維持が70.9%と高い。また、「7.職場に居場所があると感じられること」は35.5%だが、1年未満群と比べて15ポイントほど高い。

●就業継続上の課題

  • 1年未満群、1年以上3年未満群で最も多いのは、「1.仕事へのモチベーションが低下している」で4割近くが選択した。自由記述においても、病気や治療により以前に比べてやる気や集中力が低下していることが困りごととして挙げられている。
  • 1年未満群では、次いで「7.これまで通りに仕事の成果を上げられない」「11.会社や職場に迷惑をかけるのが心苦しい」が多い。
  • 1年以上3年未満群は、「2.体力的にきつい」「3.治療や通院のための時間がとりにくい」の選択が35%以上と多く、「5.治療やその副反応がつらい」も他群と比べて選択率が高い。加えて1年未満群と同様に、7.や11.の業務遂行面や人間関係の課題を抱える人も多い。
  • 3年以上群で、最も多いのが「6.治療費や収入の減少など金銭面の心配がある」である。自由記述からは、長い治療期間で費用がかさみ、経済的な困難さが高まっていること、収入を減らさないために、望ましい働き方を選択しにくいというジレンマがあることが分かる。
  • 自由記述では、「病気や治療の状況をうまく説明できない」「周囲の理解が得られない」といったコミュニケーション上の難しさも多く語られている。

●会社の制度や取り組みの有無と役立ち度

  • 14施策について、勤務先企業で「1.現在、制度や取り組みとしてあるもの」「2.そのうち、あなたが治療と仕事を両立する上で役立っているもの」を選択してもらった。
  • 3割以上が「ある」と答え、比較的多くの企業で実施されているのは、「両立支援の理解促進」にあたる「1.健康重視の基本方針」「2.両立支援制度の周知」や、「両立支援の制度」にあたる「5.長期の病気休業制度」「6.通院・治療のための柔軟な休暇制度」、「柔軟な働き方の制度」の「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」の6施策である。そのうち、「5.長期の病気休業制度」「6.通院・治療のための柔軟な休暇制度」「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」は、「役立っている」が約7割である。これらは広く導入されており役立ち度も高い。
  • 一方、その他の8施策は導入が2割前後とあまり高くない。そのうちの「4.支援者との交流機会」「7.主治医との連携」「8.就業中の治療時間や場所の確保」「9.相談窓口の設置」「14.みなし労働時間制度」は、5割以上が「役立っている」としており、今後さらに導入を促進したい施策だといえる。
  • 就業上の課題が他群より多く見られた1年以上3年未満群は、「5.長期の病気休業制度」「6.通院・治療のための柔軟な休暇制度」「7.主治医との連携」「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」について、役立ったと答える人が8割を超えた。「7.主治医との連携」「10.復職のためのリハビリ勤務制度」は他群より有意に選択率が高い。一方、1年未満群では「1.健康重視の基本方針」が8割にせまり、他群より多い。3年以上群は、「11.テレワーク制度」「12.フレックスタイム制度」が7割を超えた。

●職場での周囲への相談

  • 相談先の種類で最も多いのは「1.上司(66.2%)」、次いで「2.人事・相談窓口(43.4%)」「3.会社の支援職(42.3%)」だった。「4.同僚」(39.4%)、「5.経験者や現在同じような状況にある社内の人」(23.4%)、「6.部下」(21.5%)は「相談したことがない」(それぞれ、45.5%、40.7%、54.0%)の方が多かった。
  • 相談先の種類の数としては、3カ所が21.3%と最も多く、次いで2カ所(20.2%)で、誰にも相談していない人は19.4%だった。相談していない理由の自由記述では、「適切な相手がいない・分からない」の他に、「報告・相談しづらい雰囲気がある」「報告・相談により不利益が生じる可能性があると感じる」などが見られた。
  • 勤務先の人の対応や言動で「嬉しかったこと」の自由記述としては、「仕事の調整」「積極的な状況把握」といった実際的な支援だけでなく、「安心できる声かけ」「変わらない態度」「親身な対応」といった情緒的な支援が支えとなっていた。「嫌だったこと」の自由記述としては、「状況を理解しようとしない」「無理を求める」などのコメントがあった。

●支援と両立の実現度

  • 「今の会社では、適切な治療を受けながら自分の望む就業を続けるために必要な支援や理解を、十分受けられている」(支援の実現度)、「私は現在、適切な治療を受けながら、自分の望む就業ができている」(両立の実現度)をそれぞれ5件法で尋ねたところ、両者ともに、「5.とてもあてはまる」「4.あてはまる」の合計が約60%、「3.どちらともいえない」が約25%、「2.あてはまらない」「1.全くあてはまらない」の合計は約15%だった。
  • 「支援の実現度」が高いほど「両立の実現度」も高いと感じていた。

●両立の実現度に影響する要因

  • 両立の実現度に特に強い影響が確認されたのは、「上司の両立支援リーダーシップ」(「仕事が私生活や健康に与える影響を本当に心配してくれる」など6項目、6件法、α=.96)と「職場のインクルージョン風土」(「今の職場では、仕事上の役割だけでなく、個々人の事情や性格も大切にされている」など3項目、6件法、α=.93)である。それぞれ高群が低群に比べて「両立の実現度」が有意に高い。
  • 就業継続上の課題については、治療・体調の困難の有無以上に、「職場に居場所がないと感じる」「職場で期待されていないと感じる」群では、両立の実現度が低い傾向が見られる。
  • 会社の施策として、その有無が両立の実現度に関係することが確認されたのは、「1.健康重視の基本方針」「2.両立支援制度の周知」「3.研修や勉強会の開催」といった「両立支援の理解促進」に関するものだった。これらが行われている群は、そうでない群に比べて両立の実現度が高い傾向があった。

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.75 特集1「ワークヘルスバランス-治療しながら働く」調査報告(P.23~30)
・調査レポート「治療しながら働く人が抱える課題と職場に求められる関わりとは」をご参照ください。

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