学会レポート

L&D(学習と能力開発)のトレンド

ATD2023 バーチャルカンファレンス参加報告 再考のスピードと学習棄却がカギとなる時代のL&D

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ATD2023 バーチャルカンファレンス参加報告 再考のスピードと学習棄却がカギとなる時代のL&D

本稿では5月21日から5月24日にかけて開催されたATD2023バーチャルカンファレンスについてご報告します(*1)。

*1 ATD(Association for Talent Development:タレント開発協会)は、1943年に設立された産業教育に関する世界最大の会員制組織(NPO)。2014年にそれまでのASTD(American Society for Training and Development)からATDに名称が変更された。会員は世界中の企業、公共機関、教育機関で学習と開発に携わる人々で、その数は120カ国約4万人に及ぶ。学習と開発に関する国際的なネットワークを有し、調査研究、出版、教育、資格認定、およびカンファレンスを展開している。本部はバージニア州アレクサンドリア。年1回開催されるICE(International Conference and Exposition:国際大会)は学習と開発に関する世界の潮流をつかむ機会でもある。

【告知】
国際的に著名なスピーカーを招いて今年も「ATDジャパンサミット2023」が12月5~8日に開催されます。

執筆者情報

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サービス統括部
HRDサービス推進部
トレーニングプログラム開発グループ
主任研究員

嶋村 伸明(しまむら のぶあき)
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対面、ライブを大切にした大会

今年、設立80周年を迎えたATDの国際大会はカリフォルニア州サンディエゴで4日間にわたって開催されました。今年も現地でのライブ参加とオンライン参加のハイブリッド型のカンファレンスとなりましたが、現地参加者が9000人、バーチャル参加者1000人(公式発表)と現地参加がパンデミック前の水準に戻っています。ライブ参加者しか参加できない教育セッションも増えており、今年は明らかに対面型へのシフトが起きている印象です。日本からは130人が参加。現地に行かれた方も多かったようです。

オープニングセッションでは、80周年を記念してATDの賛歌をつくるというプロジェクトがアナウンスされ、大会中に参加者が思い思いに入力した歌詞が最終日に見事な楽曲となり演奏されました。こうしたライブでしか味わえない体験を大切にした大会だったように思います。

13のセッショントラックとそれぞれのセッション数(図表1)を見てみると、未来への準備(Future Readiness)、教育デザイン(Instructional Design)、リーダーシップ・マネジメント開発(Leadership & Management Development)、学習テクノロジー(Learning Technologies​)などで昨年よりもセッション数が顕著に増えていることがわかります。主な学習トラックで印象に残ったセッションを紹介しながら、読みとれたトレンドについてレポートします。

<図表1>学習トラックとセッション数

<図表1>学習トラックとセッション数

AIの活用とFuture skills

「未来への準備(Future Readiness)」のトラックは、加速する変化のなかでL&D(Learning and Development)として適応、学習すべきテーマや、開発すべきマインドセットなどのトピックが扱われます。今年はやはり、AIを扱ったセッションが話題となりました。チャットボットを使ったコーチングやAIによるプレゼンテーション診断など、すでに活用が進んでいるAIに加えて、今年は話題のChatGPTに代表される生成AIの活用を扱ったセッションもあり、「ジェネレーティブAIは今年何をもたらすか?(What Will Generative AI Do for You This Year?)」は、多くの聴衆を集めたようです。「人材育成における AI: あなたとあなたのチームはどのように準備できますか?(AI in Talent Development: How Can You and Your Team Prepare?)」では、ATDが行った最新の調査(*2)をもとに、パネルディスカッションが展開されました。調査によれば、AIが最も活用されているのは「学習のパーソナライズ」と「効果測定」(各25%)で、次に「自動翻訳」(24%)、「新人のオンボーディング」(23%)が続きます。また、約4割の企業が今後1年のうちに活用を考えています。一方で、活用するつもりはないという企業も約38%あり、調査からはAIの活用にそれほどドライブがかかっているとは言えないようです(ただし、調査はChatGPTなどの生成AIが話題になる以前のものです)。

*2 AI in learning and talent development. Embracing its future potential in the workplace. ATD(2022)

地域別の比較では、日本が最もAI活用の準備ができていないという結果となっています。セッションでは、L&DにおいてAIがもつ可能性が議論されるとともに、「AI利用の増加は、人材開発業界の人々の、データと分析に関するスキルギャップを露呈させる」として、L&Dの専門家自身がこのテクノロジーを活用できるスキルを身に着けなければならないことが強調されました。アメリカのビジネスリーダーの63%が従業員のAI活用スキルを不十分と回答(*3) しており、AI導入の課題は従業員のスキル開発にあります。そのスキル開発を担うL&D担当者も同様です。

*3 The 2023 AI and Machine Learning Research Report, Rackspace Technology(2022)

ATDが発行する「Talent Development Body of Knowledge」のアドバイザリーボードメンバーによるセッションでは、L&Dがこれから開発すべき優先度の高いスキルに関する研究発表がありました(「未来への準備:明日のタレント開発の準備はできていますか(Future Ready: Are You Prepared for Talent Development’s Tomorrow?)」)。ここでは、L&Dを取り巻く変化とチャレンジが話し合われ、将来に向けて開発の優先度が高いスキルとして、「変化のファシリテーション(Change facilitation)」「人間関係スキル(Relational skills)」「データ分析洞察力(Data analysis Acumen)」「批判思考(Critical thinking skills)」「文化的能力(Cultural competence)」の5つが紹介されました。L&Dは過去の経験、知識、前提を根本から再考しなければいけない時期に来ているというメッセージが印象的でした。

インクルーシブな学習デザイン

「学習デザイン(Instructional Design)」のトラックでは、新たに、学習者のアクセシビリティ(学びやすさ)をテーマにしたものがいくつかありました(*4)。これはDEIB(Diversity, Equity, Inclusion, and Belonging)の取り組みとも連動したものです。組織の多様性、包摂性を開発する上では、学習と成長の経験も例外ではありません。「学習のためのユニバーサルデザインでアクセシビリティを超える(Move Beyond Accessibility with Universal Design for Learning)」というセッションでは、多様な障害のある学習者に対してオプションを準備することの大切さが説明されていました。障害についても広く捉えられており、視覚や聴覚、歩行といったものから、「見えない障害(注意欠陥多動性障害、自閉症、失読症などの、一見してわからない障害)」「デジタルリテラシー」「言語(第1言語)」までも考慮に入れることが必要ということです。それぞれの障害に応じたオプションのリストも紹介されました。こうした点への配慮もエンプロイー・エキスペリエンスの向上につながることを再認識したセッションでした。

*4 「学習者を置き去りにしない:アクセシビリティは重要です(Accessibility Matters: Leave No Learner Behind)」、「インクルージョンの考え方:あらゆる学習ニーズに対応するアクセシブルなコンテンツのデザイン(Inclusion Mindset: Designing Accessible Content for All Learning Needs)」など

「シロアリと蚊:文化へのダメージコントロールとしてのマイクロアグレッションとの戦い(Termites and Mosquitos: Combating Microaggressions as Damage Control for Organizational Culture DEIB)」では、DEIBにより築き上げた組織文化を時間の経過と共に蝕む「マイクロアグレッション」の紹介がありました。マイクロアグレッション(小さな攻撃)とは、疎外された人々を標的にした否定的な発言や行動のことで、意図的である場合も、意図的でない場合もあるが、偏見に基づいた表現であり、差別の一形態であるとされています。また、発言や行動だけでなく、環境も対象となるとしています。これはあるグループを他のグループより優遇するような、社会における微妙な差別を生み出すもの(例えば、白人連合指導者の名前を冠した建物がある大学キャンパスなど)であり、これらの経験を認識し、その発生を最小限に抑えるための行動をとることが重要となります。

注意すべきは、意図的でないものでしょう。前述の学習のユニバーサルデザインにもあったように、人材開発という特定の職業文化(occupational culture)のなかで経験を重ねてきたがゆえに形成された暗黙の前提に気づかず、一部の学習者を傷つけている可能性があります。同様に組織行動においても国民文化(national culture)や企業文化(Corporate culture)に影響された「悪気のない」マイクロアグレッションを発する可能性もあります。心理的安全性をテーマにした「心理的安全性:インクルージョンの重要かつ忘れられがちな要素(Psychological Safety: Inclusion’s crucial and often forgotten element)」のセッションでは、こうした自分が気づいていない自分の社会的優位性を「特権(Privilege)」という言葉で表現し、「特権」を再認識するためのチェックリストが提供されていました。L&Dがこれから開発すべきスキルとして「批判思考(Critical thinking skills)」と「文化的能力(Cultural competence)」が上位に挙がっているのは、こうした前提を再考し、より多様な前提を理解することの必要性が高まっているからだとも考えられます。

アカウンタビリティ(責任)とコーチアビリティ

「リーダーシップ・マネジメント開発(Leadership ・ Management Development)」のトラックで、アカウンタビリティ(説明責任)に関するセッションが増えたことは今年の特徴だと思います(*5)。背景には組織の心理的安全性への関心が高まっていること、そして、「誰かが責任を負う」「誰かに責任を負わせる」という制度が、集合知が求められる現代の組織環境と合わなくなってきていることがあると考察します。「責任ある文化で期待を現実に変える方法(How to turn expectations into reality with an Accountability Culture)」では、組織のなかで責任を押し付けたり、失敗に対して非難で返したりする行動がもたらす弊害と、「非難を責任にリフレームする」会話の方法が紹介されました。

*5 「Creating a Culture of Accountability, Not Blame(非難ではなく、説明責任を果たす文化を創る)」、「CREATING BETTER ACCOUNTABILITY Practice ‘Noticing’ to Improve Relationships and Results(より良い説明責任を生み出す:人間関係と結果を改善するために「気づく」ことを実践する)」など

また、「より良い説明責任を生み出す:人間関係と結果を改善するために「気づく」ことを実践する(Creating better Accountability. Practice ‘Noticing’ to Improve Relationships and Results)」では、従来の「誰か」が「結果」の責任を負うというアカウンタビリティの定義に疑問を投げかけ、「意識的なアカウンタビリティ(Conscious Accountability)」という新たな概念が必要であるという主張が展開されました。「意識的なアカウンタビリティ」とは、結果と人間関係の両方に焦点を当てて、「やるべきことをやったかどうか」だけでなく、結果とプロセスの両方を見て、そこから学ぶことであり(図表2)、「熟考された意図と十分な情報に基づいた行動をとり、自分の及ぼす影響に責任をもつ(be responsible)ために、意識を拡大すること」と定義されていました。役割ではなくマインドセットとしてのアカウンタビリティと捉えることができます。

<図表2>これまでのアカウンタビリティと「意識的なアカウンタビリティ」の違い

<図表2>これまでのアカウンタビリティと「意識的なアカウンタビリティ」の違い

心理的安全性の研究で著名なエイミー・C・エドモンドソンは心理的安全性とアカウンタビリティの2軸で4つの組織的元型を示し、双方が高い組織を学習ゾーンにいる状態としています。このゾーンにある組織では、「人々はたやすく協働し、互いから学び、仕事をやり遂げることができる」としています。また、アカウンタビリティとは「高い基準を守ったり挑みがいのある目標を追求したりすることを人々がどれくらい求められるか」の程度であるとしています(*6)。ここで記述されているアカウンタビリティも「(結果の)説明責任」という意味とはずいぶん異なり、組織としての学習を促す集団規範の1つと解釈できます。マネジメントとリーダーシップ開発におけるアカウンタビリティという概念についても再考が必要ということでしょう。

*6 「チームが機能するとはどういうことか」(エイミー・C・エドモンドソン著、英治出版、2014年)

リーダーシップとマネジメント開発で今年初めて耳にした言葉が「コーチアビリティ(Coachability)」です。これは、「コーチを受ける能力」を指します。リーダーシップ開発で著名なゼンガー・フォークマン社による発表は、過去の膨大な360度アセスメントデータとインタビューから見えてきたリーダーの「コーチを受ける能力」は、これまで注目されなかったリーダーシップのキーファクターであるというものでした。過去65年間、コーチングは驚異的なスピードで企業に浸透し、その間一貫してコーチする側のスキルが注目されてきましたが、リーダーシップの成否を分けるのは「コーチされる側」のスキルであるというのです。セッションでは、リーダーシップの有効性と「コーチを受ける能力」との強い関係性を示すデータが数多く提示され、この優れた「コーチを受ける能力」をもつリーダーの特性が発表されました。それによると、優れたリーダーである彼らは、他人からのフィードバックに価値を置き、それを求め、反応し、内省し、行動するという習慣によって自身を常に学習ゾーンに置いているということです。

エグゼクティブ リーダーシップの科学

ゼンガー・フォークマン社の研究では、「コーチを受ける能力」は組織階層の上位に行くに従って低下することが明らかになっています。その理由を紐解くようなセッションが、神経科学の知見をL&Dに生かす発表で毎年人気のブリット・アンドレエッタ博士による「エグゼクティブ・リーダーシップの科学:組織の成果を推進するトレーニング」でした。エグゼクティブがリーダーとして脱線(Derailment)してしまう理由として、権力がもたらす脳の変化があるというものです。博士が紹介したのは、権力が脳にダメージを与え、目隠し(Blind spot)を作ってしまうこと、それによって、他者の視点を理解する能力が低くなり、社会的な合図を読まなくなり、行動の結果に対する関心が低くなることを証明するいくつかの研究結果です。権力によって脳が変化し、行動が変化し、それが繰り返されることで習慣化すると、「ヒュブリス症候群(Hubris syndrome)」(*7)と呼ばれる障害に陥り、組織が信頼の欠如、人間関係の弱体化、意思決定不全、非効率に悩まされるようになるといいます。博士は、こうしたエグゼクティブ固有のペイン・ポイント(痛みのポイント)を理解して、その解決につながるトレーニングの効果的な運営方法を解説してくれました。

*7 ヒュブリス(傲慢)症候群とは、権力のある立場にある人が、自分と自分の能力を拡大・誇張して見るようになり、その結果、過剰な自信、自己イメージへの執着、批判への軽蔑が生じる状態を指す。

リーダーシップに求められる準備をテーマにした「フォーサイト(先見の明)を活用して優れたチェンジマネジメントを実現する(Harnessing the Power of Foresight for Exceptional Change Management)」というセッションでは、フロリダ国際大学のマシュー・R・クッツ博士が、VUCAの現実の前ではリーダーシップの規範を変える必要があるとして、その根本的な変化のひとつとしてカオス(混沌)を歓迎することを挙げていました。博士によれば、「これまでリーダーの責任の大部分はカオスを避け、カオスから抜け出すことだったが、今は、カオスは避けるべきものではないことを理解し、カオスを潜在的な可能性を秘めた贈り物のように考えるべき」であり、そのためには「文脈的知性(Contextual Intelligence)」(自分の周りの世界をリアルタイムで診断し、その診断に基づいてどう対応すべきかを知る能力)が必要とのことです。こうした高度な認知的スキルの重要性が高まっていることは昨年のレポートでも触れましたが、前出の「意識的なアカウンタビリティ」や「コーチを受ける能力」「権力がもたらす影響の認識」、さらに、後述する基調講演も含めてメタ認知への関心がいっそう高まっているように感じました。

「旧来のリーダーは問題を解決し、質問に答えてきたが、新しいリーダーはより良い質問を投げかける。現状を打破するための質問をする人たちである」という説明もありました。近年、日本でも「問い」の有効性への関心が高まっていますが、誰も正解がわからない環境であるがゆえに、集合知を引き出すリーダーシップへのシフトが求められているということでしょう。

マネジメントとリーダーシップの開発では、ATDにおいても近年、これまでの「水平的開発」を見直し、「垂直的開発」への注目が高まっています(*8)。これは、これまでのほとんどのリーダーシップ開発は、リーダーがある機能を果たせない場合、その不足は、より多くの知識や能力を身につけさせることで解決できるという前提に基づいており、いわば、コンピュータのアプリケーションソフトを増やしていくようなアプローチだが、対象者の「意識や認識のあり方」、つまりオペレーションソフト(OS)に適合しているかという検討を見落としている(多くは適応していないにも関わらず)というものです。「垂直的開発」とは、リーダーがプレッシャーや複雑性に苦闘している場合、それは、認知的・感情的に洗練されていない方法で自分の状況を意味づけていることの表れであり、認知的・感情的な方法を高めることで、状況を切り抜ける能力を向上させることができるという見方の開発アプローチであり、OSのアップデートのような考え方です(*9)。

*8 ハーバード大学教育学大学院教授が提唱した「成人発達理論」における成人の成長の二軸。
*9 ATD BLOG Elevate Leaders’ Operating Systems to Navigate Disruptive Conditions May 12, 2021より抜粋引用

再考し、リスクをとり、失敗から学ぶ

今大会の基調講演者は3名。ペンシルベニア大学ウォートンスクール・組織心理学教授のアダム・グラント氏、人種問題や紛争解決など複雑な対話のファシリテーションを15年以上行っているプロフェッショナル・ファシリテーターのプリヤ・パーカー氏、そしてブロードウェイの舞台や映画で活躍している著名な俳優、レスリー・オドム・ジュニア氏でした。

アダム・グラント氏の講演は再考する力とそのスピードの重要性についてでした。変化の激しい時代を生き延びるためには、考える、学ぶこと以上に、貴重な認知スキルがある。それは考え直す、知識をリセットし学び直す能力だというメッセージです。そして、再考は「チャレンジネットワーク(相手のために、耳の痛いことを率直に言う思慮深い批評家の人脈)」をもつことで促されるとして、「不愉快なGiver」(*10)を歓迎すること、そして、常に「自分は間違っているかもしれない」という「科学者」のような思考様式でものごとに対処することの有効性を紹介してくれました(*11)。

*10 「GIVE&TAKE 『与える人』こそ成功する時代」(アダム・グラント著、楠木建監訳、三笠書房、2014年)に詳細があります。
*11 「THINK AGAIN」(アダム・グラント著、楠木建監訳、三笠書房、2022年)に詳細があります。

続くプリヤ・パーカー氏の講演も、人々の集まり方を再考するものであったと思います。氏は、誰もが人生の長い時間を人と集うことに費やしているが、ほとんどの人は「集まり方」について気にかけていない、「型通り」に集まっても創造的なことは起きないとして、会場の聴衆に、「目を閉じて、あなたがこの大会への招待状を受け取ったとき、なぜ(時間と交通費をかけてでも)参加しようと思ったのかを考えてみてください」と伝え、しばらくの静寂のあと、「目を開けて周囲の人々を見てください。ここに集っている人々に対する見方が変わりませんか?」と問いかけました。基調講演としては珍しいこのアクティビティによって氏は、意味のある集まりを開くために欠かせない最初の一歩は、何のために集まるのか「はっきりとした、ゆるぎない目的」を掲げることだと説きました。また、集いの最初の5%で起こることが残りの時間のあり方を決めてしまうこと、そして、変化を起こしたいのであれば対立を恐れず「健全な熱(Healthy Heat)」を育むべきであるといった、本当に創造的な集まりを設計するための実践知を紹介してくれました。パーカー氏の講演は、人々の集いがバーチャルから対面に戻りつつある今日、改めて「何のために集まるのか」を再考する機会をくれたと思います。

最終日は、トニー賞、グラミー賞、エミー賞の受賞歴をもつレスリー・オドム・ジュニア氏が対談形式でアーティストとしての半生を語ってくれました。人生の転機において自身が大切にしたことやメンターとのつながり、感謝の大切さなどのナラティブから、自身の直観に従い、リスクがあっても価値があると信じることを行い、失敗を含めフィードバックを受け入れることが成長をもたらすというメッセージが伝わりました。対談後は氏によるすばらしい歌唱パフォーマンスが行われ、感動の波と共に大会は終了となりました。

基調講演を含めて、今大会から伝わってきたのは、変化のなかで起きる混沌や対立、ネガティブ・フィードバックや失敗も、自身の再考を促し本当に必要な行動に導いてくれるギフトだと捉えてみようというメッセージです。弊社は今後とも情報収集に努めてまいります。

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