研究レポート

2040年働き方イメージ調査からの考察 vol.4

「ブルシット・ジョブ」とは何か―その現状と影響

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「ブルシット・ジョブ」とは何か―その現状と影響

「ブルシット・ジョブ」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。アメリカの経済人類学者であるデヴィッド・グレーバー氏が2013年8月に寄稿した小論「ブルシット・ジョブ現象について」に端を発し、世界各国で共感と議論を生んだ言葉だ。2018年に書籍化され、日本においては、2020年に酒井隆史氏らによる「クソどうでもいい仕事」という訳語を添えて訳書が刊行された。本稿では、その概念について簡単に紹介したうえで、現代日本の大卒正社員の現状を紐解きたい。

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大庭 りり子(おおば りりこ)
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「無意味で不必要な仕事」を指すブルシット・ジョブは、あくまでも主観に基づく概念

Graeber(2018)によると、ブルシット・ジョブとは、「被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態」である(なお、bullshitはでたらめ、無意味なこと、ばかげたこと、などを意味するスラング)。その定義から想起する仕事は、どのようなものだろうか。「完璧に無意味で不必要」な仕事は本来存在しないはずであろうが、もしあるとするならば、賃金が低かったり、他者から尊敬されることのなかったりする仕事だと思うのではないだろうか。しかし、そういった仕事はブルシット・ジョブではなく「シット・ジョブ」として区別するべきだと同書では指摘されている。むしろシット・ジョブは、一般的には、誰かがなすべき、はっきりと社会に益する仕事であり、ただ、報酬や待遇がぞんざいなだけだというのだ(清掃や土木作業などが「シット・ジョブ」の例として挙げられている)。「わたしたちの社会では、はっきりと他人に寄与する仕事であればあるほど、対価はより少なくなるという原則が存在するようである」「無意味な労働をおこなっている人間のほうが自分の仕事を有益であると感じている人間よりも収入も地位も高くて当然であると、一般論として受け入れ、そればかりかそうあるべきだと信じている人びとは多数にのぼる」と同書では述べられている。

また、ブルシット・ジョブは、主要5類型に集約できるとされている(図表1)。

<図表1>ブルシット・ジョブの主要5類型(Graeber, 2018)

ブルシット・ジョブの主要5類型(Graeber, 2018)

ただし、留意しておきたいのは、ブルシット・ジョブというのは、あくまでも主観に基づく概念であるという点だ。はたから見て仮に「無意味で不必要」な仕事だったとしても、当人が意義を感じていれば、それはブルシット・ジョブではない。つまり、例えば「この仕事はブルシット・ジョブで、この仕事はシット・ジョブなのですよ」などと十把一絡げに述べることは意味をなさない。そのため、本稿はそういった判定をするものではないことを前置きしたうえで、今回の調査から見えてくる、現代日本の大卒正社員のブルシット・ジョブにまつわる現状を紹介したい。なお、本調査は、「2040年働き方イメージ調査」の一環として実施したものであることから、対象者が限定的であることは留意されたい(詳細は末尾の調査概要参照)。ブルシット・ジョブは基本的にホワイトカラーの仕事を指すものである(Graeber, 2018)とされているため、本調査対象者の属性と大幅な齟齬はないと考えられる。

「自分の仕事は、世の中に意味のある貢献をしている」と思っている人は34.3%

今回の我々の調査では、諸外国での先行調査をふまえ、ブルシット・ジョブに関する以下の項目を盛り込んだ。

  • 「自分の仕事は、世の中に意味のある貢献をしている」
  • 「自分の仕事は、内心ばかばかしいと思っていても、その仕事の存在するたしかな理由があるかのように取り繕わなければならない」

その結果、上記2項目の単純集計は図表2のとおりであった。イギリスおよびオランダでの調査において、自分の仕事が「世の中に意味のある貢献をしている」と考える人は共に40%程度と報告されていることとも、おおよそ符合した結果である。Graeber(2018)の定義に照らすと、「自分の仕事は、世の中に意味のある貢献をしている」(以下、「貢献感」)にあてはまらず、「自分の仕事は、内心ばかばかしいと思っていても、その仕事の存在するたしかな理由があるかのように取り繕わなければならない」(以下、「欺瞞感」)にあてはまる人は、ブルシット・ジョブに従事しているということになる。両変数の関係性についても探索するため、かけあわせの群分けではなく、以降それぞれについて分けて確認することとした。

<図表2>ブルシット・ジョブ構成要素の単純集計

ブルシット・ジョブ構成要素の単純集計

職種:本調査では、貢献感は「総務」が低く「人事」 が高い傾向

それでは、今回の調査では、どのような仕事についている人が、自分の仕事をブルシット・ジョブと捉えていたのだろうか。まずは、「あてはまらない」を1、「あてはまる」を5とした5点満点の平均値の違いをみることで、職種ごとの傾向を確認したい(図表3)。なお、本稿では回答数が50名以上であった職種のみを対象とした。
はじめに、貢献感は、「総務」がもっとも低く、「人事」がもっとも高かった。両群の間には統計的に有意な差がみられた。総務は、しばしば「縁の下の力持ち」といわれ、社内の人への貢献感はもちやすいものと思われる。そこから、ひいては世のなかへの貢献感をもつことも不可能ではないだろう。しかし、総務の業務所掌は、一般的に、他部門が担当しないすべての業務を含む広範なものである。それは、主要5類型でいうところの「尻ぬぐい」や「書類穴埋め人」に相当することが少なくないとも考えられ、相対的に低い平均値を示した可能性がある。
一方で、同じくバックオフィスの職種である「人事」は、相対的に高い貢献感を示した。Graeber(2018)の指摘する「管理部門の膨張」の典型として人事部門が挙げられることもあるが (リクルートワークス研究所, 2025)、従業員の成長や活躍という形でフィードバックがあることや、人事制度設計のような多くの従業員へ継続して影響をもたらし得る業務があることで、貢献感をもちやすい可能性が考えられる。

<図表3>職種別 貢献感

職種別 貢献感

他方、職種ごとの欺瞞感の違いは、図表4のとおりであった。職種間で平均値に違いはみられたものの、もっとも平均値の高かった群と低かった群との間に統計的に明確な差があるとは判断できなかった。そのため、職種ごとの違いについて詳細な解釈は行わないこととするが、貢献感がもっとも高かった「人事」が欺瞞感ももっとも高い、というのは興味深い結果であった。

<図表4>職種別 欺瞞感

職種別 欺瞞感

業種:貢献感・欺瞞感ともに群間の有意差なし

続いて、業種ごとの違いを確認する(なお、回答数が50名以上であった業種のみを対象とした)。同じ業種のなかでも、さまざまなジョブが存在するが、業種間の比較を通じて構造的な背景を捉えたいと考えた。しかし、貢献感・欺瞞感のいずれにおいても、業種ごとの群間に統計的に有意な差はなかった。したがって、以下はあくまでも参考として傾向を示すものである(図表5、図表6)。なお、業種別においても、職種別と同様に、貢献感がもっとも高い業種と欺瞞感がもっとも高い業種が合致していた。ブルシット・ジョブを構成する要素である貢献感と欺瞞感は、対立する概念とは言い切れないのかもしれない。欺瞞が、ある種の自己暗示のように、自分自身のポジティブな感覚につながる可能性なども考えられる。ただし、今回の質問紙における欺瞞感の項目は「ばかばかしさ」と「取り繕う必要性」という2つの要素の組み合わせから成るため、同じ選択肢を選んだ人の実態には多様性があったものと推察される点は留意されたい。

<図表5>業種別 貢献感

業種別 貢献感

<図表6>業種別 欺瞞感

業種別 欺瞞感

ここまでで簡単に、職種・業種ごとにブルシット・ジョブに関連する項目の程度の違いを確認した。しかし、そもそも、自分の仕事をブルシット・ジョブだと捉えていることは、何が問題なのだろうか。仕事は仕事なのだから、やるべきことをやるのみで、捉え方はどうでもよい、という意見もあるだろう。むしろ、仕事は楽しくないからこそ対価を得られるものだ、と考える人も一定数いる。そこで、自分の仕事をブルシット・ジョブと感じることの影響を考察していきたい。

貢献感が低い人はワーク・エンゲージメントも人生満足度も低い傾向

まず、貢献感と、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態(Schaufeli & Bakker, 2004)であるワーク・エンゲージメントの関係性を確認したい。貢献感を高群(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)、中群(「どちらともいえない」)、低群(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」)に分け、Shimazu et al.(2008)の3項目(α*= .838)の平均値(以下、「ワーク・エンゲージメント」)を確認したところ、貢献感が高いほどワーク・エンゲージメントも高いという結果であった(図表7)。いずれも有意差があり、効果量も大きかった(η²*= .233)。

また、同じく貢献感の高中低群に分け、人生に対する満足尺度*(角野, 1994)の5項目 (α= .904)の平均値(以下、「人生満足感」)を確認したところ、貢献感が高いほど人生満足感も高いという結果であった(図表7)。いずれも有意差があり、効果量は中程度であった(η²= .121)。

*α:信頼性係数。尺度を構成する項目の等質性を表す指標
*η²:効果量。データの単位に依存しない標準化された効果の程度を表す指標
*人生に対する満足尺度(角野, 1994)の項目詳細、単純集計の結果などはこちら

<図表7>貢献感 高中低群別 ワーク・エンゲージメント・人生満足度

貢献感 高中低群別 ワーク・エンゲージメント・人生満足度

なお、欺瞞感については、ワーク・エンゲージメントおよび人生満足度において、低群と中群には群間の有意差がなかった。また、欺瞞感が高い群ほどワーク・エンゲージメント・人生満足度ともに高い平均値を示しており、解釈の難しい結果となった。

これらをふまえると、自分の仕事は社会に貢献できていないと捉えている人は、ワーク・エンゲージメントに加えて、人生満足度もおおむね低い傾向にあった。欺瞞感に関しては、明瞭な結果は出なかったものの、少なくとも貢献感が欠如していると、人生全般への満足度へも悪影響を及ぼすのではないか。すなわち、自分の仕事をブルシット・ジョブと見なしている状態は、当人にとって、そしてワーク・エンゲージメントという観点では組織や周囲の人にとっても、やはり望ましくないのだ。
ただし、ここで興味深いのは、貢献感が低いと人生の満足度まで低くなってしまうということは、仕事を人生の重要な要素と見なしているからこそ、とも考えられることである。つまり、自分の仕事はブルシット・ジョブであると感じることは、逆説的に生活領域に占める仕事の重要度である「仕事中心性」(三隅, 1987)の高さを示している、とも言えるのではないか。そう考えると、何か手の施しようがあるようにも思われる。

ジョブ・クラフティングによって貢献感を高められる可能性

自分の仕事に貢献感をもてていない状態への手立てとしては、さまざまなアプローチがあるだろう。例えば、まだ仕事に不慣れな新入社員であれば、仕事に用いるスキルを磨くことで貢献感を高められるかもしれない。また、顧客接点のない部門で働く人は、顧客からのポジティブ・フィードバックを共有してもらうことで、貢献感をもてるようになるかもしれない。このように、個々の属性や状況に応じた対応策も考えられるが、本稿では、それらにかかわらず生かせる概念である、「ジョブ・クラフティング」に注目してみたい。
ジョブ・クラフティングとは、従業員が、自分にとって個人的に意義のあるやり方で、職務設計を再定義・再創造するプロセスを指す(Wrzesniewski & Dutton, 2001)。具体的には、①タスク・クラフティング(タスクを量的に変化させることや、タスクの幅や性質を変化させること)、②関係性クラフティング(仕事上の組織内外の人間関係の質と量を変化させること)、③認知的クラフティング(タスクの境界に関する認知を変化させること)の3種類があるとされている(中野, 2022)。
本調査においても、ジョブ・クラフティングの3項目について、それぞれ高中低群に分けて貢献感の平均値を確認したところ、いずれもジョブ・クラフティングの程度が高いほど、貢献感も高い傾向がみられた(図表8)。いずれも有意差があり、効果量も大きかった(η²=.129, .201, .310)。なお、中程度~強い正の相関もみられた(r=.396, .499, .609)。特に、認知的クラフティングは貢献感との関連が強く、仕事そのものが変わらなくても、認知の変化を通じて貢献感を高められる可能性を示唆している。

<図表8>ジョブ・クラフティング 高中低群別 貢献感

ジョブ・クラフティング 高中低群別 貢献感

それでは、ジョブ・クラフティングは、どのようにすれば促進できるのだろうか。先行研究においては、上司からの支援や承認、裁量の許容、仕事の意味を語る機会の提供などが、ジョブ・クラフティングの要因として報告されている(Leana et al., 2009; Tims et al., 2013)。
つまり、上司や組織が業務の目的を伝えることや、現場の創意工夫を歓迎することは、従業員が主体的に仕事を再構築する後押しとなり得るのだ。例えば、法制度上必要なルーティン業務であっても、それが全体の流れのなかでどのような役割を果たしているのかを理解することで、「尻ぬぐい」や「書類穴埋め人」という自認から脱却できる可能性がある。

ブルシット・ジョブは、必ずしも職種や業種に起因するわけではない。そもそも、Graeber(2018)も、「意味がなかったり、ばかばかしかったりする要素をいっさいふくまない仕事は、ほんの一握りなのだ」と指摘している。同じ仕事であっても、それをどう捉えるかは、個人によって異なる。そして、たとえ今の仕事が無意味に思えても、その感覚こそが、実は仕事を大切に思っている証拠なのかもしれない。だからこそ、その感覚を自分自身、そして上司や組織も無下にすることなく、より仕事や人生を楽しむためのシグナルとして活用していただきたい。

調査概要

調査概要

参考文献

角野善司(1994).人生に対する満足尺度(The Satisfaction with Life Scale〔SWLS〕)日本語版作成の試み.日本教育心理学会総会発表論文集,36:192
三隅二不二(1987).「働くことの意味―国際比較」三隅二不二(編著)『働くことの意味Meaning of Working Life: MOWの国際比較研究』有斐閣,pp. 1-100.
中野浩一(2022). 認知的クラフティングに関する一考察. 流通経済大学社会学部論叢, 32(2), 31-42.
リクルートワークス研究所(2025).大企業のホワイトカラーに聞きました。「あなたの会社、職場には、どんなブルシット・ジョブがありますか?」https://www.works-i.com/research/project/bullshit/imi/detail002.html
Graeber, D. (2018). Bullshit Jobs: A Theory. Simon & Schuster. (酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹 [訳] 2020 『ブルシット・ジョブ–クソどうでもいい仕事の理論』岩波書店)
Leana, C., Appelbaum, E., & Shevchuk, I. (2009). Work process and quality of care in early childhood education: The role of job crafting. Academy of management Journal, 52(6), 1169-1192.
Schaufeli, W. B., & Bakker, A. B. (2004). Job demands, job resources, and their relationship with burnout and engagement: A multi‐sample study. Journal of Organizational Behavior: The International Journal of Industrial, Occupational and Organizational Psychology and Behavior, 25(3), 293-315.
Shimazu, A., Schaufeli, W.B., Kosugi, S., et al. (2008). Work engagement in Japan: Validation of the Japanese version of Utrecht Work Engagement Scale. Applied Psychology: An International Review 57, 510-523.
Tims, M., Bakker, A. B., Derks, D., & Van Rhenen, W. (2013). Job crafting at the team and individual level: Implications for work engagement and performance. Group & Organization Management, 38(4), 427-454.
Wrzesniewski, A., & Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of management review, 26(2), 179-201.

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