職場の心理的安全性の高低がメンバーに及ぼす影響 心理的安全性に対するメンバー間の認知のバラつきが職場にもたらす影響

執筆者情報
組織行動研究所
主幹研究員
今城 志保
執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
藤村 直子

チームの成否に影響を及ぼすものとして、心理的安全性に対する注目は依然として高い。
学習や満足度などの一般に望ましいと思われる結果変数との関連性が、多くの研究を通して示されてきたからだ。一方、そのメカニズムの解明については、研究の途上にある。
本研究は、ある企業における職場単位の心理的安全性に着目して、所属メンバー間の心理的安全性の認知のバラつきが、職場にどのような影響をもたらすのかを検討したものである。

※本研究の詳細は、今城志保・藤村直子(2019)「職場の心理的安全性が個人に及ぼす効果を検証する」経営行動科学学会第22回大会発表論文をご参照ください


本研究のサマリー

職場メンバー間の心理的安全性認知にバラつきがあると、職場の心理的安全性が低下する。
上司とのコミュニケーションが多いと、個人の心理的安全性認知は高まり、そのいずれもが適応感に影響を及ぼす。ただし、職場の心理的安全性の水準が低いと、心理的安全性を感じていない個人の適応感の低下の影響が大きくなる。
職場での立場が強い人ほど、心理的安全性を高く認知している。ただし、職場の心理的安全性の水準が低いと、その影響が大きくなる。

調査概要

教育事業に携わる法人A社に勤務する従業員を対象に、2018年7月に職場の特徴や本人の適応感に関するアンケート調査を実施した。本研究では、回収した111の職場のうち、回答者数が5名以上の94職場に所属する1192名を分析対象とした。ここでいう職場とは、所属部署の最小単位で、同一拠点の同一事業部門もしくは機能部門を表している。アンケートへの回答に際して、「職場についての設問については、日常的に仕事上の接点がある、同じ所属の人々のことをイメージしてください。」という注記をしている。

分析に使用した変数は、図表1のとおりである。Edmondson(1999)によれば「心理的安全性」とは、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態と定義され、集団の状態を表す概念であるといえる*1。よって、12項目を個人ごとに平均したものを「個人の心理的安全性」とし、さらに、それらを職場単位で平均したものを「職場の心理的安全性」として分析に用いた。個人の特徴としての「上司コミュニケーション頻度」「適応感」は、それぞれ4項目、11項目の個人ごとの平均を算出して用いた。

分析結果

心理的安全性のバラつきの影響
「職場の心理的安全性」の高低を表すものとして平均値を、バラつきを表すものとして標準偏差の値を用いて、それらの相関を確認したところ、統計的に有意な負の相関となった(相関係数-.33)。それぞれの値をプロットしたものが図表2である。職場内の心理的安全性のバラつきが大きいほど、その職場の心理的安全性の平均値は低くなるという傾向が確認された。

上司との関係性と立場の強さの影響
それでは、職場の心理的安全性の水準が高い(低い)ことは、個人にどのような影響を及ぼすのだろうか。図表3は、「職場の心理的安全性」を等分に3群に分け、中位群を除いた高群(n=391)と低群(n=349)の傾向を比較した分析結果である。

事前の分析において、個人の心理的安全性認知と、上司との関係性(「上司コミュニケーション頻度」)および職場における立場の強さ(「勤続年数〈7段階:1年未満、1-2年、3-4年、5-9年、10-19年、20-29年、30年以上〉」「管理・一般〈2段階:1=一般社員、2=管理職〉」)との間に、統計的に有意な相関が確認された。よって、モデルの検討においては、

上司との関係性が個人の心理的安全性認知に影響する(「上司コミュニケーション頻度」から「個人の心理的安全性」への矢印)
職場における立場の強さが個人の心理的安全性認知に影響する(「勤続年数」「管理・一般」それぞれから「個人の心理的安全性」への矢印)
上記それぞれが個人の適応感に影響する(各変数から「適応感」への矢印)


というパスを想定して分析を行った。「勤続年数」から「個人の心理的安全性」への矢印を除いた、統計的にあてはまりの良い最終モデルを採択した。

〈高群・低群に共通した特徴〉
上司とのコミュニケーションが多いと、個人の心理的安全性認知は高まり、そのいずれもが適応感にポジティブな影響を及ぼすことが確認された(図中の青色矢印)。

〈高群・低群で違いがあった特徴〉
個人の心理的安全性から適応感へのパスについては、高群で.30、低群で.50となり、低群の方が適応感への影響が大きい。つまり、職場の心理的安全性の水準が低いと、心理的安全性を感じていない個人の適応感の低下の影響が大きくなるということだ。

管理・一般から上司コミュニケーション頻度へのパスについては、高群では一般社員でも上司のコミュニケーション頻度が高い様子がうかがえた。また、群間の有意差はないが、低群の方が、管理・一般から個人の心理的安全性への影響が大きかった。これらのことから、職場での立場が強い人ほど、職場の心理的安全性を高く認知しているという傾向はあるものの、高群ではその影響が軽減され、低群ではその影響が大きくなることが確認された。

分析結果から、メンバー間で心理的安全性認知にバラつきがあって、職場の心理的安全性が低くなると、立場の弱い人はさらに心理的安全性を感じにくくなり、適応感へのマイナスの影響が強まるという負のスパイラルが浮かび上がった。バラつきによる職場全体への影響を考えても、心理的安全性認知が低い個人へのケアと底上げが重要になるだろう。その際、上司がメンバーとのコミュニケーション頻度に留意したり、職場での立場が強い人が、自分は安全性が高いと認知しやすいことを意識して、立場の弱い人に対して配慮したりすることが、職場の心理的安全性を高めることに寄与する可能性が示唆された。


*1 Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.56 特集1「多様性を生かすチーム」より抜粋・一部修正したものである。
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