受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)
知見
マネジメント変革
環境が安定し、事業が成長・安定しているならば、企業は無理に組織の形態や運営のあり方を変える必要はないだろう。しかし、環境の変化が大きかったり、そのなかで事業の成長・安定に困難を抱えていたりするのであれば、持続的成長のために企業は自らのあり方を見直さなければならなくなる。
デジタル技術の発達、顧客の嗜好の変化、人手不足など、さまざまな要因により、自社の経営のあり方の見直しを迫られている企業は少なくない。本レポートでは、企業・経営のあり方を変革するための方法について概観する。
技術開発統括部 研究本部 研究主幹
目次
企業は組織であり、組織は個人の集合体である。よって、企業を変革する際には、組織のあり方を変えるというアプローチと、組織を構成する人を変えるというアプローチがある。
また、組織であれば組織形態のようなハード面の特徴もあれば、個人間のコミュニケーションのようなソフト面の特徴もある。よって、ハード面、ソフト面、それぞれを変えるというアプローチがある。さらに、社内にとどまらず、社外との提携のあり方を変えるというアプローチもある。
これらのことから、自社の強み、意思決定のあり方、従業員の特性など、企業・経営のあり方を変えるためのアプローチは、例えば図表01のように整理することができる。
①~⑥について、それぞれ例を挙げる。
①:営業・開発・生産のような「機能別組織」から、製品や市場への適応力を高めるために「事業部制組織」に変える②:「トップダウンの意思決定」から「ボトムアップの意思決定」のように、組織内での情報やコミュニケーションの流れを変える③:自社にはない強みを持った企業を対象に、業務提携やM&Aを行う④:「事務職の担当者が、デジタル技術を習得する」のように、個々人の新たなスキル・知識の獲得を促す⑤:「指示待ち行動」から「先取り行動」のように、個々人の意識・行動の変容を促す⑥:海外進出を推進するために、海外経験豊富な人材の中途採用や業務委託を増やす
各社の置かれる状況、変革が求められるスピードなどによって、いずれがよいかは異なる。留意すべきは、それぞれを単体で進めるよりも、組み合わせた方が効果的、あるいは組み合わせなくては十分な効果が見込めないことが少なくないことである。例えば、製品別戦略の効果を高めるために事業部制組織の形態を取ったとしても、事業部内で営業や開発などのメンバーに機能別での縦割り意識が残ったままでは、事業部制組織によってもたらされる効果は十分に発揮されない。また、デジタル人材の中途採用を強化したとしても、在職社員のデジタル・リテラシーが低いままでは、社内での両者のコミュニケーションや連携が活性化せずに、デジタル技術を用いたビジネス変革が十分に進まないことがある。
組織を変革するうえでは、アプローチする対象について、多角的に検討を進める必要がある。
先には、「どのような対象にアプローチするか」ということを示したが、ここでは「どのようなプロセスやスタンスでアプローチするか」について示す。近年、問題・課題の解決法としてよく取り上げられるのは、2つの対比的なアプローチである。
1つはギャップ・アプローチで、「問題を特定 → 原因を分析 → 解決策を検討 → アクションプランの実施」のような流れを取るものである。
もう1つはポジティブ・アプローチで、「強み・大切にすることの発見 → 実現したい理想像の描写 → 現実的にできることの設定・共有 → 新しい取り組みへの着手」のような流れを取るものである。
「強みに光をあてるポジティブ・アプローチの方が前向きに力を発揮できる」「放っておくとギャップ・アプローチになりがち」など、どちらかというと最近は「ポジティブ・アプローチが優れていて、ギャップ・アプローチが劣っている」かのような表現を目にすることもある。しかし、例えば、「料理の味はよいのだが、接客が目に余る」のように、強みを伸ばしたとしても、弱みがそのよさを打ち消してしまうこともある。
それぞれのアプローチが有効な場面やフェーズがあるので、できることならば、両者をうまく使い分けたり、組み合わせたりすることが大切である。
今回は、組織の変革を促す方法論の概略をお伝えした。組織の変革を促すためには、さまざまな対象へのアプローチが選択できる。また、ギャップ・アプローチとポジティブ・アプローチのように、プロセスやスタンスの選択を行うこともできる。
それぞれ、自社の置かれる状況や目指す姿によって選択を行うことができるが、何もヒントがないなかでの選択は難しいこともある。このような選択をサポートするために、自社の現状や強み・弱みの把握を容易にする組織サーベイや360度サーベイ(多面評価)が用いられることもある。Vol.2以降では、それらのツールの活用方法について紹介していく。
知見 2025/04/21
Vol.2 組織の変革を促すためのアセスメント活用