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研究レポート
「働きがい」は業績に関係するのか
本年2月に2011年版「働きがいのある会社」ランキングが発表されました。本レポートでは、昨年に引き続き「働きがい」と企業の財務業績をあらわす株価との関係に注目した分析の結果を紹介します。「働きがいのある会社」の株価パフォーマンスは株式市場の下降局面、上昇局面のいずれにおいても、市場平均を上回っていることが示されました。
米国に本部を置く専門機関「Great Place To Work(R) Institute」は、毎年、世界40カ国以上で「働きがいのある会社」を世界共通の基準で調査し、各国で「働きがいのある会社のランキング」として発表しています。日本では2005年から実施されており、2011年版の調査には、過去最高の151社が参加しました。この中から従業員250人以上の企業30位までと、従業員50人以上250人未満の企業10位までにランクインした企業が発表されています(図表01参照)。
図表01 「働きがいのある会社」ランキング上位企業
●網掛けは上場企業●「日経ビジネス」誌2011年2月7日号、およびGPTWジャパンのホームページに掲載
昨年の研究レポート『「働きがい」は業績に関係するのか~日本における「働きがいのある会社」ベスト25企業の株価パフォーマンス』では、2010年「働きがいのある会社」調査結果に基づく分析を行い、「働きがいのある会社」のパフォーマンスが市場平均を上回っていることを紹介しました。以下では、昨年の分析手法を踏襲し、2011年版のランキング上位企業のうち、株式上場している13社(図表01において網掛けしている企業)の株価データを分析しました。
まず、株式市場全体(市場平均)の動きを表すTOPIX(東証株価指数)と「働きがいのある会社」13社の株価の動きを比較しました。TOPIXは2007年3月から低下局面に入っており、2007年3月末時点で1,713.6であったのが、2011年3月末時点では869.4となっています。企業の株価と比較するために、2007年3月末時点を1とすると、2011年3月末時点では0.51となります(1,713.6:869.4=1.0:0.51)。
この期間の「働きがいのある会社」の株価はどう動いたのでしょうか。TOPIXと同様に、2007年3月末の株価を1としたときに、2011年3月末時点でいくらになっていたのかを計算した結果を図表02にまとめています。これらの結果は、ほとんど(13社中11社)の企業において株価下落の度合いは市場平均より小さく、また、株価が上昇していた企業もあることを示しています。
図表02 2007年3月末を1としたときの2010年4月末時点の株価
次に、13社全体に投資するというポートフォリオ(複数の金融資産の集合体)を考えます。これを「働きがいのある会社ポートフォリオ」と名づけます。2007年3月末時点において13社の株式に等金額を投資した場合(例えば13社それぞれの株式に1万円ずつ投資する場合)、2011年3月末時点でポートフォリオはプラス52.9%のリターン(年率換算前)となりました。一方で、同期間のTOPIXのリターンはマイナス49.3%(年率換算前)です。株式市場全体が下落する環境においても、「働きがいのある会社」のリターンはプラスだったのです。「働きがいのある会社」が、不況時においても企業業績を高められる可能性が高いことを示唆する結果と言えます。
図表03 「働きがいのある会社ポートフォリオ」のリターン(2007年3月から)
続いて、同期間を2009年3月の前後で2つに分けた場合の結果をお見せしましょう。2009年3月は、内閣府が「景気の谷」と判定し、TOPIXの数値も底を打った時期です。
2007年3月から2009年3月においては、TOPIXも「働きがいのある会社ポートフォリオ」もリターンはマイナスとなっていますが、TOPIXのリターンがマイナス54.9%なのに対し、「働きがいのある会社ポートフォリオ」のリターンはマイナス43.6%にとどまりました。一方、2009年3月から2011年3月においてTOPIXのリターンが12.4%なのに対し、「働きがいのある会社ポートフォリオ」のリターンは74.0%となっています。
図表04 「働きがいのある会社ポートフォリオ」のリターン(2007年3月~2009年3月、2009年3月~2011年3月)
これらの結果は、経済環境が悪化し株式市場全体が低迷する中でも、また景気の反転局面においても、「働きがいのある会社」のパフォーマンスは市場全体を上回っていることを示しています。「働きがい」という組織的な強さを持つ会社は、企業を取り巻く状況が厳しい中でも、業績の大きな落ち込みを避けることができ、また景気回復局面においてはいち早くその時流を捉えることができることを示唆しているのではないでしょうか。
なお、本レポートで行った分析は、分析サンプルとしての対象社数が少なく、また分析期間も短いため、この結果のみをもって、「働きがいのある会社」の業績は高い、と断言することはできません。しかし、以上の結果は、働きがいのある職場環境が不況時における企業業績の足腰の強さや、景気反転時に機敏に対応しすばやく業績を回復させる組織的な力の源泉となっている可能性を感じさせてくれます。
【text:シニアスタッフ 本合 暁詩】
※記事の内容および所属等は掲載時点のものとなります。
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