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研究レポート
管理者適性アセスメント追跡調査2011
リクルートマネジメントソリューションズでは、過去にアセスメント研修「レビューアンドチャレンジⅠ」(※以下「R&CⅠ」)、および「管理者適性検査NMAT」(※以下「NMAT」)を受講/受検した方を対象に、アセスメントの結果とその後の昇進・昇格状況の関係について、追跡調査を行いました。その結果、調査対象企業において、より高い職位に昇進・昇格した人々には、いくつかの共通する特徴があることが明らかになりました。本レポートでは、その管理者の共通特徴、および過去(1995年・1996年)の調査結果と比較した際、その特徴にどのような変化がみられたのかについてご紹介していきます。
「管理職アセスメント追跡調査2011」の調査概要は以下のとおりです。
はじめに「R&CⅠ」の結果と、受講後の活躍状況の関係についてみていきます。【図表03】はR&CⅠの結果と「昇進度」の関係を示したものです。対象者全体(617名)を、「昇進度」によってG(昇進度が高い)群、M(昇進度が中程度)群、P(昇進度が低い)群の3つに区分しました。
図表03 昇進度別R&CⅠ結果
※図表03の見方:目盛はディメンション(R&CⅠでアセスメントする能力要件)ごとのランク得点(1~5)の平均を0とし、そこからの差を示したものです。また、G群とP群の間に差があることを確認するため、t検定という統計的手法を用い、その結果を踏まえて分析を行いました。
G群とP群を比較すると、多くのディメンションでG群がP群を上回っていることが分かります。なかでも得点差が大きいものを上位から3つ挙げると、【課題展開能力】では「情報収集力」「分析力」「構想力」、【課題遂行能力】では「統率力」「積極性」「説得力」となります。
このことから、「幅広く必要な情報を集めた上で事実を掘り下げて本質的な問題をつかみ、解決に向けて方針やビジョンを打ち出していく」とともに、「自らの意思を明確に伝え、率先して周囲をリードしていく」タイプの人がより高い職位に昇進・昇格しているということができます。
1996年にも類似した追跡調査を行いました。そこで、前回(1996年)の調査と今回(2011年)の調査の昇進度別「R&CⅠ」結果の比較を行っています。(【図表04】)
図表04 昇進度別「R&CⅠ」結果(1996年と2011年の比較)
※図表04の見方:目盛はディメンションごとのランク得点(1~5)の平均を0とし、そこからの差を示したものです。※グラフの見易さを考慮し、M(昇進度が中程度)群は表示を省略しています。※1996年の調査においても、集団を「昇進度」によってG群・M群・P群に分類して集計を行いましたが、グラフには今回の調査に対応する2群のみ表示しています。
【課題遂行能力】では、今回の調査でG群とP群の差が大きかった上位3ディメンション「統率力」「積極性」「説得力」について、前回の調査でも同様に大きな得点差がみられました。一方で【課題展開能力】では、前回の調査でG群とP群の得点差が大きかったのは上位から「情報収集力」「構想力」「手順化力」であったのに対し、今回の調査では上位から「情報収集力」「分析力」「構想力」となっており、「分析力」の相対的な重要性が増しているといえます。また、ほとんどのディメンションで前回より今回の調査の方が、G群とP群の得点差が広がっていることが分かります。特に今回の調査でG群とP群の差が最も大きかった「情報収集力」については、前回の結果を含めた全体の中でも最も差が大きくなっています。
以上のことから、・より高い職位に昇進・昇格する人と、そうではない人の能力面での差は、以前に比べて広がりつつある・情報の質・量ともに大きく変化している今日においては、今まで以上に、必要な情報の収集と選別と、さらにそこから問題の本質をとらえていく力が必要となっている可能性があるといえるでしょう。
ここからは「NMAT」の結果と、受検後の「昇進度」の関係についてみていきます。【図表05】は「NMAT」の結果と「昇進度」の関係を示したものです。前述の「R&CⅠ」と同様に、対象者全体(1,046名)を、受検時から現在までの「昇進度」によってG(昇進度が高い)群、M(昇進度が中程度)群、P(昇進度が低い)群の3つに区分しました。
図表05 昇進度別「NMAT」結果
※図表05の見方:尺度ごとに、一般企業の中間管理者層の標準を50としたときの得点を示したものです。G群とP群の間に差があることを確認するため、t検定という統計的手法を用い、その結果を踏まえて分析を行いました。
「性格特徴」についてG群とP群を比較すると、G群の特徴として【対人関係面】では「外向」「統率」「理性」「強靱」、【課題解決面】では「変革」「大胆」の傾向が強いことが分かります。つまり、人との接し方としては、「社交的で集団の中でも臆せずに自分の意見を主張し、ものの筋を重視しながら、多少のことには動じない」タイプで、仕事への取り組みにおいては、「革新的で思い切った決断をする」タイプの人が、相対的に高い職位へ昇進・昇格しているといえます。
これに加えて「基礎能力」「性格的適性」「指向」でもG群とP群ではっきりと違いが現れています。G群は基礎能力が全般的に高く、「組織管理」「企画開発」「創造革新」タイプへの適性が高くなっていますが、一方で一定の分野で着実に実務を推進する「実務推進」タイプへの適性はP群よりも低くなっています。また指向においてもほぼ同様の傾向がみられます。
このことから、経営の意向を汲んだ組織統括・運営に加え、専門的視点からの企画立案や、戦略的な事業推進への適性を供えている人が、より高い職位へ昇進・昇格していることが推測されます。
下記【図表06】は、前回(1995年)の調査と今回(2011年)の調査の結果の比較です。
図表06 昇進度別NMAT結果(1995年と2011年の比較)
※図表06の見方:尺度ごとに一般企業の中間管理者層の標準を50としたときの得点を示したものです。※前回の調査では「昇進度」のデータ収集を行っておらず、直接的に比較可能なデータがないため、ここでは参考データとして受検時の職位によって「部長」をG群、「課長」をM群、「係長」をP群に分けたものを用いています。
データの分類の方法に違いがあることから前回と今回の結果を単純に比較できないものの、【図表06】からいくつかの特徴がうかがえました。まず、現在においては、高い基礎能力に加えて、合理的・分析的な判断を行い、独創性を重視して仕事に取り組む姿勢と、「組織管理」、「企画開発」、「創造革新」の3タイプへの強い指向が、高い職位の人材により必要となっていることが推測されます。加えて着目すべき点は、多くの尺度においてG群とP群の差は今回の調査の方が大きくなっていることです。特に基礎能力全般、および【対人関係面】の「心情-理性」、【課題解決面】の「維持-変革」における差の広がりは顕著なようです。さらに指向面をみると、「組織管理」、「創造革新」は傾向に大きな違いがみられませんでしたが、「企画開発」と「実務推進」は、以前に比べてG群とP群の差が顕著になっていました。特に、G群の「企画開発」指向が高くなっていることが特徴的です。
今回の調査対象企業で「昇進度」が高かったG群の特徴について、性格面では、社交的で臆せずに自分の意見を主張したり、ものの筋を重視しながら、革新的で思い切った決断をするタイプであるようです。また職務遂行能力については、幅広く情報を集めた上で事実を掘り下げて本質的な問題をつかむ能力や、解決に向けて方針やビジョンを打ち出し、率先して周囲をリードしていく能力をもっている傾向があることが確認されました。また調査を通じて、「R&CⅠ」、「NMAT」ともにG群とP群の差は以前よりも広がってきていることが確認されました。さらにG群の資質や能力の特徴にも変化がみられ、企業を取り巻く環境変化によって、昇進・昇格する人材に必要となる要件の優先順位や強弱も変化し得ることがうかがえました。
今回の調査では、より高い職位に昇進・昇格している人に共通する要件を明らかにしました。しかし、企業によっておかれた状況や組織文化は様々であり、各社で昇進・昇格する人材の要件もまた、今回の結果とは異なる特徴を示す可能性は大いにあります。今回の調査結果が、一般的な傾向かどうかを確認するために、今後も継続してデータを蓄積し検証してまいります。そして、各企業の皆様が将来の活躍人材をより確実に見極めるために質の高いアセスメントを活用され、定期的にその結果を分析し、自社独自の人材要件や昇進・昇格基準を策定・見直される際のお役にたてれば幸いです。
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―能力適性検査にまつわる疑問― 受検者によって出題される問題が変わるのは不公平か?(後編)