調査サマリー

職場の尊厳を保つ・損なう職場環境と個人への影響

職場の尊厳に関する意識調査

公開日
更新日
職場の尊厳に関する意識調査

「職場の尊厳に関する意識調査」の実施概要は下表のとおりです。

調査概要

調査目的

会社・職場において、自身の尊厳(人間として尊重され、その人格や価値が認められること)が保たれているか、傷つけられ損なわれているか、その実態を把握すること。ハラスメントを受けた経験や、人事制度、上司、職場のサポートといった職場環境など、何が職場の尊厳と関係しているのか、適応感、孤独感、離職意向、「静かな退職」意識といった本人の心的コンディションへの影響を明らかにすること

実施時期

2025年8月22~26日

調査対象

20代から50代の会社勤務正社員(経営者・役員を除く)
※年代、性別、職種(営業/サービス/事務/技術)、勤務先の従業員規模(100〜999名/1000〜4999名/5000名以上)が均等になるように回収

有効回答数

1338名

調査方法

インターネット調査

調査内容

  • 職場の尊厳に関する意識
  • ハラスメントを受けた経験
  • 職場環境(人事制度、上司の特徴、職場のサポート、評価の手続きの公正さ、職務特性)
  • 本人の状態(適応感、幸福感、情緒的消耗感、孤独感、離職意向、静かな退職) など

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.80 特集1「尊厳ある職場を考える」(P.23~30)
・調査レポート「社員の尊厳を保つ・損なう職場とは 」をご参照ください。

調査結果サマリー

今回実施した調査の結果から、以下のような実態を確認することができました。

●職場の尊厳尺度による測定

  • Thomas & Lucas(2019)によるWorkplace Dignity Scaleを道谷・正木(2024)が日本語訳した「職場の尊厳尺度」の項目を用いた。
  • 「尊厳」が保たれている状態を示す5尺度(敬意ある交流、能力と貢献、平等、固有の価値、全般的尊厳)14項目、反対に尊厳が損なわれている「侮辱」の状態を示す1尺度4項目の計18項目から成る。「非常にそう思う」~「まったくそう思わない」の7件法。
  • 「尊厳」の項目例として提示した5項目(「私は職場の人たちと接する時、尊重されていると感じる」など)について、約6割が「非常にそう思う」「そう思う」「ややそう思う」と回答。
  • 「侮辱」の項目例(「私の尊厳は職場で損なわれている」)では、約2割が職場で尊厳が損なわれていると回答。

●尊厳が損なわれた経験

  • 自由記述で回答のあった200件について、先行研究をまとめたGibsonら(2023)による「Dignity Framework」を参考に分類。「不満・疎外」「軽蔑・排除」「使い捨て・消耗」の3つのカテゴリが確認された。
  • これらの経験に際しては、「1.職場の同僚」(25.0%)、「2.上司」(23.5%)、「6.家族や社外の知人・友人」(26.5%)という身近な人への相談が相対的に多く選ばれていた。「7.転職を考えた」(23.0%)、「8.しばらく会社を休んだ」(6.0%)という人もいた。
  • 約3割は「10.特に何もしなかった」(29.5%)を選択。理由としては、「1.何をしても解決にならないと思ったから」(67.8%)が最も多い。「7.自分が我慢すればいいと思ったから」(42.4%)、「2.身近に相談できる人がいなかったから」(25.4%)、「4.会社での評価・評判に良くない影響や不利益があると思ったから」(22.0%)と続く。

●ハラスメント経験と職場の尊厳・侮辱

  • ハラスメント経験の有無別に「尊厳」「侮辱」の得点を見ると、ハラスメント経験がない職場(「13.あてはまるものはない」)では「尊厳」が高く、「侮辱」が低い傾向が、ハラスメント経験がある職場では、総じて、「侮辱」が高い。
  • 「11.カスタマーハラスメント」経験の有無に関しては、全体では「尊厳」「侮辱」いずれも統計的に有意な差はなかったが、職種別に傾向を確認したところ、サービス職では、カスハラ経験有の方が「尊厳」が有意に低かった。

●個人選択型人事制度の導入と職場の尊厳・侮辱

  • 個人選択型人事制度(働き方やキャリアに関して主体的に選択する機会を提供する制度)との関係を確認したところ、選択肢に挙げた16施策の導入有無別の「尊厳」「侮辱」には有意な差が確認された(「10.管理職・専門職を行き来できる等級制度」と「侮辱」のみ有意差なし)。
  • 「尊厳」の得点差が大きい5施策は、「11.人事や社外の専門家にキャリアについて相談できる制度」「12.面談などで上司にキャリアについて相談できる制度」「10.管理職・専門職を行き来できる等級制度」「8.新規事業や業務改善などを会社に提案できる制度」「9.希望する研修や講習を受講できる制度」。いずれの施策も導入されていない(「17.あてはまるものはない」)という認識の場合には「尊厳」の値は低い。
  • 「侮辱」の得点差が大きい上位5施策は「13.育児のための休暇・休職制度」「14.介護のための休暇・休職制度」「12.面談などで上司にキャリアについて相談できる制度」「15.育児や介護以外の休暇・休職制度」「9.希望する研修や講習を受講できる制度」。いずれの施策も導入されていない(「17.あてはまるものはない」)という認識の場合には「侮辱」の値は高い。

●上司・職場・職務の特徴別 職場の尊厳・侮辱

  • 職場環境として、直属の上司の倫理的態度、周囲のサポート、評価の手続きの公正さ、職務特性を挙げ、「尊厳」「侮辱」との関係について確認した。相対的に得点差が大きかったのは、「尊厳」については「3.ソーシャルサポート十分度」「4.手続き的公正」「1.上司の倫理的リーダーシップ」の高群の方が高く、「侮辱」については「2.上司の不正放置」の高群、「3.ソーシャルサポート十分度」の低群の方が高い。
  • 「尊厳」と「侮辱」を従属変数とした重回帰分析では、「尊厳」「侮辱」のいずれにも有意に関係しているのは「ソーシャルサポート十分度」「個人選択型人事制度導入の選択数」「職務重要性」である。それ以外は、「上司の倫理的リーダーシップ」は「尊厳」に、「上司の不正放置」は「侮辱」と関係しているなど、「尊厳」「侮辱」で有意となる変数が異なる。

●尊厳×侮辱のマトリクス

  • 「尊厳」「侮辱」をかけ合わせて4群に分けると、「尊厳」が高く「侮辱」が低い「A.尊厳H侮辱L」が最も多いが(48.0%)、「尊厳」「侮辱」共に高い「B.尊厳H侮辱H」が次に多い(32.4%)。
  • 本人の心的コンディションとして挙げた各変数の平均値を4群ごとに集計すると、「A.尊厳H侮辱L」は「1.適応感」「2.協調的幸福感」が最も高く、「4.孤独感」「5.離職意向」が最も低い。逆に、「D.尊厳L侮辱H」は、「1.適応感」「2.協調的幸福感」が低く、「4.孤独感」「5.離職意向」が高い。
  • 一方、「尊厳」「侮辱」のいずれも高い「B.尊厳H侮辱H」は、「1.適応感」「2.協調的幸福感」は「A.尊厳H侮辱L」の次に高いものの、「3.情緒的消耗感」が最も高く、「4.孤独感」「5.離職意向」もC、Dと同程度に高い傾向にあった。「静かな退職」(退職せずに、意図的に仕事量を制限し、最低限の業務しか行わない状態)の下位尺度では、「6-3.モチベーション欠如」の程度は低いが、「6-1.心の距離」「6-2.主体性欠如」は最も高い。

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.80 特集1「尊厳ある職場を考える」(P.23~30)
・調査レポート「社員の尊厳を保つ・損なう職場とは 」をご参照ください。

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