調査サマリー

職場におけるマッチョイズムの功罪

職場における「強さを競う文化」に関する調査

公開日
更新日
職場における「強さを競う文化」に関する調査

「職場における『強さを競う文化』に関する調査」の実施概要は下表のとおりです。

調査概要

調査概要

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.78 特集1「職場におけるマッチョイズムの功罪(P.23~30)」
・調査レポート「“マッチョイズム”は害悪か」をご参照ください。

調査結果サマリー

今回実施した調査の結果から、以下のような実態を確認することができました。

※本調査の質問紙においては、「マッチョイズム」の代わりに「強さを競う文化」という文言を用いた。「強さを競う文化」とは、後述のMCC(Masculinity Contest Culture)の訳語である「男性性を競う文化」を一部改変したものである。これは、調査回答者が偏ったイメージを想起することを避けるための表現の変更であり、本調査報告上は「マッチョイズム」と「強さを競う文化」を同義に扱う。

●職場の「強さを競う文化」の程度

  • Berdahlら(2018)※によるMCC(Masculinity Contest Culture)の4つの特徴を参考に、職場における「強さを競う文化」を具体的な状況に落とし込んだオリジナル項目を作成し、実態を確認した。確認的因子分析の結果、想定していた4つの特徴(「弱みを見せないこと」「力強さやスタミナがあること」「仕事を最優先すること」「競争に勝つことが望ましいとされること」)および、別途探索的に入れた2項目(「その他」)の構造が確認された。

    ※Berdahl, J. L., Cooper, M., Glick, P., Livingston, R. W., & Williams, J. C. (2018). Work as a masculinity contest. Journal of social issues, 74(3), 422-448.

  • 最も多く見られたのは「弱みを見せないこと」のなかの「1.プライベートで困難なことがあっても、職場では平然としていなくてはならない」で、全体の67.4%が肯定的な回答(「とてもあてはまる」「あてはまる」「ややあてはまる」、以下同様)。「弱みを見せないこと」および「力強さやスタミナがあること」の項目は、いずれも過半数が肯定的な回答。
  • 「仕事を最優先すること」および「競争に勝つことが望ましいとされること」の項目のほとんどは肯定的な回答が50%を下回った。

●「強さを競う文化」に対する考え

  • 否定的に捉える回答が多く、「5.『強さを競う文化』は社員のストレスや精神的負担を増大させる」は71.3%(「とてもあてはまる」「あてはまる」「ややあてはまる」、以下同様)、「6.『強さを競う文化』は時代錯誤であり、脱却すべきだ」は60.3%。ただし、「1. 『強さを競う文化』には良い面と悪い面があるので、一概によしあしはいえない」という回答も一定数あり(63.9%)。
  • 過剰感(「7.自社の『強さを競う文化』は過剰だ」)は44.8%。「強さを競う文化」の4つの特徴のうち、どれを過剰だと感じているかを複数回答で確認したところ、「仕事を最優先すること」が最も高かった(22.1%)。「力強さやスタミナがあること」(17.9%)、「競争に勝つことが望ましいとされること」(14.8%)、「弱みを見せないこと」(13.4%)と続く。
  • 周囲の過剰感の認識(「8.周囲の人は自社の『強さを競う文化』を過剰だと思っているだろう」)は43.5%。

●「強さを競う文化」の良い影響と悪い影響についての具体的なエピソード

  • 自由記述結果において、良い影響としては、成長・モチベーションの向上・パフォーマンスの向上に関する記載が確認された。ただし、全体の過半数は「良い影響はない」という主旨の記述であった。
  • 悪い影響としては、疲弊感・公平性の低下・パフォーマンスの低下・多様性の低下に関する記載が確認された。

●「強さを競う文化」の程度や過剰感が高い会社の特徴

  • 会社の特徴としていくつかの条件を確認した結果、「総合職、地域総合職、一般職などの別がある」という項目を選択した人(n=277)と選択しなかった人(n=656)の間で、「強さを競う文化」12項目の平均値および過剰感、周囲の過剰感の認識において有意差が見られ、「総合職、地域総合職、一般職などの別がある」会社で働いている人の方が、いずれも平均値が高かった。
  • 柔軟な働き方を促す各制度の有無で2群に分け、同様に「強さを競う文化」の程度および過剰感に関して確認したところ、いずれも有意差はなかった。

●「強さを競う文化」の程度や過剰感が高い個人の特徴

  • 職場において、立場が弱いと感じている程度(「性別、学歴、年代などの属性に関して、職場において少数派だと感じることがある」「職場の会議などでは、気軽に発言できる立場ではない」など4項目の平均値)の高低2群において、立場が弱いと感じている人の方が過剰感・周囲の過剰感の認識が有意に高い傾向にあった。
  • 一般社員と管理職で過剰感・周囲の過剰感の認識の違いを確認したところ、管理職の方が統計的に有意に高かった。
  • 「総合職、地域総合職、一般職などの別がある」会社で働いている一般社員のみに絞り、昇進意欲(「組織で評価され昇進したい」「組織のなかで出世し高い地位に就きたい」の2項目を平均)の高低2群で過剰感・周囲の過剰感の認識の平均値の違いを確認すると、昇進意欲高群は昇進意欲低群と比較して、どちらも統計的に有意に高かった。

●「強さを競う文化」×包摂性別の結果指標

  • 「強さを競う文化」の程度と職場の包摂性(「私の職場では、仕事上の役割だけでなく、個々人の性格や人柄も大切にされている」などの5項目の平均値)の高低を掛け合わせた4群に分けて、組織や個人の状態を示す6つの結果変数について確認した。4群の表記を簡略化し、(1)強包H、(2)強H包L、(3)強L包H、(4)強包Lと表す。
  • 居場所安心感、居場所本来感、組織市民行動、昇進意欲では、(1)強包H(3)強L包H(いずれも包摂性H)の得点が高く(2)強H包L(4)強包L(いずれも包摂性L)の得点は低かった。
  • 疲弊感が高い順は、(2)強H包L(1)強包H(4)強包L(3)強L包H。「強さを競う文化」は疲弊感につながりやすく、たとえ包摂性が高い職場であっても、あまり緩和されることがないと考えられる。
  • 離職意向が高い順は、(4)強包L(2)強H包L(3)強L包H(1)強包H。職場の包摂性が低い場合は、「強さを競う文化」の程度が低い方が、離職意向が高い。

調査結果の詳細は、
・弊社機関誌RMS Message vol.78 特集1「職場におけるマッチョイズムの功罪(P.23~30)」
・調査レポート「“マッチョイズム”は害悪か」をご参照ください。

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