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プレスリリース
4人に1人が「静かな退職者」と共に働いている。不利益だけでなく恩恵もある
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、昨年度に続き、今年度も従業員規模が50名以上の企業に勤める25歳~59歳の正社員7,105名に対して、「働く人の本音調査2025」を実施しました。第2弾となる今回は、近年国内外で注目を集める「静かな退職(Quiet Quitting)」に関する分析結果を公開しました。
近年、国内外で頻繁に取り上げられている「静かな退職(Quiet Quitting)」は、仕事に必要な最低限のことだけを行い、それ以上は行わないという状態を指します(Backer, 2023)。このような働き方は決して新しいものではなく、どの時代・どの組織にも一定数存在していたと考えられます。しかし、労働人口の減少・技術革新といった外部環境の変化が進む中、これまで以上に許容されづらくなっているのかもしれません。
実際、今年に入ってから日本国内でも「静かな退職」をめぐる報道が目立つようになり、その存在をどう受け止めるべきか、社会全体で議論が始まっています。「静かな退職」そのものの実態や要因だけでなく、周囲に及ぼす影響を理解することが重要だと捉え、本調査では、静かな退職者と共に働く人々にフォーカスしました。
【エグゼクティブサマリ】
Topic1:4人に1人が「職場に静かな退職者がいる」と回答・誰もが静かな退職者と職場で関わる可能性が大いにある
Topic2:職場に「静かな退職者」がいると、周囲の幸福感は低い・最低限の業務遂行、周囲の心理には影響・「同僚や上司の『静かな退職』によって、恩恵を感じたことがある」人も存在 ― 15.1%が実感
Topic3:20代は同僚や上司の「静かな退職」に恩恵を感じる割合が他の年代よりも高い・中堅層の方が職場に「静かな退職者」がいることによる不利益を感じやすい傾向
Topic4:不利益の最大の理由は“仕事量増加”、恩恵は“相対的評価上昇”・「静かな退職者」がいることにより上司・部下の双方に負担、特に管理職で顕著・一方で恩恵は、評価の相対的上昇が最多
Topic5:周囲に静かな退職者がいても、成長支援や正当評価の実感があれば幸福感は高い
*詳細は調査レポートを参照ください。*本調査では、人事施策の検討や研究など、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび従業員規模別や年代別などの各種属性別集計データを開示しています。ご希望の方は、「働く人の本音調査2025 第2回のオープンデータ希望」と明記の上、「お問い合わせ」より資料請求ください。【10月23日までの期間限定】
図表1:「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」の回答結果
*感情状態を含み、家族・仕事など特定の領域に対する満足や人生全般に対する満足を含む広範な概念 (Diener, Suh, Lucas, & Smith, 1999/伊藤ら, 2003)
図表2:「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」と感じるかどうかによる主観的幸福感の違い
● 「同僚や上司の『静かな退職』によって、恩恵を感じたことがある」人も存在 ― 15.1%が実感
図表3:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、不利益を被ったと感じたことがある」「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、恩恵を受けたと感じたことがある」の回答結果
図表4:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、不利益を被ったと感じたことがある」「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、恩恵を受けたと感じたことがある」の年代別の回答結果
図表5:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に「静かな退職」をしている人がいることで生じた不利益はありましたか。以下からひとつカテゴリーを選択したうえで、具体的に教えてください。」の回答結果 ※未回答については図表から割愛
不利益を受けたと感じたことがある理由
不利益の理由<自由記述から抜粋>
図表6:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に「静かな退職」をしている人がいることで生じた恩恵はありましたか。以下からひとつカテゴリーを選択したうえで、具体的に教えてください。」の回答結果 ※未回答については図表から割愛
恩恵を受けたと感じたことがある理由
恩恵の理由<自由記述から抜粋>
「静かな退職者」が周囲にいると主観的幸福感が低い傾向にある一方、不利益を感じる場合も、恩恵を感じる場合もあることが分かりました。では、「静かな退職者」が組織にいるなかで健やかに働き続けるための条件はあるのでしょうか。
図表7:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)成長支援感の高低による主観的幸福感の違い
図表8:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)正当評価感の高低による主観的幸福感の違い
*一定の割合(2:6:2と言われることが多い)でよく働くアリ、普通に働くアリ、働かないアリがいるという法則。なお、よく働くアリのみを抽出しても、同じ割合で働かないアリが生じるとされている。
Backer K. 2023. Here’s how to get your “quiet quitters” re-engaged. AZBIGMEDIA. https://azbigmedia.com/business/heres-how-to-get-your-quiet-quitters-re-engaged/伊藤裕子, 相良順子, 池田政子, & 川浦康至. (2003). 主観的幸福感尺度の作成と信頼性・妥当性の検討. 心理学研究, 74(3), 276-281.
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 研究員大庭 りり子(おおば りりこ)本レポートでは、昨年に引き続き実施した「働く人の本音調査」において、今年度独自のテーマとして盛り込んだ「静かな退職」に関する設問の結果をご紹介しました。「静かな退職」をしている人は、欠勤や非生産的行動が多く、組織市民行動(結果として組織の効率や機能が高まる、自発的な役割外行動)やパフォーマンスが低い傾向にあることが先行研究において示されています。そのため、自分自身は「静かな退職」をすることがないと思っている人も、同僚・上司・部下などとして関わる可能性は少なくないと考え、今回は、「静かな退職」をしている当事者ではなく、その周囲の人にスポットを当てて分析しました。第一に27.7%の人が「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」ことが分かりました。今回の調査では業種や職種での割付は行っていないため、あらゆる職場で4人に1人が「静かな退職」をしているとは言えないものの、多くの人にとって身近なものであることが確認できました。なお、本編では記載していませんが、12.4%の人が「自分は同僚や上司から『静かな退職』をしている人と認識されていると思う」と回答していました。27.7%とは一定の乖離があることから、仕事との向き合い方に関して、自覚と周囲からの見え方には齟齬がある可能性も示唆されたことは興味深い結果でした。次に、主観的幸福感を結果変数とし、「静かな退職」が周囲に及ぼす影響について検討しました。「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」かどうかで2群に分けたところ、周囲に静かな退職者がいる群の方が統計的に有意に「主観的幸福感は低い」という結果が出ました。「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、不利益を被ったと感じたことがある」人が該当者の半数を超えていたこととも関連していると考えられます。しかし、「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、恩恵を受けたと感じたことがある」人も15.1%おり、特に20代は22.3%の人がそのように捉えていたことからは、「静かな退職」の新たな一面を提示できたのではないでしょうか。不利益と恩恵の自由記述回答としては、沢山の回答をお寄せいただいた中から、代表的なものを選別しています。ご確認いただき、現場の生の声を感じていただけますと幸いです。(なお、紹介しきれなかったその他多くの回答につきましても、「お問い合わせ」より本調査のデータをお問い合わせいただければご紹介いたします)最後に、「成長支援」と「正当評価」の実感の高低による主観的幸福感の違いを確認しました。「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」かどうかによる違いも決して小さくはなかったものの、周囲に「静かな退職」をしている人がいると感じていても、「成長支援」や「正当評価」がなされていると感じられていると主観的幸福感は高い、と示されました。これらは、会社による適切な制度設計や上司による働きかけの必要性を示すとともに、働く個人である一人ひとりが制度や機会を活用する重要性を示すものでもあります。議論の前提として、本文でもお伝えしているように、「静かな退職」は排除や防止を目指す対象ではない、と考えています。一定数は自然に生じる現象であるとともに、誰しも、「静かな退職」をすることになる可能性があるのではないでしょうか。公私のさまざまな状況が要因になると考えられ、悪意がない場合が多いようにも思います。だからこそ、本レポートを「静かな退職」という現象、そして「静かな退職」をしている人をただ忌避するのではなく、向き合い方・捉え方を再考するきっかけとしていただけましたら幸甚です。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 研究員大庭 りり子(おおば りりこ)
本レポートでは、昨年に引き続き実施した「働く人の本音調査」において、今年度独自のテーマとして盛り込んだ「静かな退職」に関する設問の結果をご紹介しました。「静かな退職」をしている人は、欠勤や非生産的行動が多く、組織市民行動(結果として組織の効率や機能が高まる、自発的な役割外行動)やパフォーマンスが低い傾向にあることが先行研究において示されています。そのため、自分自身は「静かな退職」をすることがないと思っている人も、同僚・上司・部下などとして関わる可能性は少なくないと考え、今回は、「静かな退職」をしている当事者ではなく、その周囲の人にスポットを当てて分析しました。
第一に27.7%の人が「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」ことが分かりました。今回の調査では業種や職種での割付は行っていないため、あらゆる職場で4人に1人が「静かな退職」をしているとは言えないものの、多くの人にとって身近なものであることが確認できました。なお、本編では記載していませんが、12.4%の人が「自分は同僚や上司から『静かな退職』をしている人と認識されていると思う」と回答していました。27.7%とは一定の乖離があることから、仕事との向き合い方に関して、自覚と周囲からの見え方には齟齬がある可能性も示唆されたことは興味深い結果でした。
次に、主観的幸福感を結果変数とし、「静かな退職」が周囲に及ぼす影響について検討しました。「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」かどうかで2群に分けたところ、周囲に静かな退職者がいる群の方が統計的に有意に「主観的幸福感は低い」という結果が出ました。「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、不利益を被ったと感じたことがある」人が該当者の半数を超えていたこととも関連していると考えられます。しかし、「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、恩恵を受けたと感じたことがある」人も15.1%おり、特に20代は22.3%の人がそのように捉えていたことからは、「静かな退職」の新たな一面を提示できたのではないでしょうか。不利益と恩恵の自由記述回答としては、沢山の回答をお寄せいただいた中から、代表的なものを選別しています。ご確認いただき、現場の生の声を感じていただけますと幸いです。(なお、紹介しきれなかったその他多くの回答につきましても、「お問い合わせ」より本調査のデータをお問い合わせいただければご紹介いたします)
最後に、「成長支援」と「正当評価」の実感の高低による主観的幸福感の違いを確認しました。「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」かどうかによる違いも決して小さくはなかったものの、周囲に「静かな退職」をしている人がいると感じていても、「成長支援」や「正当評価」がなされていると感じられていると主観的幸福感は高い、と示されました。これらは、会社による適切な制度設計や上司による働きかけの必要性を示すとともに、働く個人である一人ひとりが制度や機会を活用する重要性を示すものでもあります。
議論の前提として、本文でもお伝えしているように、「静かな退職」は排除や防止を目指す対象ではない、と考えています。一定数は自然に生じる現象であるとともに、誰しも、「静かな退職」をすることになる可能性があるのではないでしょうか。公私のさまざまな状況が要因になると考えられ、悪意がない場合が多いようにも思います。だからこそ、本レポートを「静かな退職」という現象、そして「静かな退職」をしている人をただ忌避するのではなく、向き合い方・捉え方を再考するきっかけとしていただけましたら幸甚です。
【リクルートマネジメントソリューションズがこれまでに実施した関連調査】
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「働く人の本音調査2025」第2回を発表
「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(2025)」の分析結果を発表
「職場におけるフィードバック実態調査」の結果を発表
書籍『再雇用という働き方──ミドルシニアのキャリア戦略』発売 ミドルシニアのキャリアに悩むすべての人に届けたい、実践的かつ希望ある一冊
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