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「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」の結果を発表

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企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区代表取締役社長:山崎淳以下、当社)は、企業の人事担当者150名、管理職層150名に対し、「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」を実施し、「管理職に期待していること」や「管理職が日々のマネジメント業務で難しいと思っていること」など、調査結果から見える実態について公表しました。

【エグゼクティブサマリ】

  • 人事担当者・管理職層が思う企業組織課題は「ミドルマネジメント層の過重負担」が最多(図表1)
  • 人事担当者が管理職に期待していること、管理職層が重要だと思う役割は「メンバーの育成」が最多(図表2)
  • 管理職層が「マネジメント業務に携わる比率」は50%が最多。プレイヤー業務を担っている実情が明らかに(図表3)
  • 管理職層がプレイヤー業務を担う理由は「メンバーに知識・スキルが不足しており仕事を一任できない」が最多(図表4)
  • 管理職層がマネジメント業務で難しいと思っていることは「メンバーの育成・能力開発をすること」が最多(図表5)
  • 管理職層がメンバーの育成・能力開発に対して望むサポートは「研修などでのインプット」が最多(図表6)
  • 人事担当者が思う課長・マネジャー候補育成・選抜の難しさは「課長・マネジャーになりたいという社員が減っている」が最多(図表7)
  • 人事担当者・管理職層の約7割が「自分の所属組織は自律共創型組織であることが必要だと思う」と回答(図表8)
  • 自律共創型組織運営に向けた難しさは「あいまいな状況のなかでも先を見て、組織のビジョンを打ち出す」が最多(図表9)

*詳細は調査レポートを参照ください。

1. 調査担当研究員のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDサービス開発部トレーニング開発グループ
主任研究員 木越 智彰

木越智彰の顔写真

本調査スタートの2020年から初めて「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」ことが今年、人事担当者と管理職層の両者において企業組織課題の1位になったのは象徴的な結果であったと言えます(図表1)。

ただし、ミドルマネジャーの過重負荷状態は以前から叫ばれてきました。今年度の調査結果から示唆されるのは、比較的短期的な「業績達成」や「メンバーの育成」の重要度は変わらないままに、中長期的な視点が必要となる「メンバーのキャリア形成支援」までマネジャーに期待されるようになり、マネジャーの担う役割の幅は広がり続けているということです(図表2)

一方で、組織としては、自律共創型*の組織転換への必要性が年々高まっています(図表8)。7割近いマネジャーが、自組織が自律共創型の組織であることが必要であると回答しており、これは会社から求められていると感じる割合より高くなっています。現場に近いマネジャーこそが自律共創型の組織転換の必要性を肌で強く感じていると言えそうです。

自律共創型の組織では、マネジャーが一人でけん引するのではなく、メンバーそれぞれがまさに自律的に動き、自らの意思を打ち出していくことが求められます。このようなメンバーの変化を起こすことをマネジャーだけに期待するのではなく、個々のメンバーそれぞれが成長するための施策や支援を、組織変革の動きと有機的につなげ、効果を最大化することが人事機能には求められています。そうした支援が、結果的には、マネジャーの過重負荷状態を軽減する打ち手にもなるのではないでしょうか。

*自律共創型のマネジメント

2. 調査の結果

● 人事担当者・管理職層が思う企業組織課題は「ミドルマネジメント層の過重負担」が最多(図表1)

・人事担当者に「会社の組織課題」について尋ねたところ、選択数が多い順に、1位「1. ミドルマネジメント層の負担が過重になっている(65.3%)」、2位「2.次世代の経営を担う人材が育っていない(64.0%)」、3位「3. 中堅社員が小粒化している(63.3%)」だった。

・同じ設問に対する管理職層の回答は、1位「1. ミドルマネジメント層の負担が過重になっている (64.7%)」、2位「3. 中堅社員が小粒化している(64.0%)」、3位が3つあり「2.次世代の経営 を担う人材が育っていない(62.7%)」「5.新価値創造・イノベーションが起こせていない(62.7%)」「8.新人・若手社員の立ち上がりが遅くなっている(62.7%)」だった。

→ 「1.ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」の選択率が1位になったのは人事の回答でも管理職の回答でも、本調査をスタートした2020年から初めての結果となった。ビジネス環境の変化が激しいなかでの、組織目標の達成や新価値創造の役割に加え、管理職の選択率が3位になっている「8.新人・若手社員の立ち上がりが遅くなっている(62.7%)」のようなピープルマネジメントの難度が上がっていることなども背景として考えられる。

また、2 位の「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」も前回までの調査でも高い選択率となっている。「3.中堅社員が小粒化している」という課題もあわせて考えると、企業が求める人材がなかなか想定通りに育っていない状況があるようだ。

図表 1 会社の組織課題

Q:下記の項目それぞれについて、あてはまる程度をご回答ください。

(「よくあてはまる」「ややあてはまる」「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」の4肢から単一選択)

※選択率は「よくあてはまる」「ややあてはまる」の合算

図表 1 会社の組織課題

● 人事担当者が管理職に期待していること、管理職層が重要だと思う役割は「メンバーの育成」が最多(図表2)

・人事担当者に「管理職に最も期待していること」を尋ねたところ、選択率1位になったのは、「1.メンバーの育成」だった。次いで、「2.メンバーのキャリア形成・選択の支援」「3. 部署内の人間関係の円滑化」「4.業務改善」だった。

・一方、管理職層に「管理職として重要な役割」を尋ねたところ、人事と同様に 「1.メンバーの育成」が1 位だったが、続いては「3.部署内の人間関係の円滑化」と「5. 担当部署の目標達成/業務完遂」だった。人事で2番目に選択されていた「2.メンバーのキャリア形成・選択の支援」は5番目の選択となった。

→ 人事、管理職層ともに「1.メンバーの育成」の役割認識が一番高いのは従来からと同様の結果だが、ビジネス環境の変化に伴い働き方の価値観が多様化する中で、人事からはキャリア支援への期待が高まっていることが今年の特徴だ。育成だけではなく、部下の中長期のキャリア形成支援までがマネジャーの役割になってきたと言えそうだ。

図表2 管理職に期待していること・管理職の役割

人事担当者へ Q:管理職(ミドルマネジャー)にどのようなことを期待していますか。お勤めの会社で、管理職に最も期待しているテーマを以下から最大3つまで選択してください。

管理職層へ Q:管理職としてあなたが重要だと考えている役割は何ですか。以下から最大3つまで選択してください。

図表2 管理職に期待していること・管理職の役割

● 管理職層が「マネジメント業務に携わる比率」は50%が最多。プレイヤー業務を担っている実情が明らかに(図表3)

・「実際に管理職層がマネジメント業務に携われている比率がどれぐらいであるか」を尋ねたところ、 一番多かったのはマネジメント業務の比率が「50%」と回答した人で選択率は20.7%となった。

・次いで、「80%」と「20%」という対照的な回答が続く結果となった。一方、「90%」や「100%」 と言った大半の時間をマネジメント業務に割けている人は少数派であるという結果になった。

図表3 【管理職層】マネジメント業務の比率

Q:あなたの仕事をマネジメント業務とプレイヤー業務とに分けたとき、全体のなかでマネジメント業務が占める比率はどの程度ですか。

図表3 【管理職層】マネジメント業務の比率

● 管理職層がプレイヤー業務を担う理由は「メンバーに知識・スキルが不足しており仕事を一任できない」が最多(図表4)

・管理職層が「プレイヤー業務を担う理由」について尋ねたところ、一番選択率が高かったのは「1.メンバーに知識・スキルが不足しており仕事を一任できない」だった。

・次いで「2.自分の専門性を維持・向上させ続けるため」「3.メンバーに他部署を動かす調整力が足らず、一任できない」だった。

→ 一任できるメンバーが不足していることが、マネジメント業務に専念することを難しくしている状況が見えてきた。また、意外にも、マネジャー自身が専門性維持・向上のためにプレイング業務を持ち続けていることが分かった。このような状況を踏まえると、今後もマネジャーがプレイング業務を一定の割合で持ち続ける流れは変わりそうにない。

図表4 【管理職層】プレイヤー業務を行う理由

Q:プレイヤー業務を行う必要がある理由は次のうち、どれですか。あてはまるものをお選びください。(3つまで)

図表4 【管理職層】プレイヤー業務を行う理由

● 管理職層がマネジメント業務で難しいと思っていることは「メンバーの育成・能力開発をすること」が最多(図表5)

・管理職層に「日々のマネジメント業務で難しいと思っていること」について尋ねたところ、上位から順に「1.メンバーの育成・能力開発をすること」「2.既存業務に取り組みつつ、新しい挑戦を行うこと」「3.自部署の業績・目標を達成すること」が選ばれた。

→ プレイヤー業務をする理由としてメンバーへなかなか一任できない実態が見えたが、一任できるメンバーを育成していく過程でも難しさを感じているという結果となった。また、人事から管理職への期待の2位に来ていた「メンバーのキャリア形成・選択の支援」と関連しそうな「メンバーの希望するキャリアや働き方を実現すること」は、管理職が感じる難しさとしては選択率が低い結果となった。この項目を管理職の役割として取り組むかどうか、管理職の認識にバラつきがあるのかもしれない。

図表5 【管理職層】マネジメント業務で難しいと思っていること

Q:日々のマネジメント業務で難しいと思っていることはありますか。以下からあてはまるものをすべてお選びください。

図表5 【管理職層】マネジメント業務で難しいと思っていること

● 管理職層がメンバーの育成・能力開発に対して望むサポートは「研修などでのインプット」が最多(図表6)

・管理職が「難しいと思っていることに対してどのようなサポートをしてもらいたいと思っているか」尋ねたところ、管理職層が難しいと思っていることの1位に挙がっていた「1.メンバーの育成・能力開発」については「A.研修などでのインプット」が一番多く選択されている。

・一方、難しさ2位の「2.既存業務に取り組みつつ、新しい挑戦を行うこと」については「D.人員補給や配置転換」の選択率が高く、現状の組織で対応していくことに限界を感じている様子がうかがえた。

・同じメンバーへの対応の中でも「5.メンバーの仕事に向けたやる気を高めること」「6.メンバーの心身のコンディションのケアをすること」については、「B.上司や人事からの具体的なアドバイス」や「G.外部の専門家によるコーチング」を求める意見が多く、研修などの一律の対応よりも状況に合わせた個別のアドバイスを求めていると言えそうだ。

・また、人事の回答を見ると研修や人事・上司からのアドバイスは半数以上の企業が行っている結果となっている一方、外部のコーチングの実施率は23.3%に留まっている。ただし「2.これから検討しているサポート」ではコーチングが一番高くなっており、管理職層のニーズとも一致していそうだ。

図表6 【管理職層】管理職業務で難しさを感じていることに対して周囲に求めるサポート(上表)

Q:以下のマネジメント業務が難しいとのことですが、それらについて周囲にどのようなサポートをしてもらいたいですか。すでにサポートしてもらっているものも含めて、必要なサポートをそれぞれお答えください。(複数選択)

日々の管理職業務で難しさを感じていると回答した管理職層(n=下表参照)

図表6 【人事担当者】すでに実施しているサポートと、これから実施を検討しているサポート(下表)

Q:以下から、すでに実施しているサポートをお選びください。 また、これから実施を検討しているサポートをお選びください(複数選択)

図表6 【管理職層】管理職業務で難しさを感じていることに対して周囲に求めるサポート(上表)
図表6 【人事担当者】すでに実施しているサポートと、これから実施を検討しているサポート(下表)

● 人事担当者が思う課長・マネジャー候補育成・選抜の難しさは「課長・マネジャーになりたいという社員が減っている」が最多(図表7)

・人事担当者に「課長・マネジャー候補育成・選抜の難しさ」について尋ねたところ、「6.特に難しさは感じていない」という回答は全体の14.7%となり、大半の人事が難しさを感じているという結果だった。

・難しさを感じる内容については、「1.課長・マネジャーになりたいという社員が減っている」が 42.7%で1位、2位が「2.課長・マネジャー候補に向けた育成の進め方」、3 位が「3.課長・マネジャーになる前に必要な経験を積ませること」となった。

→ 育成の仕方そのもの以上に、管理職になりたくない社員が減っていることが挙げられたのは印象的な結果だった。人事課題の1位が「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」という結果が出ていたように、管理職の仕事が周囲からも大変に見えていることが一因になっているのかもしれない。

図表7 【人事担当者】課長・マネジャー候補の育成や選抜における難しさ

Q:貴社では課長・マネジャー候補の育成や選抜に難しさを感じていますか。難しいと感じていることについて下記から選択してください。(いくつでも)

図表7 【人事担当者】課長・マネジャー候補の育成や選抜における難しさ

● 人事担当者・管理職層の約7割が「自分の所属組織は自律共創型組織であることが必要だと思う」と回答(図表8)

・実際に担当している組織について「自律共創型組織」への期待と取り組みの度合いを尋ねたところ、各設問に対して「そう思う」「ややそう思う」と回答した人は、「1. 会社から自律共創型組織に移行することを求められている」が全体の61.3%、「2.自分の所属組織は自律共創型組織であることが必要だと思う」が69.7%、「3.実際に自律共創型の組織運営に取り組んでいる」は49.3%だった。

→ 会社で求められている以上に「自律共創型組織」への必要性を感じ、半数近くがすでに何らかの取り組みを始められている様子がうかがえた。

図表8 自律共創型組織への移行度

Q:以下の自律共創型組織に関する事柄について、ご自身のお考えにあてはまるものをお選びください。

図表8 自律共創型組織への移行度

● 自律共創型組織運営に向けた難しさは「あいまいな状況のなかでも先を見て、組織のビジョンを打ち出す」が最多(図表9)

・自律共創型組織の運営に向けて取り組んでいることで、難しさを感じていることは何かについて尋ねたところ、選択率が高かったのは「1.あいまいな状況のなかでも先を見て、組織のビジョンを打ち出す」「2.失敗を恐れず、まずは挑戦してみることをメンバーに勧める」だった。

→ 前例も正解もない中で新しい方針を打ち出したり、そこへ向けてのメンバーのチャレンジを促したりすることは自律共創型組織を運営していくうえで重要なことである一方、実現に向けては一定のハードルがある様子が見られた。

図表9 【管理職層】自律共創型組織に向けた組織運営の実施状況

Q:自律共創型の組織運営に向けて、難しいと感じていることを3つまで選択してください。

図表9 【管理職層】自律共創型組織に向けた組織運営の実施状況

3. 調査概要

3. 調査概要

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