テレワーク環境下で管理職が不安に感じていることや個々が身に付けておくべきスキルが
明らかに
テレワーク実態調査 結果を発表(前編)

2020年04月28日

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:藤島 敬太郎)組織行動研究所は、従業員規模300名以上の企業に勤務する一般社員2040名、管理職618名に「テレワーク緊急実態調査」を実施し、テレワーク環境下において、管理職が不安に感じていること・逆に機会と感じていること」「テレワーク環境下でビジネスパーソンに必要なスキルと、それがすでに身に付けられているかどうか」など、調査結果から見える実態について公表しました。 詳細は4月27日に公表した当社Webサイトの調査レポートからもご参照いただけます。今回は前編・後編に分かれた発表となり、後編は5月に公表予定です。


1.調査実施の背景

2020年4月は、働き方改革関連法が本格的に施行され、時間外労働規制の中小企業への拡大、ならびに大企業における同一労働同一賃金が適用されるタイミングでした。しかし今となっては、誰も想定しなかった要因によって、「働き方改革」がかつてないスピードで進展しています。「テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)」の導入拡大は特筆されるべき変化の代表格であると同時に、さまざまな事情や懸念から「働き方」を変えられずにいる方々も大勢いらっしゃいます。本調査によって、テレワークの実態が少しでも明らかになることで、社会における適用範囲が広がることにも期待したいと考えています。
また、テレワークは、オフィス以外の場所を選択できる働き方ですが、実のところ、変化するのは働く場所だけではありません。テレワーク環境においては、オフィスという空間が促したり補ったりしていたもの、例えば、意思疎通や人とのつながりの実感、自律やセルフマネジメントの実感、安定した日常と所属の実感などがぽっかりと抜け落ちることとなります。本調査は、そのような「これまで当たり前のものとして確かにあったのに、失われてしまったもの」に光を当てることを通じて、「働き方改革」が個人や組織に促す心理的な改革への理解を深めることも目的としています。


2.結果のポイント

●テレワーク経験者は全体で3割弱、販売系は1割を下回る

●テレワーク環境下では、管理職層の半数が「部下がさぼっていないか心配である」と感じている

●テレワーク未経験の管理職層の約67%は、「必要な時に業務指示を出したり、指導をしたりしづらい」「チームビルディングができない」ことを不安に感じている。一方で、経験があるマネジメント層でも約60%が同じく不安に感じていることから、これらの不安はテレワークを実際に経験することによって解消されないことが明らかに

●テレワーク経験がある管理職層が、未経験の管理職層に比べてより不安に感じているのが「部下の心身の健康の悪化の兆候を見逃してしまうこと」で、約7割が感じている

●テレワーク経験がある管理職層の方が、テレワークを「部下が自己管理の習慣をつける」「部下が
無駄な業務を減らす」「部下が生産性を高める」「部下がワーク・ライフ・バランスを改善する」
「管理職がマネジメント能力を高める」機会と、前向きにとらえている

●管理職・一般社員の双方において、テレワークを実際に経験した人の半数以上が、生産性や仕事へのやる気が向上すると考えている

●テレワーク経験者の半数以上が課題に感じていることは、「テレワークを利用できる人と利用できない人の分断」「ツールへの習熟度による足並みのばらつき」

●「労働時間」は減る人のほうが多いが増える人もおり、2極化
 テレワーク環境下では、中断が減るなどして生産性が高まり、生活や健康に振り向ける意識や時間が増える一方で、さびしさや不安を感じることも増え、つながりが希薄化する傾向も。

●テレワーク環境下のコミュニケーションは、「雑談や思いつきレベルのアイディアの共有」「感謝の言葉をかけたり、かけられたりする機会」「同僚と、お互いの仕事の進捗を気にかけ、助けあう機会」が減ると感じる人が多い。

●テレワーク環境下でこそ必要なスキルは「文章で人に情報や要望を分かりやすく伝えること」が79.0%で最多
 続いて【セルフマネジメントのスキル(「仕事の計画を自分で立て、進捗を管理すること(65.1%)」「上司や関係者への報告を適切に行うこと(62.6%)」)】。また、ぞれぞれのスキルが実際に身についていると考えている人は約半数。


3.組織行動研究所のコメント

■温かく明快なコミュニケーションで、誰も孤立させないテレワークを

リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所
主任研究員 藤澤 理恵

テレワークでも、オフィスワークと変わらないか、より高い生産性で仕事ができる人が多くいることがわかりました。心身の健康や個人的な生活の充実は、働く個人から切り離せない側面であるという、人間的な実感を得た人もいるのではないでしょうか。
他方で、テレワークでは、仕事上での人とのつながりが希薄になりがちです。具体的には、不安や孤独を感じたり、ちょっとしたアイディアや相談など創造  
的な活動につながる行動や、お互いの仕事を気にかけて助け合ったりする行動が減少する懸念があります。
テレワークは、いずれ定着期を迎えます。その時までに、私たちの「働き方」も“アップデート”しなければなりません。一つには、意図しない孤立を防ぐ工夫が必要です。例えば、会議の最初に雑談の時間を設けるとか、一日の最初に業務の見通しを確認し合うなど、小さな工夫も有効でしょう。
これまでは、オフィスに集まる姿や人の表情によって「見えて」いた「つながり」は、意識して「つなぐ」ものに変わります。また、通勤やオフィスの人目が促していた、個人作業と他者支援、集中と休憩の切り替えといった「自律」を、自らデザインし、実行するスキルも必要になります。


4. 調査結果

※調査対象は、従業員規模300名以上の企業に勤務する一般社員と、部下をもつ課長相当の管理職
※「働き方改革」の実態調査という目的から、所属している企業で「働き方改革」の取り組みが行われている、または働き方に何らかの変化を感じている人が調査対象
※販売系/営業系/企画・事務系/開発系の4つの職務系統が均等になるように回答を収集



●テレワーク経験者の割合と傾向(図表3)

・回答者のうち、テレワーク経験者は3割弱。※
・「終日の業務」「数時間から半日程度の業務」「メール・資料確認などごく一部の業務」の3形態のテレワー
クのいずれも、一般社員よりも管理職で経験者率が高い。
・所属企業の従業員規模が大きいほど経験者率が高くなる。
・職務系統別にみると、販売系の職種では著しく経験率が低い。

※所属企業で「働き方改革」を推進していたり、働き方に何らかの変化を感じていたりする人に回答を依頼している本調査の特性上、この水準は社会一般の実態より高いことが推測される。




●テレワーク環境下において管理職層が感じる「不安」と「機会」

管理職層は、テレワーク下のマネジメントにどのような「不安」を抱き、同時に「機会」を見出しているのか、また、実際に経験してみると解消される不安や発見される機会について、何らかのテレワークの経験がある管理職と、経験のない管理職に分けて集計したところ、以下が明らかになりました。(図表4)

<不安>
・半数以上の管理職が、「部下がさぼっていないか心配である」と考えている。
・未経験者の方がより不安を感じているのは、「部下に必要なときに業務指示を出したり、指導をしたりしづらい」「チームビルディングができない」ことで、経験者でも6割以上が不安に感じている。
・経験者の方がより不安を感じているのは、「部下の心身の健康の悪化の兆候を見逃してしまうこと」で、
7割近くの管理職が不安に感じている。

<機会>
・テレワークを「部下が自己管理の習慣をつける」「部下が無駄な業務を減らす」「部下が生産性を高める」「部下がワーク・ライフ・バランスを改善する」「管理職がマネジメント能力を高める」いい機会だととらえる割合は、いずれも経験者において大きく高まる。

⇒ 6割前後の管理職がテレワーク環境下におけるマネジメントに不安を感じており、かつこれらの不安は、テレワークを実際に経験しても解消されないことが明らかになりました。ここからは、オフィスでのマネジメントの延長、あるいは管理職個人の工夫を超えた何らかのテレワーク環境下におけるマネジメントのノウハウ確立や組織的取り組み、ツールによるサポート等が必要と考えられます。
また、管理職自らがテレワークを経験すると、「部下が自己管理の習慣をつける」「部下が無駄な業務を減らす」「部下が生産性を高める」「部下がワーク・ライフ・バランスを改善する」、さらには「管理職がマネジメント能力を高めるいい機会だ」という実感値が高まることが分かりました。これまでの日常の環境では改善の余地やその必要に気づかなかったようなことも、テレワーク環境が刺激や機会となって、変化していく可能性が示唆されました。




●テレワークの効用と課題

テレワークの効用と課題については、以下が明らかとなりました。(図表5)

<効用>
・管理職、一般社員ともに、テレワーク経験者の半数以上が「生産性が向上し、業績にプラスの効果があると思う」「仕事へのやる気が高まると思う」と回答しており、未経験者と比較すると13.5ポイントの差が見られた。
・管理職、一般社員ともに、テレワーク経験者の約4〜5割が「会社への愛着が増すと思う」と回答した。

<課題>
・テレワーク経験者の約6割が課題に感じていることは、「テレワークを利用できる人と利用できない人の分断」「ツールへの習熟度の違いによる足並みのばらつき」。
・テレワーク経験のある管理職の約6割は、「管理職の負荷が高すぎて、業務遂行に支障がある」と感じている。

⇒効用については、管理職のみならず一般社員においても、テレワークを実際に経験した人の半数以上が、生産性や仕事へのやる気が向上すると考えていることが分かりました。
課題についての結果からは、テレワークを働き方の「改革」にまで進化させるには、テレワークという新しい労働インフラに未だアクセスできていない人に意識を向け、カバーしていく必要があることが示唆されました。




●テレワーク環境下の「心理」「生活」「生産性」の変化

結果のポイントは以下の通りです。(図表6)

<心理的変化>

■いずれの項目においても、変わらないと考える人が最も多く、6割前後。
■増える(高まる)人が、減る(低下する)人を上回るのは、次の3項目。
・「さびしさや疎外感を感じる気持ち」
高まる・やや高まる32.7% > 低下する・やや低下する12.5% :20.2ポイント差

・「仕事のプロセスや成果が適正に評価されないのではという不安」
高まる・やや高まる29.4% > 低下する・やや低下する10.7% :18.8ポイント差

・「会社に対する、好意的・肯定的な感情(感謝、貢献意欲、誇りなど)」
高まる・やや高まる23.7% > 低下する・やや低下する13.5% :10.1ポイント差

<生活の変化>

■「労働時間」は、減る人の方が多いが、増える人もおり、2極化している。
減る・やや減る33.2% > 増える・やや増える23.1% :10.0ポイント差

■増える(高まる)人が、減る(低下する)人を上回るのは、次の4項目。

・「家事や家族とのコミュニケーションに使う時間」
増える・やや増える51.8% > 減る・やや減る8.0% :43.8ポイント差

・「生活の質や家族との関係性の質」
高まる・やや高まる42.7% > 低下する・やや低下する8.3% :34.5ポイント差

・「自身の身体的な健康度」
高まる・やや高まる43.1% > 低下する・やや低下する13.0% :30.1ポイント差

・「自身の精神的な健康度」
高まる・やや高まる42.6% > 低下する・やや低下する12.8% :29.9ポイント差

<生産性の変化>

■減る人が、増える人を上回るのは、次の2項目。

・「人から話しかけられて仕事を中断する頻度」
減る・やや減る51.9% > 増える・やや増える20.1% :31.8ポイント差

・「仕事に関連するストレス」
減る・やや減る37.3% > 増える・やや増える26.1% :11.2ポイント差

■増える(高まる)人と減る人(低下する)の割合が拮抗するのは、次の3項目。

・「業務や作業の能率・効率」
高まる・やや高まる36.2% > 低下する・やや低下する28.2% :8.0ポイント差

・「アイディアや企画の質」
高まる・やや高まる27.0% > 低下する・やや低下する22.6% :4.5ポイント差

・「仕事への責任感や成果への意識」
高まる・やや高まる26.2% > 低下する・やや低下する25.4% :0.8ポイント差

⇒テレワーク環境下では、仕事の中断が減るなどの理由で生産性が高まり、生活や健康面に振り向ける意識や時間が増えることが分かりました。一方で、さびしさや不安を感じることも増え、つながりが希薄化する傾向も読み取れます。また、テレワーク環境下における生産性一辺倒のモードは、その効果がありすぎるからこその危険を伴います。個人の生活が豊かになる側面を歓迎しつつ、仕事のコミュニティにも居場所をつくり出していくバランスが求められるでしょう。
生産性と生活の質を高めながら、それらからこぼれ落ちやすい仕事の関係性における「感情」を拾い上げ、「つながり」の感覚を育てるコミュニケーションが、新たに求められる環境といえそうです。




●テレワーク環境下の「コミュニケーションのチャネルと内容」の変化

対面で会話する時間が減り、皆で共有していたオフィスという空間がなくなることで、直接的に変化すると考えられる、「コミュニケーションのチャネルと内容」の変化について、結果のポイントは以下の通りです。(図表7)

<チャネル>
・「ビデオや音声での会話」が増える・やや増えるという人が59.8%
・「メールなどでの情報共有」「チャットなどの同時性の高いテキストコミュニケーション」が増える・やや増えるという人が、それぞれ65.6%、59.1%
⇒対面で行われていた会話が、別のチャネルに移して継続されているが、すべてビデオや音声に移行するのではなく、文字を介したテキストコミュニケーションによっても補われていると考えられます。

<内容>
■減る人が、増える人を上回るのは、次の3項目。

・「感謝の言葉をかけたり、かけられたりする機会」
減る・やや減る46.7% > 増える・やや増える16.7% :30.0ポイント差

・「雑談や思いつきレベルのアイディアの共有」
減る・やや減る40.3% > 増える・やや増える19.5% :20.8ポイント差

・「同僚と、お互いの仕事の進捗を気にかけ、助けあう機会」
減る・やや減る38.7% > 増える・やや増える21.2% :17.6ポイント差

■減る人と増える人の割合が拮抗するのは、次の3項目。

・「ちょっとした問題や困りごとの相談」
減る・やや減る34.9% / 増える・やや増える26.0%)

・「配慮に欠けると感じる指示や言葉を受ける機会」
減る・やや減る26.0% / 増える・やや増える24.5%)

・「上司への報告・連絡・相談の機会」
減る・やや減る28.0% / 増える・やや増える28.9%)

⇒対面の会話でないことや、チャネルが変化することで、コミュニケーションの内容も変化することが伺われます。雑談やアイディアの共有、感謝の言葉の交換、気にかけ助け合う機会は、意識せずにいると減ってしまう懸念がある一方で、変わらない人や増える人もいるので、何らかの工夫によって、温かく活力のあるコミュニケーションを維持することは可能であり、むしろ増やすこともできると考えられます。一方、ちょっとした相談や、配慮に欠けるコミュニケーション、上司への報告・連絡・相談は、増える人と減る人に二極化することが分かりました。
「過剰なものを減らし、必要なものを増やす」といったように、テレワークはコミュニケーションを意識的にデザインするツールや機会ともなりそうです。




●テレワーク環境下でこそ、必要なスキルとは

ICT(情報通信技術)が進化し多様性が高まる現代において、テレワークを活用した生活は、「アフターコロナ」においても大きく後戻りすることはないと考えられる中で、何かを諦めたり、誰かを置き去りにし孤独にしたりしないために、必要度が高まると思うスキル、またそれらのスキルを身に付けられていると思うかどうかについて調査しました。結果のポイントは以下の通りです。(図表8)

<必要度が高まるスキル>(複数回答)
■最も必要度が高まると考えられているのは、【文章を通じたコミュニケーションのスキル(「文章で人に情報や要望を分かりやすく伝えること(79.0%)」)】、続いて【セルフマネジメントのスキル(「仕事の計画を自分で立て、進捗を管理すること(65.1%)」「上司や関係者への報告を適切に行うこと(62.6%)」)】という結果に。
■【自他をケアするスキル(「文章で、人への思いやりや気遣いを伝えること(60.3%)」「気分転換や休憩を適切にとること(51.0%)」)も、半数以上が挙げている。

<必要度が高まるスキルを身に付けられていると思うか>
■いずれのスキルも、充足していると考える人は、必要と考える人の半数程度だった。
■最もギャップが大きかったのは「集中力を保ち、自己を律すること」。
(必要だと思う66.3%、自分ができている28.7%:37.6ポイント差)

⇒「分かりやすい文章で情報や要望を伝える」といったロジカルなスキルと、「自他の状況に気遣いや思いやりを向ける」というケアのスキルのいずれも重要であることが、テレワーク環境下では意識されています。
また、オフィスにおける対面での人とのかかわりが促してくれていた計画や進捗管理、気分転換や休憩といったセルフマネジメントを、文字通り「自律」していくことが意識されているといえます。




5.調査概要



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