マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査

2020年08月25日

企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を⽀援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ (本社:東京都品川区 代表取締役社長:藤島 敬太郎 以下、当社)は、企業の人事担当者150名、管理職150名に「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査」を実施し、「会社の組織課題について、人事担当者と管理職層の認識の違い」「管理職層が日々の業務で困っていることや求めているサポート」など、調査結果から見える実態について公表しました。
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1.調査結果のポイントと調査背景

調査担当者のご紹介

リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューション統括部 事業開発部 マネジャー 
石橋 慶(いしばし・けい)


2005年入社。ソリューションプランナーとして、幅広い業種・規模の企業に対し、人材採用・人材開発・組織開発を行う。2012年よりミドルマネジメント領域の調査研究およびトレーニング・モバイルラーニングの商品企画・開発に従事。

■調査結果より一部抜粋 ※調査の詳細は、「2. 調査結果と考察」を参照ください。

●会社の組織課題にあてはまることとして、「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」は、管理職層では1位だったものの、人事担当者では3位という結果に【図表1】

●会社の3〜5年先を考えた際、人や組織に関する課題のなかで方針や計画に既に盛り込まれている項目として、人事担当者の回答は、1位「新人・若手社員の育成・戦力化」(48.0%)、2位「人材の定着率向上(離職率の軽減)」(39.3%)、3位「次期経営幹部育成」(34.7%)となり、「管理職の負担軽減」を挙げている人事担当者は21.3%に留まった【図表2】

●人事担当者、管理職層ともに重要だと考えている「管理職の役割」1位は「メンバーの育成」で約5割。【図表3】一方で、管理職が日々の管理職業務で困っている(いくつでも選択可)」の1位も「メンバーの育成)【図表4】

●管理職層がマネジメント業務で困っていることにおける必要なサポート(既にサポートしてもらっていることも含める)については、「人員補給や配置転換」のほか「管理職同士の情報交換の場の設定」や「外部の専門家によるコーチング」が上位に選ばれた【図表6】

<調査背景>

ビジネス環境が激変するなか、管理職層(マネジャー・課長・部長)の業務の難度はますます高まっています。同時に管理職層の業務負荷も重くなっており、組織マネジメント機能を管理職層のみが担うことは難しくなってきています。

管理職の業務負荷増大の要因は複合的ですが、大きく3つの背景が挙げられます。
1つ目は、内外環境の変化によるものです。外部環境として、現在のビジネス環境はVUCAと言われるように、曖昧かつ変化が激しいことが大きな特徴です。したがって、管理職が意思決定する際の難度も高くなっています。次に、内部環境で大きな特徴として挙げられるのが部下の価値観の多様化です。部下の雇用形態や適性だけでなく、働き方や仕事に対する価値観、志向などを把握して、個々人の業務アサインやキャリア支援を行うことが求められています。
2つ目は、管理職本人の経験値についてです。以前の管理職が経験していた、管理職になる前にリーダー的な役割の経験を積むことが少なくなっています。マネジメント経験をほとんど積まないままに昇格することが増えているのです。その結果、マネジメントの基礎スキルが身につかない、管理職になる志向が育たないといった弊害が生まれ、管理職昇格後の適応がうまく進まない状況が生まれています。
3つ目は、管理職にかけられる期待についてです。ビジネス環境の変化に伴い、新任管理職も着任直後から失敗できない状況に立たされています。その上、メンバーの信頼を得ながら、プレイヤーと管理職の仕事の両立をしていかなくてはなりません。マネジメントの準備期間がほぼない状況で、即戦力となることが求められているのです。

さらに直近では、新型コロナウイルス感染症予防・拡大防止対策から急遽テレワークを導入した企業も多く存在しました。当社のテレワーク実態調査結果*から、【テレワークの「ワークの質」「ライフの質」を改善する要因の一つである、感謝や助け合いといった協働志向のケア的なコミュニケーションを支えているのは「管理職のきめ細かいマネジメント」という実態も明らかになっています。

つまり、現在の管理職層は、マネジメントの基礎スキルを身につける準備期間がほぼない状況の中で、時代の変化に臨機応変に対応しながら、従業員の多様性を活かし、部署の目標を達成する、といったように、非常に多くの課題解決を期待されている状況なのです。

そこで今回は、マネジメント業務に対する人事担当者と管理職層それぞれの認識の違いに迫るべく定量調査を行い、調査結果をもとに、今後の管理職育成の指針や、管理職層だけに頼らない組織運営について考察しました。

*リクルートマネジメントソリューションズ:一般社員2040名、管理職618名に聞く テレワーク緊急実態調査【後編】(2020年5月18日)


2.調査結果と考察

●管理職の負荷はますます高まっている

人事担当者と管理職層に、会社の組織課題の代表例を挙げ、それぞれが「会社の組織課題」「会社の3〜5年先を考えた際に、人や組織に関する取り組み課題のなかで重要度が高いもの」「計画や方針に盛り込まれている人・組織の課題」としてどの程度あてはまるか回答を得たところ、「よくあてはまる」「ややあてはまる」と回答した割合が多かった項目について、以下が明らかとなった。

〇会社の組織課題

<管理職層>
1位:「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」(68.7%)
2位:「中堅社員が小粒化している」(68.0%)
3位:「次世代の経営を担う人材が育っていない」(67.3%)
<人事担当者>
1位:「次世代の経営を担う人材が育っていない」(78.7%)
2位:「中堅社員が小粒化している」(72.7%)
3位:「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」(69.3%)

⇒「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」に関しては、管理職層は1位に挙げている(68.7%)が、人事担当者では3位(69.3%)に留まった。



〇【人事担当者】計画や方針に盛り込まれている人・組織の課題

◉会社の3〜5年先を考えた際、人や組織に関する課題のなかで、方針や計画に既に盛り込まれている項目(選択はいくつでも可)

1位:「新人・若手社員の育成・戦力化」(48.0%)
2位:「人材の定着率向上(離職率の軽減)」(39.3%)
3位:「次期経営幹部育成」(34.7%)

◉その中でも最も重要度が高い項目(ひとつだけ選択)

1位:「新人・若手社員の育成・戦力化」(16.7%)
「人材の定着率向上(離職率の軽減)」(16.7%)

⇒方針や計画にすでに盛り込まれている項目の中で「管理職の負担軽減」を挙げている人事担当者は21.3%に留まり、重要度が高いと認識されているとはいえない。



ここまでの調査結果から、多数の企業では新人・若手の育成や人材の定着が急務であり、会社としての方針にも盛り込まれていることが分かりました。

一方で、管理職層の負荷過重については、管理職自身は会社の組織課題として重要視していますが、人事担当者としては新人・若手の育成や人材の定着を重要視しており、両者に認識に差があることと、管理職の負荷を下げる施策を重点テーマに位置づけて実際に実行している企業はほとんどないことが明らかになりました。
また、管理職が負担と感じている理由としては、当社の「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」*にあるとおり、難度の高い業務やイレギュラー業務を含む仕事を任せられる人材の不足から、マネジャーのプレイヤー業務が多いことが推察されます。

人事担当者や企業は、管理職層が負担軽減のための打ち手を求めていることを認識すべきです。実際にどんな打ち手が必要かについて、以下の実態調査の「管理職の役割」「管理職が困っていることと必要なサポート」の項目で詳しく解説しています。

*リクルートマネジメントソリューションズ:ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査(2020年6月2日)

●人事担当者と管理職層が考える「管理職層の役割」1位は「メンバー育成」管理職が困っていることも「メンバー育成」という結果に

〇人事担当者が管理職層に対して期待していること(3つまで選択可)

1位:「メンバーの育成」(50.0%)
2位:「担当部署の目標達成/業務完遂」(33.3%)
3位:「部署内の人間関係の円滑化」(26.7%)

⇒1位の「メンバーの育成」(50.0%)と2位の「担当部署の目標達成/業務完遂」(33.3%)に16.7ポイントも差が見られた。

〇管理職層が重要だと考えている「管理職の役割」(3つまで選択可)

1位:「メンバーの育成」(54.7%)
2位:「業務改善」(30.7%)
「会社・事業の戦略テーマ(重点テーマ)の推進」(30.7%)

⇒人事担当者だけでなく、管理職層も「メンバーの育成」が重要な役割であると認識している。



〇管理職層が困っていること/必要なサポート

・管理職層に「日々の管理職業務で困っていること(いくつでも選択可)」をたずねたところ、「メンバーの育成」(56.0%)、「業務改善」(52.0%)、「目標達成のための業務推進」(46.0%)が選ばれた。

・「マネジメント業務で困っていることにおける必要なサポート」については、いつの時代も要望が高い「人員補給や配置転換」のほか、「管理職同士の情報交換の場の設定」や「外部の専門家による
コーチング」が選ばれた。





管理職層が必要とするサポートで「管理職同士の情報交換の場の設定」や「外部の専門家によるコーチング」といった選択が多かったのは注目すべき点です。
実は思っている以上に、管理職にはマネジメントを巡る“真面目な雑談” が重要なのではないでしょうか。まずは社内交流、できれば人事が社外交流の場をプロデュースすることを通じて、マネジメントには数多くの選択肢があることを管理職層が認識することが第一歩といえます。


3.調査担当者 石橋 コメント〜これからの組織に求められる「シェアード・マネジメント」〜

ここまで、管理職への期待とどのような期待に応えることに困難を感じているかを見てきましたが、やるべきことを挙げれば切りがないというのが実情でしょう。どういう成果をあげるべきか、管理職層がフォーカスする対象を絞ることが重要だといえます。

当社ではマネジメントを、「組織資源を効果的・効率的に活用すること、特に人を生かすことを通じて、所属する組織が目指す目的の短期的・中長期的実現に貢献すること」と定義しています。要はマネジメントとは、組織の持続的成長を実現することだといえます。
そして、持続的成長を実現する上で求められる成果は4つあると考えています(表5)。ここには調査でも管理職への期待として多く選ばれていた「メンバーの育成」や「業務改善」なども含まれます。これらの成果は、組織において「どれか」ではなく「全て」達成すべきものです。



ただ、これらの成果は管理職1人で達成しなければいけないものではありません。マネジメントが機能し、上記の成果が出る状況を管理職が生み出せればよいのです。具体的には、メンバーにどう職場運営に参画してもらうか? メンバーの仕事内容や環境をどうデザインするか?といったことに知恵を絞ることです。
「管理職→メンバー」というタテ方向の関係ではなく、組織のメンバーがリーダーのように振る舞い、他のメンバーに影響を与え合うヨコ方向のリーダーシップを「シェアード・リーダーシップ」と呼びます。今後の職場においては「シェアード・マネジメント」とでも呼ぶべきマネジメント観が求められるのではないでしょうか。

例えば、調査結果から部下育成は、管理職層の役割として最も期待されていることですが、育成計画の立案やメンバーのコーチングをリーダー層が担うことも可能でしょう。また、メンバーの業務進捗管理についても、進捗をオープンにし、メンバー同士で指摘・アドバイスをするように変え、管理職層はその環境・風土づくりに専念するという方法も考えられます。また、これらの取り組みは急速に進化しつつあるAIやRPAの活用、HRTechの普及によっても後押しされるでしょう。

しかしながら、こういったシェアード・マネジメントを推進していく上では、実際にはいくつかの壁があります。1つ目は、管理職層に「マネジメントのかたち」の選択肢が少ないことです。管理職層が「自分でやる」という1つの考え方に縛られてしまい、「チームでやる・委ねる」という考え方に転換できない状況があります。会社や人事から示される理想の管理職像や評価制度、1on1などの制度が発想の足かせになっていることもあるでしょう。

2つ目の壁は、メンバーの考える「マネジメントのかたち」がすぐには変えられないことです。「チームで組織を運営する」「メンバーに委ねる」といったことを追求するために、いきなり組織形態を自主運営組織のように変更することは現実的には困難です。そのため、シェアード・マネジメントは運用で実現していくことになります。

その際に、管理職としてはメンバーをどのように巻き込むか、業務アサインをどう工夫するかを考える必要がありますが、この権限委譲が一筋縄ではいきません。もともと管理職層がやっていた仕事をメンバーに委ねようと思っても、メンバーとしては「それは管理職の仕事では?」「なぜ自分がしないといけないのですか?」「管理職の仕事を放棄しているのですか?」と抵抗感を抱くこともしばしば起こります。組織内で一旦そういったモードができあがってしまうと、管理職層の試みは頓挫してしまうでしょう。

権限委譲を進める前に、管理職自身がメンバーとの信頼関係を築く努力をすることは当然重要ですが、企業としても誰か1人がリーダーをすればいいというパラダイムではなく、「メンバー全員が組織運営の当事者になる」ことをメッセージしたり、評価項目に組み込んだりするなど、企業全体の風土・バリュー変革を進めることが求められているといえます。

【調査発表】マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査

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