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「ジョブ型人事制度の運用実態調査」の分析結果を発表

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ジョブ型導入企業の約2割が成果実感なし――成否を分けるのは「制度」より「運用」

企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、株式会社日経BP(本社:東京都港区 代表取締役社長 CEO:井口 哲也)が発行する「日経ビジネス」と共同で、職務・役割型の等級制度を一部でも導入している従業員規模300名以上の企業に務める人事を対象に、「ジョブ型人事制度の運用実態調査」を実施しました。本調査では、日本企業におけるジョブ型人事制度の導入・運用の実態と、成果実感の差を生む要因を明らかにすることを目的としています。

【エグゼクティブサマリ】

  • ジョブ型の導入目的、トップは「成果による処遇のメリハリ」で、約半数以上の企業が選択(図表1)
  • ジョブ型で成果実感を得られていない企業は約2割。「採用力強化」「キャリア自律の促進」目的では、成果実感の肯定・否定の差が他目的より小さい(図表2、3)
  • 等級軸が1つの企業より2つ以上の企業の方が、成果実感が高い。「キャリア自律の促進」では肯定・否定に最大20ポイント超の差(図表4、5)
  • ジョブ型施策の実施率トップは「職務評価による職務等級格付け」。一方「退職勧奨」の実施は1割未満にとどまる(図表6)
  • 施策数7つ以上の企業では、成果実感の肯定群が約7割。施策数が少ない企業との差は最大55ポイント超(図表7)
  • ジョブ型運用の最大の壁は「人事部の人員不足」(34.3%)と「管理職の知識・能力不足」(29.4%)。制度より"人"が課題(図表8)
  • 「職務記述書」の廃止意向は実施企業の約3割。一方、スキル評価・360度評価への導入意向が高まり、関心は「職務の定義」から「人材の見える化」へ(図表9)

調査の結果、ジョブ型人事制度を導入している企業の間でも、成果実感には開きがあることが明らかになりました。成果をあげている企業には、職務記述書の積極的な活用、職務・役割と処遇の連動、定期的なフィードバックという共通した運用上の特徴が見られます。一方で、多くの企業が「人事部の人員不足」や「管理職のスキル不足」を運用上の障壁として挙げており、制度そのものよりも、それを動かす人・組織の能力が成否を左右していることが示唆されます。
本調査は、ジョブ型制度の成否が「何を導入するか」よりも「どう運用するか」の重要性を示しており、制度運用を担う人事部門および管理職の能力強化が必要であることわかりました。本調査が、ジョブ型人事制度の運用改善や人材マネジメント全体の見直しを考える一助となれば幸いです。

1.調査担当のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
シニアコンサルタント
森本 伊織(もりもと いおり)

ジョブ型人事制度の導入企業が増える中、「導入したものの期待通りの成果が出ていない」という声を多く耳にします。本調査では、その背景にある要因を定量的に明らかにしたいと考えました。
調査を通じて印象的だったのは、同じ目的でジョブ型人事制度を導入している企業の間でも、成果実感に大きな差があるという事実です。制度の有無よりも、職務記述書をどれだけ活用しているか、職務・役割と処遇がどれだけ連動しているか、管理職がどれだけの頻度でフィードバックしているか——こうした「運用の質」が成果を分けていました。
また、運用の障壁として最も多く挙げられたのが「人事部の人員不足」や「管理職の知識・能力不足」であったことは、他社事例を参考に仕組みを導入しても運用が難しい要因の一つとして示唆に富む結果です。ジョブ型制度は本来、管理職が人材マネジメントを主体的に担うことを前提としています。しかし現実には、管理職への権限移譲も能力開発も追いついていない企業が多く、「制度はあるが動かせない」状態に陥っているケースが少なくないと考えられます。
さらに、今後の施策意向を見ると、スキル評価や360度評価など「人材の見える化」への関心が高まっています。職務を定義するフェーズから、その職務を担いうる人材を把握・配置するフェーズへ——日本企業のジョブ型運用は、次のステージへと移行しつつあるのではないでしょうか。ジョブ型制度の成果に向けては、運用できる組織づくりと、スキルや適性などの人材データの蓄積と活用が、今後の重要な課題になると考えます。

2.調査の結果

ジョブ型の導入目的、トップは「成果による処遇のメリハリ」で、約半数以上の企業が選択

  • ジョブ型人事制度の導入目的として最も多く挙げられたのは、「成果による処遇のメリハリ」(53.9%)で、次いで「年功的な賃金からの脱却」(45.4%)、「採用力強化」(42.1%)と続いた。
  • 「グローバルでの人事制度の統一」(18.9%)を除き、各目的はいずれも約4割前後の企業が選択しており、多様な目的でジョブ型が活用されていることがわかる。
  • 選択する目的の数は1〜3個が多く、単一または少数の目的に絞って導入している企業が過半数を占める。

⇒処遇のメリハリや年功賃金からの脱却といった「報酬改革」を主目的とする企業が多い一方、採用力強化やキャリア自律など「人材戦略」と結びつけた目的も広く認識されている。ジョブ型制度が単なる賃金制度の見直しにとどまらず、人材マネジメント全体を変革する仕組みとして期待されていることがうかがえる。

図表1:ジョブ型人事制度の導入目的

ジョブ型で成果実感を得られていない企業は約2割。「採用力強化」「キャリア自律の促進」目的では、成果実感の肯定・否定の差が他目的より小さい

  • 各目的において約半数の企業が成果実感の肯定群に該当する一方、約2割の企業は否定群となっており、同じ目的を持つ企業間でも成果に差が生じている。
  • とくに肯定群と否定群の差を見ると、「6.キャリア自律の促進」(25.8ポイント)、「1.採用力強化」(26.5ポイント)は、他の目的と比べて成果実感が相対的に低い。
  • 満足感(導入してよかったか)については、成果実感より全体的に肯定群の割合が高く、「2.若手登用の促進」(肯定群66.1%)が最も高い。

⇒「採用力強化」や「キャリア自律の促進」は、制度だけでは効果が出にくく、制度外の取り組みとの組み合わせが必要である可能性がある。成果実感と満足感の乖離は、「やってよかった」という認識はあるものの、具体的な成果にはまだ結びついていない状況を示唆している。

図表2:目的別の成果実感(肯定群・否定群)

図表3:目的別の満足感(肯定群・否定群)

等級軸が1つの企業より2つ以上の企業の方が、成果実感が高い。「キャリア自律の促進」では肯定・否定に最大20ポイント超の差

  • 等級軸(職能・職務・役割)を2つ・3つ組み合わせている企業の方が、1軸のみの企業より成果実感が高い傾向が確認された。
  • 特に「6.キャリア自律の促進」においては、等級軸1つの企業の成果肯定群が6.8%にとどまるのに対し、2軸・3軸では4割弱と大きく差が開く。

⇒職務または役割の単一軸ではなく、階層や職種に応じて複数の等級軸を組み合わせることで、より効果的に成果を生み出している可能性がある(参照:【図表5】ハイブリッド型等級制度のイメージ)。ジョブ型は「一律に導入するもの」ではなく、自社の人材構造に合わせた設計が重要であることを示唆している。

図表4:目的別・等級軸数別での成果実感の肯定群・否定群の差

図表5:ハイブリッド型等級制度のイメージ

ジョブ型施策の実施率トップは「職務評価による職務等級格付け」。一方「退職勧奨」の実施は1割未満にとどまる

  • 実施率が最も高い施策は「B.職務評価による職務等級格付け」(45.1%)、次いで「L.キャリア研修」(41.2%)、「G.管理職の評価力向上研修」(39.9%)となっている。
  • 一方、「O.退職勧奨の実施」(8.8%)、「M.異動後のサポート施策」(17.8%)、「H.外部労働市場に合わせた賃金水準設計」(20.3%)、「N. 等級の下方改定(降格や職務変更によるグレードダウン)の実施」(21.2%)は実施率が相対的に低い。

⇒等級格付けや評価・育成に関する施策は広く実施されている一方、異動後サポートや等級の下方改定など、昇降格・異動による人材配置の実効性を高める施策の実施率は低い。制度の「骨格」は整いつつあるが、「肉付け」となる運用施策にはまだ取り組みの余地がある企業が多いといえる。

図表6:実施施策

施策数と成果実感は比例し、施策数が少ない企業との差は最大55ポイント超

  • 施策数が多いほど成果実感は大きくなる。
  • 施策数が7〜15の企業における肯定群と否定群の差は、「1.採用力強化」(55.4ポイント)、「3.成果による処遇のメリハリ」(53.2ポイント)、「6.キャリア自律の促進」(46.7ポイント)といずれの目的でも成果実感が高い。
  • 施策数0〜1の企業では「6.キャリア自律の促進」の差分がマイナスとなっており、施策が少ない場合は成果実感が得られにくいことが示されている。

⇒ジョブ型制度は単一の施策で効果を生むものではなく、複数の施策が組み合わさることで相乗効果が生まれると考えられる。

図表7:目的別・施策数別での成果実感の肯定群・否定群の差

ジョブ型運用の最大の壁は「人事部の人員不足」(34.3%)と「管理職の知識・能力不足」(29.4%)。制度より"人"が課題

  • 制度運用上の障壁として最も多く挙げられたのは「b.人事部の人員不足」(34.3%)、次いで「i.人材マネジメントに関する管理職の知識・能力不足」(29.4%)、「c.人事部の企画力・専門性が低い」(27.8%)であった。
  • 「h.人材マネジメントに関する管理職の権限が弱い」(25.6%)も上位に挙がっており、権限移譲が進んでいない実態がうかがえる。

⇒ジョブ型制度は本来、管理職が人材マネジメントを主体的に担うことを前提としている。しかし多くの企業では、必要なスキル開発や権限移譲が追いついておらず、「制度はあるが動かせない」状態に陥っている可能性がある。今後の重点課題は人事機能の強化と管理職育成、すなわち「運用できる組織づくり」にある。

図表8:制度運用上の障壁

「職務記述書」の廃止意向は実施企業の約3割。一方、スキル評価・360度評価への導入意向が高まり、関心は「職務の定義」から「人材の見える化」へ

  • 今後の導入意向が高い施策は「F.多面評価(360度サーベイ)」(27.7%)、「G.管理職の評価力向上研修」(27.0%)、「E.各組織・職種など専門領域別のスキル評価」(25.4%)など、人材の能力・適性を可視化する施策が上位に挙がった。
  • 一方、廃止意向が相対的に高い施策は、「E.各組織・職種など専門領域別のスキル評価」(34.1%)、「A.職務記述書の作成・公開」(32.2%)、「H.外部労働市場に合わせた賃金水準設計」(30.2%)など、定義・基準・水準に関するものが目立つ。
  • 継続意向が高い施策として、「K.社内公募・ジョブポスティング制度」(86.1%)や「L.キャリア研修」(86.6%)などが挙げられ、定着しつつある施策といえる。

⇒職務を定義・基準化する施策は更新負荷の高さから形骸化しやすく、廃止意向が高まりやすいと考えられる。一方で、スキル評価や多面評価など「人材データの蓄積・活用」への関心が高まっており、多くの企業が「仕事を定義する段階」から「その仕事を担いうる人材を把握・配置する段階」へと関心を移していることが示唆される。

図表9:各施策の継続・廃止意向および未実施企業の導入意向

3.調査概要

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