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企業と学生のオープンなやり取りが、入社への納得感や入社後の定着につながる「学生のキャリア選択と入社後の状態に関する意識調査」の結果を発表

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企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑淳 以下、当社)は、社会人1~2年目の会社勤務正社員291名に対して「学生のキャリア選択と入社後の状態に関する意識調査」を実施し、「キャリア選択への納得感」や「企業がキャリア選択を支援することの意味」など、調査結果から見える実態について公表しました。

【エグゼクティブサマリ】

  • 就職活動開始時の志望度は低くても、内定獲得時の入社意欲が高まった人は27.5%(図表1)
  • 入社意欲向上には、接点を多くもつことや採用プロセスの手続きを適切に行うことに加え、学生との対話を引き出すようなやり取りが重要(図表2)
  • 内定受諾時点のキャリア選択への納得感については肯定的な回答が5~6割(図表3)
    • 内定受諾時点のキャリア選択への納得感は入社後の「勤続意向」などに影響を与える(図表4)
    • 内定受諾時点で働くことへの理解度が高いことや、入社企業への信頼や期待が高いことが、キャリア選択への納得感を引き出す(図表5)
    • インターンシップ経験はキャリア選択への納得感を高める。特に就業体験を伴う方が影響が大きい(図表6)
    • 就職活動において、自己分析や仕事・業界分析などの準備をしっかりと行うとキャリア選択への納得感も高まる(図表7)
    • 企業の採用プロセスにおけるオープンなやり取りが納得感の醸成に貢献(図表8)
  • 長期にわたる就職活動をポジティブに受け止める人は54.0%(図表9)
  • 学生側がしっかりと比較検討できるような、よりオープンなやり取り・相互理解が必要(図表10)

*詳細は調査レポートを参照ください。

1.調査担当のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
測定技術研究所 マネジャー 渡辺 かおり

本調査では、就職活動での学生のキャリア選択の状態として本人の納得感に着目し、入社後に与える影響に踏み込んで実態を明らかにすることを試みました。調査を通して、入社への納得感が、入社後の勤続意向や心身の健康、組織コミットメント(目的・愛着)など、組織への定着に影響を及ぼしていることが示唆されました。また、納得感を高めるには、企業と学生とのオープンなやり取りや、入社企業への信頼感や期待、就業体験を伴うインターンシップなどが影響していることが見えてきました。

新卒での就職活動では、企業のなかで働いた経験がほとんどない学生が、数年先を見据えた選択をするという非常に難しい意思決定を求められます。このような状況で、学生が納得感をもって主体的に意思決定をするためには、本人の努力とともに、企業や社会との積極的な相互作用が欠かせないことが示されたといえるでしょう。

学生のキャリア選択を企業が支援することはハードルが高いと思われるかもしれませんが、実は今の採用活動の延長線でできることは多くありそうです。企業と学生双方にとってよりよい新卒採用を実現するために何ができるのか、それぞれの立場で考えていく必要があると改めて感じました。

2.調査の結果

就職活動開始時の志望度は低くても、内定獲得時の入社意欲が高まった人は27.5%(図表1)

  • 新卒で入社した企業について、就職活動を始めた当初の志望度と、内定獲得時の入社意欲をそれぞれ振り返ってもらい、5段階評価で回答を求めた。志望度と入社意欲を高(5・4点)、中(3点)、低(2・1点)に分け、その組み合わせを集計した。
  • 就職活動を始めた当初の志望度と内定獲得時の入社意欲について尋ねたところ、内定獲得時に入社意欲が高い人のうち、就職活動開始時から志望度が高かった人(A群)の割合が最も高く、全体の47.1%であった。
  • 一方、当初の志望度が低かったものの入社意欲が向上した人(B群)は27.5%で、志望度、入社意欲共に中低群のままだった人(C群)は22.7%であった。

    ⇒就職活動開始時の志望度が低くても、就職活動全体を通じて入社意欲が向上していく様子がうかがえる。


図表1 就職活動開始時の志望度と内定獲得時の入社意欲の変化
Q:【就職活動の当初の時点】で、この会社の志望度はどの程度でしたか。
Q:【内定獲得の時点】で、“この会社に就職したい” とどの程度思っていましたか。

〈単一回答/n=291/%〉

入社意欲向上には、接点を多くもつことや採用プロセスの手続きを適切に行うことに加え、学生との対話を引き出すようなやり取りが重要(図表2)

  • 志望度と入社意欲の変化のA~Cの3群ごとに、「新卒入社の会社」の採用プロセスに関する17項目に対して影響が見られるか確認したところ、A群とB群とで、各項目の平均値に統計的に有意な差は見られなかった。
  • 当初志望度は同じ中・低であるにもかかわらず、最終的な入社意欲が変化したB群とC群を見ると、「10.面接などの接点で、温かく迎えてくれた」「12.面接などの接点で、話したいことを話せた」「6.採用活動における各種のやり取り(合否連絡など)が手際よく迅速だった」「11.面接などの接点で、自分のことを掘り下げて、よく理解しようとしてくれた」という項目で大きな差が見られた。

    ⇒B群とC群の結果から、入社意欲向上には学生と接点を多くもつことや採用プロセスの手続きを適切に行うことに加え、学生との対話を引き出すようなやり取りが重要であることがうかがえる。企業への印象や入社意欲は固定的なものではなく、さまざまな人との接点や経験を通じて変化するといえる。

図表2 志望度と入社意欲の変化と、採用プロセスの関係
Q:「新卒入社の会社」の採用活動プロセスについて、あてはまる程度をお答えください。

〈単一回答/n=283〉

内定受諾時点のキャリア選択への納得感については肯定的な回答が5~6割(図表3)

  • 内定受諾時点のキャリア選択への納得感の状態について確認するために、主体的に決定できているか、選択について納得しているか、明確な選択基準があったかという観点で評価してもらったところ、「とてもあてはまる」「あてはまる」を選んでいるのは21~35%、「ややあてはまる」まで合わせると、5~6割が肯定的な回答だった。
  • 約7割の人は主体的に意思決定をしており、入社することに納得はしているが、自分がやりたいことや将来の道筋が明確かどうかは五分五分であった。

    ⇒主体的な意思決定、入社への納得感には肯定的な回答が多いものの、「4.この会社でやっていく覚悟ができている」のように問われると肯定的な回答の割合がやや下がる傾向にあることや納得感のカテゴリの項目3・4で「ややあてはまらない」~「まったくあてはまらない」と否定的に回答している人は3~4割程度と一定数いることから、入社という意思決定への迷いが少ながらずあるという点がうかがえる。

図表3 学生のキャリア選択の状態
Q:【内定受諾の時点】の状況についてお聞きします。あなたのキャリア選択について、あてはまる程度をお答えください。

〈単一回答/n=291/%〉

内定受諾時点のキャリア選択への納得感は入社後の「勤続意向」などに影響を与える(図表4)

  • 入社後の状態に関する6つの指標を、キャリア選択への納得感の得点群別に集計し、高・中・低群間で得点差が大きい順に並べた。
  • 高・低群で得点差が大きいのは「1.勤続意向」「2.心身共に健康的に働いている」「3.組織コミットメント(目的・愛着)」であった。
  • キャリア選択への納得感の高・中・低群で納得感に差があるかを調べ、その後多重比較を行ったところ、すべてのグループ間において統計的に有意に差があることが確認でき、内定受諾時点のキャリア選択意識が入社後の状態に影響することが示された。

    ⇒キャリア選択への納得感は、本人の適応感のみならず組織への定着を促進するようだ。

図表4 キャリア選択への納得感が、入社後の状態に及ぼす影響(社会人1〜2 年目)
Q:現在のあなたについて、それぞれどの程度あてはまりますか。

〈単一回答/n=279〉

内定受諾時点で働くことへの理解度が高いことや、入社企業への信頼や期待が高いことが、キャリア選択への納得感を引き出す(図表5)

  • 新卒入社した企業についての理解度、入社企業での働くイメージの程度、入社企業への信頼感、期待の程度の4観点について尺度化し、それらの高・中・低群別にキャリア選択への納得感を集計した結果は、どの観点も高群が突出して納得感が高く、高群と低群、高群と中群の差は、すべて統計的に有意な差が確認された。
  • すべての尺度で高・低群による差が見られ、特に「3.入社企業への信頼感」「4.入社企業への期待」の項目において高・低群による差は大きい。

    ⇒内定受諾時点で働くことへの理解度が高いことや、入社企業への信頼や期待が高いことが、キャリア選択への納得感を引き出しているといえる。就職活動を通じて入社企業への理解や働くイメージを醸成することももちろん重要だが、それ以上に企業とのやり取りのなかで信頼感や期待を膨らませていくことが、キャリア選択への納得感を醸成すると考えられる。

図表5 働くことへの理解度と入社企業への評価が、キャリア選択への納得感に及ぼす影響
Q:【内定受諾の時点】の状況についてお聞きします。「新卒入社の会社」について、あてはまる程度をお答えください。

〈単一回答/n=291〉

インターンシップ経験はキャリア選択への納得感を高める。特に就業体験を伴う方が影響が大きい(図表6)

  • インターンシップへの参加有無とキャリア選択への納得感の関係を見るために、「1.参加(就業体験あり)」「2.参加(就業体験なし)」「3.不参加」の3群に分けて、キャリア選択への納得感を高・中・低群の割合を示した結果、インターンシップに参加する方が、またそのなかでも就業体験を伴う方が、キャリア選択への納得感が高かった。
  • 就業体験の有無が入社企業で働くイメージのしやすさとも関係し、最終的なキャリア選択への納得感の高・中・低にも関係している。

    ⇒インターンシップによって視野が広がったり、キャリア選択の基準がつくられたりすることや、就業体験を通じてリアルな働くイメージを得られることが、キャリア選択への納得感を高めることにつながっている可能性がある。

図表6 インターンシップへの参加と、納得感・働くイメージの醸成との関係
Q:大学または大学院時代の、インターンシップ・1day仕事体験への参加状況についてお答えください。

〈複数回答/n=282〉

就職活動において、自己分析や仕事・業界分析などの準備をしっかりと行うとキャリア選択への納得感も高まる(図表7)

  • 「自己探索」は自分のことを客観的に理解することで、就職活動の自己分析にあたり、「環境探索」は働くことや職業や業界についての理解を深めるための情報収集や対話・体験をするインターンシップや仕事分析・業界研究にあたるが、自己探索、環境探索共に高群の方が、キャリア選択への納得感が高かった。

    ⇒就職活動の準備のなかで、自己分析や仕事・業界分析などの準備をしっかりと行うことで、さまざまな選択肢に対する自分なりの基準をもてるようになり、結果的にキャリアにおける意思決定への納得感が高まるようだ。

図表7 就職活動中のキャリア探索行動がキャリア選択への納得感に及ぼす影響
Q:就職活動時期に以下の取り組みをどの程度しましたか。あてはまる程度をお答えください。

〈 単一回答/n=291〉

企業の採用プロセスにおけるオープンなやり取りが納得感の醸成に貢献(図表8)

  • 新卒入社した企業の採用プロセスの特徴に関する17項目それぞれについて、あてはまる程度の高い高群とそうでない低群別にキャリア選択への納得感の差を比較した。その結果、「豊富な接点」「適切な手続きや基準」「オープンなやり取り」「社員からのフィードバック」のすべてのカテゴリ・17項目について、高群が低群よりも高かった。
  • 高・低群の差が大きい項目に着目すると、「12.面接などの接点で、話したいことを話せた」「11.面接などの接点で、自分のことを掘り下げて、よく理解しようとしてくれた」「14.あなたのキャリアを支援するスタンスが感じられた」「10.面接などの接点で、温かく迎えてくれた」が相対的に高く、オープンなやり取りが納得感の醸成に大きく貢献していた。
  • 項目16・17の「社員からのフィードバック」は、入社意欲の向上(図表2)では関係が見られなかったものの、納得感の醸成には影響していた。

    ⇒面接や面談といった個別接点が想定される場面で、学生との対話を引き出し、相手を理解しようとする姿勢が、個人のよりよいキャリア選択を促進する上で重要だと考えられる。企業との相互作用のなかで、社員から提供された情報も参考にしながら自分なりの意思決定理由を固めていく学生の様子が見てとれる。

図表8 採用プロセスがキャリア選択への納得感に及ぼす影響
Q:「新卒入社の会社」の採用活動プロセスについて、あてはまる程度をお答えください。   

〈 単一回答/n=291〉

長期にわたる就職活動をポジティブに受け止める人は54.0%(図表9)

  • 長期にわたる就職活動だが、今振り返ると、本人にとってどのような経験だったと認識されているか確認したところ、「1.非常に楽しく、総じてよい思い出となる経験だった」「2.成長の機会になるなど、自分にとって意味のある経験だった」と、比較的ポジティブに受け止めている人が54.0%だった。
  • 「3.自分にとっての意味はあまり感じられないが、社会人になるためには必要な経験だった」とフラットに受け止めている人が19.6%、ネガティブに受け止めている人が25.4%だった。

    ⇒比較的ポジティブに受け止めている人が多い一方、少なからずネガティブな経験だったと捉えている人がいることには留意したい。新卒の採用活動の仕組みは若年層の失業率を下げるなどよい側面がある一方、学生本人の負担は大きい。企業・学生双方に必要な仕組みだからこそ、よりよい就職活動・採用活動のためにそれぞれの立場で何ができるのか、考えていく必要があるだろう。

図表9 就職活動はどのような経験だったか
Q:今振り返って、新卒での就職活動は自分にとってどんな経験でしたか。   

〈単一回答/n=291/%〉

学生側がしっかりと比較検討できるような、よりオープンなやり取り・相互理解が必要(図表10)

  • 新卒での就職活動・採用活動が、学生と企業にとってよりよいものになるために、どんなことが必要だと思うかを尋ねたコメントを抜粋すると、「自社の魅力だけでなく悪い情報も含めてありのままを伝える(RJP:Realistic Job Preview)」や、企業側が学生との「対等なスタンス」をもつことを求める声が挙がった。
  • 学生側には「働くイメージの明確化」「深く具体的な企業理解」「選択肢を広げる」ことの重要性を指摘する意見が挙がった。

    ⇒学生側はしっかりと比較検討し選ぶことができるよう、企業側には情報や採用プロセスの透明性や公平性の担保、対等なスタンスを求めていることが見えてくる。一方、学生本人も積極的な情報収集や分析といった努力が必要だと認識されている。その共通点は、よりオープンなやり取り・相互理解である。
    人は自分が知っている選択肢のなかからしか選ぶことができないため、就職活動期のみならず、さまざまなことに関心をもち視野を広げることがよりよいキャリア選択につながるだろう。

図表10 よりよい就職活動・採用活動のために必要なこと
Q:新卒での就職活動・採用活動が、学生と企業にとってよりよいものになるために、どんなことが必要だと思いますか。

〈自由記述結果を抜粋して分類〉

3.調査概要

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