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【調査発表】事業責任者の人・組織課題解決の支援ニーズに関する調査
(HRBPの存在意義編)

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自組織担当の人事スタッフがいると、経営との間で人・組織課題についての会話機会が増加
人・組織課題への認知が高まり、支援ニーズが具体化する効果が考えられる

企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区 代表取締役社長:山崎 淳 以下、当社)は、2022年3月に事業統括責任者または直接部門・部署(営業、販売、製造、開発など)の責任者361名に対し、「人・組織課題解決の支援ニーズに関する調査」を実施し、調査結果を公表しました。なお「事業責任者の人・組織課題解決の支援ニーズに関する調査(事業局面別支援ニーズ編)」は、5月27日に公開済みです。

*詳細は調査レポートを参照ください。

1. 【再掲】調査の背景

昨今の社会環境の変化を受けて、企業における人と組織の課題とその解決についての重要性が増しています。それらは人事部門だけが担うのではなく、ラインの管理職、従業員、社外専門家などが協同で担うものであることは1980年代当時から議論されてきています。種々の議論を整理すると、企業内の人事機能は下の図のように描くことができます。4つの機能のいずれもが、人事部門や社外専門家などの人事専門家が、事業現場の戦略や人をよく理解し、連携することの重要性を示唆しています。そして、昨今、人事部門や社外専門家の側が現場に寄り添うことの重要性はより強まっています。

このような人事機能の分担や連携の在り方は、人事部門や社外専門家の側からはよく議論されてきました。では、事業現場の責任者の側はどのような課題認識や連携・支援ニーズを持っているのでしょうか。そこで今回、事業責任者の課題認識や連携・支援ニーズに関心を向けた調査を実施しました。

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2010)

2. 調査の結果

● 自組織担当の人事スタッフがいる場合が8割(図表1)

人事の組織体制について、自組織担当の人事スタッフがいるとの回答が80.9%。その内訳として、部門内スタッフのみである場合が73.3%、人事部門スタッフのみである場合が14.7%、両方に自組織担当の人事スタッフがいる場合が12.0%であった。

図表1 自組織担当人事スタッフの有無〈単一回答/n=361/%〉

図表1 自組織担当人事スタッフの有無〈単一回答/n=361/%〉

● 自組織担当の人事スタッフがいると人事・経営との人・組織課題についての会話機会が増加(図表2)

図表2は、自組織担当の人事スタッフの有無別に、日頃、人・組織課題についての会話がどの程度あるかをたずねたものである。自組織担当の人事スタッフがいる場合では、いない場合に比べて、人事スタッフ・人事部門、および経営者や上位者との人・組織課題についての会話が多い。組織内と人事部門の両方に自組織担当の人事スタッフがいる場合は、よりその傾向が強い。

組織担当の人事スタッフの有無や、組織体制における人事スタッフの置かれ方が、人・組織課題に関する事業責任者の情報ネットワークに違いを生み出している可能性がある。

図表2 自組織担当人事スタッフの有無別の、人事・経営との会話〈単一回答/n=361/%〉

図表2 自組織担当人事スタッフの有無別の、人事・経営との会話〈単一回答/n=361/%〉

● 自組織担当の人事スタッフの有無で、人事の存在感・イメージが異なる(図表3)

図表3は、「人事スタッフ・人事部門」と言われたときに想起するイメージとしてあてはまる言葉を選んでもらったものである。自組織担当人事スタッフがいる場合は、回答者が選択するワードの数が増え、幅広いイメージワードが選択されている。「人・組織に強い関心・思いがある」「規則に従う」といった共通イメージに加え、「誠実な」「頼りになる」「戦略的な」「思いやりのある」「人の可能性を信じる」「経営視点の」といったイメージが加わる。

図表3 自組織担当人事スタッフの有無別の、人事のイメージワード〈複数回答/n=361/%〉

図表3 自組織担当人事スタッフの有無別の、人事のイメージワード〈複数回答/n=361/%〉

● 事業部内人事スタッフは課題認識を促進、人事部門の自組織担当スタッフも加わることで人事支援ニーズの幅が広がる(図表4)

本調査で確認してきた複数の要素が、人・組織課題の認識や人事支援ニーズにどの程度影響しているのか、その影響度合いを比較するため、重回帰分析で分析した。調査内で選択された「人・組織の課題認識の数」、「人・組織課題に対する人事支援ニーズの数」、「マネジメント施策に対する人事支援ニーズの数」の3つの結果変数それぞれに影響を与えている要因を検討し、統計的に有意な水準となった要因と係数のみを記載した。係数が正の値で大きいほど、要因となる変数の値に応じて結果変数が大きくなることを示している。

事業特性が要変革局面である場合、3つすべての結果変数に有意な正の影響が生じていた。事業が要変革局面にあるときには、課題認識と人事支援ニーズが多岐にわたることが分かる。

事業が要変革局面にあることの影響の他にも、課題認識や支援ニーズに影響を与えている変数がある。部門内にのみ、または部門内と人事部門の両方に自組織担当人事スタッフがいると、人・組織の課題認識の数が増えていた。図表2で、人事の組織体制によって事業責任者の人・組織課題に関する会話機会が異なっていたことを考え合わせると、部門内人事担当がいることで日常に紛れて見えにくい人・組織課題が発見できることが分析結果に表れていると考えられる。

また、部門内と人事部門の両方に自組織担当の人事スタッフがいる場合には、人事支援ニーズの数が多くなることも確認された。この効果は、部門内のみに自組織担当人事スタッフがいる場合では見られなかった。部門内と人事部門の両方に自組織担当の人事スタッフがおり、連携していることで、人事からどのような支援が受けられるかという情報が具体的に得られることの効果と考えられる。

図表4 人・組織課題の数、人事支援ニーズの数に影響を及ぼす要因〈n=361/重回帰分析〉

図表4 人・組織課題の数、人事支援ニーズの数に影響を及ぼす要因〈n=361/重回帰分析〉

3. 調査担当研究員

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 主任研究員
藤澤 理恵

藤澤理恵の顔写真

人事制度設計のコンサルティングや、研修開発、組織調査などに従事したのち現職。東京都立大学大学院 社会科学研究科 経営学専攻にて、2021年博士号授与。同大学博士研究員。“ビジネス”と”ソーシャル”のあいだの「越境」、仕事を自らリ・デザインする「ジョブ・クラフティング」、「HRM(人的資源管理)の柔軟性」などをテーマに研究を行っている。経営行動科学学会2020年度JAAS AWARD・奨励研究賞。人材育成学会2020年度学会賞・奨励賞。

4. 調査担当研究員のコメント

今回の調査は、事業責任者の人・組織課題の認識と人事支援ニーズを理解することを目的に、分析と考察を行いました。調査結果から、事業責任者には直面する事業局面などの影響を受け、それぞれ異なる人・組織課題の認識があり、支援ニーズがあることが分かりました。

社内人事スタッフや社外の人事専門家の専門性は人と組織の側面にあり、事業の戦略的側面に明るいとは限らないかもしれません。しかし本調査の結果からは、事業の戦略的局面を理解し、その文脈にあうように人・組織課題の解決を図ることの重要性が示唆されており、そのための工夫や努力が求められることが示されました。

5. 組織行動研究所 所長古野庸一のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 所長
古野 庸一

古野庸一の顔写真

現場を支える人事に求められる4つの要件

現場を支える人事に求められる1つ目の要件は「バランス」である。企業活動において、短期と長期、部分と全体、論理と感情、個と組織など相反する側面の両側をにらみ、最適を求めていく。ビジネスを進めている現場では、短期、部分最適、論理思考、組織の論理に偏る傾向にある。人事が介入することによって、個を生かしながら、会社全体としての持続性を担保していく。

2つ目の要件は「本質思考」である。バランスをとるためには、「本質」が何かということを常に意識しておく必要がある。つまり、バランスをとるのが目的ではなく、理想状態を意識しながらのバランスをとっていく。人事が目指すのは、昔も今も変わらず、「目的に向けて、人と組織が機能する」ことだと考えられる。現場で働く人が生かされている。そして、その組織では、一人では成し得ないことができる。そのような状態を作ることが人事の仕事である。人を採用し、育成し、組織能力を高めていくこと、あるいは作った制度の運用を考えると、10年単位の思考が必要になる。経営幹部が考える時間レンジよりも長い時間を想定できることが、人事ならではの時間観である。組織の目的や戦略は時代によって変化するが、それを超える時間観で考える「本質思考」が求められている。

3つ目の要件は「対話」である。現場を支えながら、現場にとっては短期的にマイナスになる話をしなければならないこともある。その場合、丁寧な対話が必要になる。事業責任者、マネジャー、そしてメンバー一人ひとりの話を聞く。話の背景を理解し、相手の立場で考える。自分が考えていることと違うこともあるだろう。それは、それぞれの立場やそれまでのコンテキストに起因している。互いに理解しながら、それぞれが納得できるようにもっていく「対話」が求められる。

4つ目の要件は「専門性」である。人の感情や行動、集団行動、集団心理、人事施策などの知識、あるいはカウンセリング、コーチング、ファシリテーションなどの技術があることで、現場から信頼される人事になる。現場を預かる管理職にも必要な知識や技術であるが、前述したようにマネジメントの難度が高まっていることを考慮すると、人事にも求められる要件になる。

4つの要件はそれぞれ難度が高く、一人ですべて満たすことは難しいだろう。人事チームで満たしていく方法もある。もちろん、現場の事業責任者やマネジャーにも責任はある。さらに外部のコンサルタントやファシリテーターなどの専門家を交えることが現実的な場合もある。それらの活動の目指すところは、表層的な施策を行うことではなく、本質的に「人と組織を生かす」ことである。

6. 調査概要

6. 調査概要

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