プレスリリース

プレスリリース

テレワーク環境下における人事評価に関する
意識調査

公開日
更新日

企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区 代表取締役社長:藤島 敬太郎 以下、当社)は、2020年12月、テレワークを月の半分以上行っている20代、30代の一般社員493名に対し、「テレワーク環境下における人事評価に関する意識調査」を実施し、「テレワーク環境下で評価の納得感はどのように変わったのか」など、調査結果から見える実態について公表しました。

*詳細は3月1日に公表した当社Webサイトの調査レポートからも参照できます。

1.調査背景と結果のポイント

新型コロナウイルス感染症への対応でテレワークが拡大しています。当社「テレワーク緊急実態調査」*1では、テレワーク経験者の約3割が「仕事のプロセスや成果が適正に評価されないのでは」という不安が以前より高まったと答えています。この働き方の変化は、人事評価の受け取り方にどのように影響しているのでしょうか。また、新しい働き方に適した人事評価制度とはどのようなものでしょうか。20代、30代の一般社員を対象に、テレワーク下での人事評価の納得感や望ましい人事評価制度のあり方などについて、意識調査を行いました。
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000846/

■調査結果より一部抜粋 ※調査の詳細は、「3. 調査結果と考察」を参照ください 。
●約8割が、人事評価を重視。理由は「報酬や昇進・昇格が決まるものだから」が最多(図表1・2)

●約6割が、人事評価制度に満足。満足、不満足ともに評価基準の明確さが影響している
(図表3・4)

●7割弱が、直近の人事評価結果に納得。上司との十分な対話が影響している(図表5・6)

●7割弱が、テレワークになっても人事評価の納得感に変化なし(図表7)

●テレワークで正しく評価されるために、部下が主体的、自律的に働きかける傾向が明らかに
(図表9)

●望ましい人事評価のあり方は「時間」より「結果」、「短期業績」より「長期貢献」(図表10)

2.組織行動研究所のコメント 人事評価の納得感を高めるための3つのポイント

調査担当者のご紹介

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所研究員
佐藤  裕子

佐藤 裕子の顔写真

リクルートにて、法人向けのアセスメント系研修の企画・開発、Webラーニングコンテンツの企画・開発などに携わる。その後、公開型セミナー事業の企画・開発などを経て、2014年より現職。研修での学びを職場で活用すること(転移)に関する研究や、機関誌の企画・編集などに携わる。

1. 改めて評価基準を明確に
今回の調査はテレワークを月の半分以上行っている一般社員を対象に実施している。約6割が評価制度に満足と答えたが、その理由としては「何をがんばったら評価されるかが明確だから」(50.3%)が最も多く、対応するように、不満足と答えた人の理由では「何をがんばったら評価されるのかが曖昧だから」(65.1%)が圧倒的に多かった。明確な評価基準の設定は、評価制度において基礎的なことであるが、テレワーク下では、これが整備されていないことで、不満が高まることが考えられる。

2. 目標設定時に納得がいくコミュニケーションを
評価の納得度が高いと答えた人の約8割(81.7%)が「あらかじめ設定した目標の達成度合いによって評価された」のに対し、そうでない人は5割を下回っている。つまり制度として目標管理制度を採用していると納得感が高まる傾向にある。また、「目標設定において、納得いくまで上司と話し合えた」と答えた割合も、納得度が高い群と低い群で大きく異なっている。目標設定時に上司と納得いくまで話をし、本人が納得している目標でないと、意欲が湧かずに仕事が進まないことが考えられる。

3. 部下からの働きかけも重要
上司は、部下全員の行動をいつも見ているわけではない。テレワークであればなおさらである。調査では、正しく評価されるために意識していることとして「こまめな報連相、密なコミュニケーショションをする」「意識して成果をアウトプットする」「目標、目的を明確にする」など部下側からの働きかけの具体例も聞かれた。テレワークをきっかけに、これまで以上に部下の主体性や自律性を発揮することができれば、評価の納得感を高めることができ、評価者の負担も軽くすることもできる。

テレワークが広がることにより、改めて、適切な評価のあり方を考える必要性が高まっている。テレワークになったからといって、評価の重要性は変わらず、やり方によっては、評価の納得感は高めることさえできそうである。人事、評価者、被評価者が共に当事者として関わり、リモート時代の評価のあり方を確立していくのに、本調査が一助となれば幸いである。

3.調査結果と考察

●人事評価の重要度(図表1)

・約8割(77.3%)が人事評価を重視していると回答した。
・2016年の当社調査「人事評価制度に対する意識調査、以下2016年調査*1」(78.5%、リモートで働いている人に限定せず)と大きく変わらない。
※データは「とても重視している」~「どちらかといえば重視している」と回答した人の割合
*1 https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000572/

図表1 人事評価の重要度

図表1 人事評価の重要度

●人事評価を重視する/重視しない理由(図表2)

・人事評価を重視する理由は、「報酬や昇進・昇格が決まるものだから」(72.2%)が圧倒的に多く、2016年調査(59.1%)と比べても増えている。「仕事の手応えや自身の成長の度合いを感じることができるから」は、2016年調査(30.9%)より減り、約2割にとどまった(21.3%)。
・人事評価を重視しない理由は、「人事評価はあてにならないから」(42.0%)が最も多く、次いで「評価結果が報酬にあまり影響がないから」(35.7%)が多かった。

図表2 人事評価を重視する/重視しない理由

図表2 人事評価を重視する/重視しない理由

●自社の人事評価制度についての満足度(図表3)

・自社の人事評価制度に満足している(「とても満足している」~「どちらかといえば満足している」)のは約6割(60.5%)である。「とても満足している」「満足している」のみでは約2割(24.0%)である。

図表3 自社の人事評価制度についての満足度

図表3 自社の人事評価制度についての満足度

●自社の人事評価制度についての満足度/不満足の理由(図表4)

・自社の人事評価制度について満足している理由としては、「何をがんばったら評価されるかが明確だから」(50.3%)が最も多い。不満足の理由は「何をがんばったら評価されるのかが曖昧だから」(65.1%)が圧倒的に多かった。これらはいずれも2016年(それぞれ41.0%、54.4%)より選択率が高い。
⇒評価基準の透明性を求める傾向は強まっていると思われる。

図表4 自社の人事評価制度についての満足度/不満足の理由

図表4 自社の人事評価制度についての満足度/不満足の理由

●直近の人事評価についての満足度(図表5)

・直近の評価結果に納得感がある(「とてもあてはまる」~「ややあてはまる」)のは7割弱(65.3%)だった。「とてもあてはまる」「あてはまる」のみでは3割弱(27.2%)である。

⇒評価の納得感と職務適応感(仕事にやりがいを感じる、会社が期待する成果を出せている、職場の人とうまくやれているなど12項目を尺度化)の関係を確認すると、その相関は高く(0.63)、公平感のある処遇の分配のためだけでなく社員の活用と育成のためにも、これを高めていくことは重要であることが改めて分かる。

図表5 直近の人事評価についての満足度

図表5 直近の人事評価についての満足度

●人事評価結果の納得感と目標管理プロセス(納得感高低群の比較)(図表6)

・図表6の分析では、評価の納得感を高群(「とてもあてはまる」~「ややあてはまる」)と低群(「ややあてはまらない」~「まったくあてはまらない」)の2群に分けたものを用いた。

・目標管理制度の有無との関係では、納得感の高群では約8割(81.7%)が「あらかじめ設定した目標の達成度合いによって評価された」のに対し、低群では5割を下回っている(49.1%)。
「評価結果が開示されている」についても、高群と低群の出現率には有意な差が見られた。

・「あらかじめ設定した目標の達成度合いによって評価された」と答えた人のうち納得感高群と低群に分けて見ると、「目標設定への関与」「目標の質」「目標遂行のサポート」のいずれの項目も高群が低群に対して有意に高かった。

・差が最も大きいのは「目標設定において、納得いくまで上司と話し合えた」であり、差が30.9ポイントあった。

⇒目標設定に自分の意向が尊重されるかどうか、目標がどのようなものだったかよりも、十分に上司と話し合えたと思えることが、納得感に強い影響を与えることが示唆される。

・上司が「目標の進捗状況を気にかけて、アドバイスや支援をしてくれた」「目標に対して良い仕事をしたときに認めたり、褒めたりしてくれた」「チーム内で目標を共有し合い、上司・同僚と協力しながら仕事を進められた」という、期中の日常的な目標遂行のサポートの有無も、納得感高群と低群の差が大きい。

⇒テレワークの頻度が高い場合でも、目標管理の仕組みが十分なコミュニケーションを伴って運用されれば、評価への納得感や仕事への意欲を引き出すことは可能だと考えられる。

図表6 人事評価結果の納得感と目標管理プロセス(納得感高低群の比較)

図表6 人事評価結果の納得感と目標管理プロセス(納得感高低群の比較)

●テレワーク環境下での人事評価の納得感の変化(図表7)

・テレワークで働く場合とそうでない場合で、評価の納得感に違いがあるかどうかを尋ねたところ、約7割(66.3%)から、納得感に違いはないとの回答を得た。一方、低くなった人が約2割(20.1%)、逆に高くなった人が約1割(13.6%)とばらつきがあった。

・新型コロナウイルス感染症の流行以前から高い頻度でテレワークをしていた群とそうでない群では、納得感が低くなったのは約2割と変わらない。しかし、納得感が高くなったのは、以前から高頻度でテレワークをしていた群では26.2%と、まったくテレワークをしていなかった群の7.3%に比べ大幅に高かった。

⇒テレワークに慣れるにつれ、やり方次第でむしろ評価の納得感を高めていける可能性が感じられる。

・職務自律性の低い群では、高い群に比べて、テレワークになったことで評価の納得感が下がった人が多く(25.1%)、上がった人が少なかった(7.5%)。

⇒1人で成果をアウトプットしにくく、以前より評価されにくい傾向があることが考えられる。

図表7 テレワーク環境下での人事評価の納得感の変化

図表7 テレワーク環境下での人事評価の納得感の変化

●テレワーク環境下での人事評価の納得感が変化した理由(図表8)

・納得感の変化の理由には、「成果を正しく評価してもらえるようになった」という声がある一方、「プロセスや取り組み姿勢を見てもらえない」という声もあるなどさまざまだった。

⇒テレワークへの慣れ、職務のタイプによって捉え方は違うと思われるが、目標設定に関する納得のいく対話、遂行場面での的確なコミュニケーションを重ねることで、乗り越えていけるものが多いと感じる。

図表8 テレワーク環境下での人事評価の納得感が変化した理由

図表8 テレワーク環境下での人事評価の納得感が変化した理由

●テレワークで正しく評価されるために意識していること(図表9)

・テレワークで正しく評価されるために意識して心がけていることについて得た自由記述で、主なものとして「こまめな報連相、密なコミュニケーションをする」「意識して成果をアウトプットする」「結果を残す」「目標、目的を明確にする」「プロセスや取り組み姿勢も伝えるようにする」「自分から動く」「同僚にも行動が見えるようにする」があった。

⇒こうした部下からの主体的、自律的な働きかけは、テレワークになる以前から、上司としては望んでいたことではないだろうか。テレワーク化をきっかけに、こうした意識が部下側にも高まっていけば、上司部下間のコミュニケーションはより充実し、仕事も評価も円滑に進むと思われる

図表9 テレワークで正しく評価されるために意識していること

図表9 テレワークで正しく評価されるために意識していること

●今後の望ましい人事評価のあり方(図表10)

・いずれの観点も、圧倒的にいずれかに偏ったものはなく、対照的な考え方が混在することが分かるが、傾向としては「時間的な貢献重視」より「結果重視」(65.3%)、「年齢や勤続年数に応じて平等」より「実力や成果に応じて個人差がある」(61.5%)、「短期業績重視」より「長期貢献重視」(64.7%)が多かった。これらは年代層別に有意な差はなかった。

図表10 今後の望ましい人事評価のあり方

図表10 今後の望ましい人事評価のあり方

●人事評価制度について、良い点・改善してほしい点(図表11)

・良い点では、「上司との納得できる対話がある」「基準が明確である」「信頼できる上司である」などが多かった。改善してほしい点では、「目標管理」「評価基準」「報酬体系」「評価方法」について、率直なコメントが集まった。

・目標管理の仕組みはあるが、「目標が上から下りてきて本人が口を出せないこと」、「評価結果の開示やフィードバックがないこと」は、改善してほしいこととして多く挙げられている。「形骸化した目標管理制度はストレスであり、無意味で、いっそやめた方がいい」という声もある

⇒目標管理のプロセスは、適切に行えば評価の納得感を高めるのに有効であることは前述のとおりで、ぜひ改善したいポイントである。

・評価基準については、「部署・職種による明らかな評価の差」、「直属上司以外による相対的な調整」、「年功序列としか思えない不可解な処遇」、が大きな3つの不満として見られた。

⇒評価基準が明確であることは、評価制度への満足、不満足を左右する最も大きな要因であり、対処すべきだろう。

・「評価を給与にもっと反映してほしい」という声も多かった。

⇒評価をどれだけ適切に行っても、給与や賞与に反映されないのであれば、モチベーションにはつながらないということであろうが、短期的な業績を追いかけすぎるのは、本人や経営の持続的成長にマイナスな面もある。どの程度の時間軸で評価と処遇の関係を設計するかは難しいところだ。

・評価方法については、「多面評価を取り入れてほしい」、「部下から上司を評価する制度がほしい」、など新しい評価のやり方を模索したいという声が見られた。「手間がかかりすぎる」という点も挙げられた。納得感と人的コストのバランスは重要な観点だ。

⇒これらの声は、必ずしも、テレワークになったから生じたものではないだろう。しかし、テレワークが広がることにより、改めて、適切な評価のあり方を考える必要性が高まっている。テレワークになったからといって、評価の重要性は変わらず、やり方によっては、評価の納得感は高めることさえできそうである。人事、評価者、被評価者が共に当事者として関わり、リモート時代の評価のあり方を確立していくのに、本調査が一助となれば幸いである。

図表11 人事評価制度について、良い点・改善してほしい点

図表11 人事評価制度について、良い点・改善してほしい点

4. 調査概要

4. 調査概要

関連する記事

報道関連・
マスメディアの皆様へ

取材・お問い合わせはこちらから

フォームでお問い合わせ
お問い合わせ
お電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)