調査・レポート 2030年の「働く」を考えるヒントとなる、さまざまな調査・レポートを掲載していきます。

2030年の「働く」を考える

私たちが行った2つの調査結果から見えてきたことを紹介

(4)中高年人材について、期待以上に活躍しているという認知は低い

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図8 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

 多くの企業が今以上に活用していきたいと考えている「中高年人材」だが、現状は、期待を上回る活躍をしているとはあまり考えられていない。図8によれば、中高年社員の働きぶり(年収カーブ変化後)は期待どおりが半数以上で、期待以下という回答も30%を超えている。中高年人材の活躍の場が減っている企業も多い(図9)。
 中高年人材は、「技術伝承のために必要な人材」「豊富な経験があり、様々な環境に適応できる」「幅広い人脈を持っている」「若手の社員の指導を期待」と一定の評価がなされている(図10)が、「人件費を圧迫している」「統一した処遇を行うのが難しい」「古いやり方にこだわる」などの問題点も抱えている(図11)。特に年収カーブ変化後、一気に高まるのが「古いやり方にこだわる」で、技術革新が加速する未来では、これはより大きな問題になると思われる。
 中高年人材にはさらなる活躍が期待される一方で、以上のような特有の問題点もある。この問題点を上手にクリアし、多くの中高年人材が活躍しやすい場を作れるかどうかが、今後の大きな人事課題の1つとなりそうだ。

出典:小社(2013)『人材マネジメント実態調査』

図9 出典:小社(2013)
『人材マネジメント実態調査』

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図10 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図11 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

※注:調査では、年収カーブの変化度合いを尋ねる設問を設けた。その設問への回答結果をもとに、役職定年などで年収カーブが変化する前を「年収カーブ変化前」、変化した後を「年収カーブ変化後」としている。

(5)今後は、多様な働き方を選べることが動機づけの重要な鍵となる

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図12 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

 人事施策面で、今後特に注目されるのが「多様な働き方の選択」である。80%以上の人事担当者が、2025年頃の日本では多様な働き方を選べるようになっていると考えている(図12)。その背景にあるのは、「育児や介護等による一時的な休職からの復帰しやすさ」「時間や場所の限定がある人の働きやすさ」の向上を重要と考えている点だ(図13)。「多様な働き方の選択」を用意することでこれらを向上させることは、女性や中高年の活用に直結する。つまり、「多様な働き方の選択」が充実している企業ほど、女性や中高年をより活用できるということだ。
 これに関連し、働く上での「動機づけ」要因として、「出世や昇進」「社内の人間関係の良さ」などが大幅に下がっていく一方で、「多様な働き方の選択」は急上昇すると予測されている(図14)。これからは、多様な働き方を選べる会社こそ、多くの人が働きたい企業になるのかもしれない。
 しかし、現状はまだまだ課題が多いようだ。図15から分かるのは、「多様な働き方の選択肢」が十分に用意されていない企業が60%を超えるということだ。その大きな理由は、「多様な働き方の選択肢」の導入に伴うマネジメントの複雑化などの課題への対処が追いついていないことなどにあると考えられる。そのハードルを越えて、「多様な働き方の選択肢」をいち早く充実させた企業が優秀な人材確保に有利になるだろう。

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図13 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図14 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

出典:小社(2013)『人材マネジメント実態調査』

図15 出典:小社(2013)
『人材マネジメント実態調査』

(6)キャリア自律施策は多いが、成果は伴っていない

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図16 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

 個人が長い期間働くこと、また多様な働き方を選択する上で欠かせないのが、「自らのキャリアに責任を持ち、自らキャリア形成を行う」意識、キャリア自律の意識である。ほとんどの人事担当者が、キャリア自律の意識は個人にとってこれから重要となり(図16)、また社員がキャリア自律の意識を高めることは、企業にもプラスになることが多いと考えている(図17)。
 実際、各企業ともキャリア自律に関するさまざまな施策を導入しているが、人事担当者はおおむね成果に満足していない(図18)。さらに、かなりの数の人事担当者が、この10年で若手社員(29~34歳)、中年社員(40~49歳)共に、キャリア自律はあまり進まなかったと認識している(図19)。
 この現実を踏まえれば、キャリア自律の意識向上は今後、企業人事の大きな課題の1つとなりそうだ。その際、単に個人の意識を変えるための働きかけをするだけでなく、企業がキャリア自律を推進する意義や目指す状態を再考する必要もあるかもしれない。

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図17 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図18 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

出典:小社(2013)『今後の人材マネジメントに関する調査』

図19 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

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