調査・レポート 2030年の「働く」を考えるヒントとなる、さまざまな調査・レポートを掲載していきます。

2030年の「働く」を考える

私たちが行った2つの調査結果から見えてきたこと

 国内での人口減少、高齢化、またグローバル化が進む現代では、日本企業の人事的な課題も一昔前とは様変わりしつつある。そのようななか、未来に向けて人材マネジメントをどのように変革していくか。今後、どのような課題が出てきて、それに対してどのような施策が必要になると考えているか。人事担当者の認識を知りたいと思い、2013年、私たちは2つの調査を実施した。『今後の人材マネジメントに関する調査』※1と『人材マネジメント実態調査』※2である。
 2030年の「働く」に対する企業の対応を考える端緒として、まずこの2つの調査結果と、そこから見えてきたことを紹介したい(なお、『今後の人材マネジメントに関する調査』では、2030年ではなく、多くの人事担当者が比較的答えやすい2025年を具体的な未来の時点とした)。

(1)ビジネスの成長・拡大は必ずしも前提となっていない

出典:小社(2013) 『今後の人材マネジメントに関する調査

図1 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

 初めに「日本国内の事業規模」について、人事担当者がどのように予測しているかを紹介する(図1)。この調査では、未来の売上見通しは「大きくなっている」(35.5%)と「小さくなっている」(34.7%)がほぼ同数、従業員数の見通しに至っては「少なくなっている」(39.5%)が「多くなっている」(27.4%)を上回っているが、どちらについても意見は大きく割れている。
 会社が拡大・成長を目指すことは当然のように思われるが、少なくとも国内のビジネスに関しては、今後は拡大・成長を目指さない(目指せない)会社も増えてくるといえそうだ。

(2)グローバル化によって「日本本社」の役割が変わりつつある

出典:小社(2013) 『今後の人材マネジメントに関する調査

図2 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

 次に、従業員数の見通しを職能別に見ると(図2)、「研究機能」「開発機能」に関しては今後も従業員が減らないかむしろ増えると考える人事担当者が多い。「管理機能」「販売機能」は意見が二分しており、各社の事業方針や、「日本本社」の位置づけによるところが大きそうだ。この結果を見る限り、今後、日本本社の役割が変わる会社が増えていくだろう。なお、「生産機能」は減るという予測が過半数を占めている。これは、現在も進行している工場の海外移転やロボット化などの傾向が、今後も変わらない、あるいはさらに加速することを示唆している。

 また、日本に本社機能を置く場合に欠かせない「人材のグローバル化」については、おおむね積極的な企業が多いようだ。グローバル人材の採用・育成を強化している企業は確実に増えており(図3)、今後は経営ボードの多国籍化も半数近くの企業で進むと考えられている(図4)。
 また、日本の「外国人の受け入れ」も、「重要である」「やや重要である」と考える人事担当者が8割を超えており(図5)、全体的にグローバル人材・外国人人材の重要性は増していく傾向にあると思われる。

出典:小社(2013) 『人材マネジメント実態調査』

図3 出典:小社(2013)
『人材マネジメント実態調査』

出典:小社(2013) 『今後の人材マネジメントに関する調査

図4 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

出典:小社(2013) 『今後の人材マネジメントに関する調査

図5 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

(3)優秀な人材の確保は現在よりも難しくなりそうだ

出典:小社(2013) 『今後の人材マネジメントに関する調査

図6 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

出典:小社(2013) 『今後の人材マネジメントに関する調査

図7 出典:小社(2013)
『今後の人材マネジメントに関する調査』

 続いて、「日本本社で事業を支える人材」をどう考えるか、いくつかの調査結果をもとに見ていきたい。
 図6が示すのは、これからは優秀な人材の確保が今以上に難しくなっていくと、実に80%近くの人事担当者が考えているということだ。ここでの「優秀な人材」の基準は各社まちまちであり、難しくなっていくと考える理由もはっきりしないが、いずれにせよ、確保が難しい以上は各社とも何らかの対策を講じなくてはいけないだろう。
 その有力な対処方法と考えられるのは、若手の確保を除くと、女性、中高年、高齢者、外国人などの人材活用である。図7を見る限り、多くの人事担当者は特に「女性の活用」や「65歳までの中高年人材の活用」を重視したいと考えている。また、「外国人の活用」が最も重要という回答も一定数見られる。一方で、「65歳以上の高齢者の活用」に関しては優先順位が低いようだ。

調査概要
  ※1『今後の人材マネジメントに関する調査』 ※2『人材マネジメント実態調査』
調査回答者 従業員300名以上の企業の人事関連ミドルマネジャー以上
調査期間 調査期間 2013年5~6月
有効回答数 有効回答数 171社
※ただし、ここでは2010年度との比較のため従業員1000名以上の企業132社の回答データのみを使用
124社

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