ボス充マネジャー#3 江原氏

ボス充マネジャー#3 江原氏 2018/6/11

部下に仕事を任せられるようになり、
笑顔が増えました

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物流会社C社 営業企画課 課長 江原潤 氏
「ボス充」マネジャーとは、具体的にはいったいどのような方を指すのか、疑問に思う方も多いはずです。この連載記事では、ボス充マネジャーのモデルをご紹介していきます。第3回は、仕事のほかに、NPO支援、高校バスケットボール部監督、ビジネススクール同窓会長を務めている江原潤氏をご紹介します。

家業である仕事

 当社は、国内に複数の拠点を構える物流会社で、私の祖父が創業し、私の叔父が現在社長を務めています。私は入社後、倉庫内作業者から仕事を始め、新規部門の立ち上げや拠点の支店長を経て、現在は新規顧客獲得の営業活動を行っています。

 仕事をしている中で大事にしていることは現場の方との定期的にコミュニケーションです。定期的に拠点へ行き、2時間ほど倉庫や事務所を回りながら現場の皆さんと話をしていると、お客様の様子や将来的な予測など、さまざまな気づきを得ることができます。現場にはたくさんの仕事のヒントがあると日々感じており、常に現場に足を運ぶことを大切にしています。

人に任せ、人を支えることを学んだ3つの活動

 現在、仕事以外に3つの活動を行なっています。1つ目は、高校バスケットボール部の監督です。自分が大学生のときにこのチームのコーチをしていたこともあり、3年前に顧問の先生から監督の打診をいただき、普通ではできない貴重な機会であると考え、引き受けることにしました。選手である高校生には、将来社会で認められる人間の基礎を、バスケットボールを通じて育んでもらいたいと思っています。試合は当然勝つために行うわけですが、決して試合の勝敗に一喜一憂するのではなく、まずは日々の練習の積み重ねを丁寧に行うこと、試合の結果はその練習の積み重ねた努力の結晶であること、そして「今できることに集中すること」を常に伝えています。監督の立場を通じて、私の言葉の重みやチームを一つの方向に向ける難しさなどを学んでおり、私自身も多くのことを学び成長しているという実感があります。

 2つ目は、ビジネススクールであるグロービス経営大学院の同窓会長です。私がグロービスに通い始めたのは33歳の時でした。当時私は仕事で会社に迷惑をかけたことがあり、仕事に自信がなく、とても不安でした。その大きな原因として自分が前に立って進んでいかなければという想いが強すぎたことがありましたが、リーダーシップを学ぶクラスで、マネジメントには「エンパワーメント(権限を移譲する)」が重要であることを知り、強い衝撃を受けました。それまでの私は、リーダーの役割とは指示を与えることと思っていたのですが、まず人の相手の話をよく聞き、自主的に行動できる場を作ることがリーダーの役割であると教わりました。そこから私の考え方は大きく変わり、いまではメンバーに様々な仕事を任せることができるようになりました。卒業して同窓会の会長となった現在でも、人の話を聞き、人に任せることは常に意識しています。

 エンパワーメントは、仕事以外の活動である高校バスケ部の監督でも、同窓会長でも活かされています。監督は、試合で起きるすべての責任を取る立場だと考えています。練習では細かい指導と準備をしていますが、試合では選手に判断を委ねています。同窓会では、幹事のメンバーが実現したい活動ができる場を作ることを大切にしており、年1回のホームカミングデー、3カ月ごとに行うネットワーキングパーティー、卒業生へのインタビュー企画など、さまざまな活動が自主的に生まれるようになりました。

 この2つの活動では、人の話に耳を傾け、人に任せることの大切さを学びました。その結果として、自分が実現したいことに挑戦し、実現できることが増え、自分自身とても充実した時間を過ごすことができていると感じています。

 3つ目はNPOの団体への支援です。東日本大震災の後、私はボランティア活動を通じて、多くのNPOの方々と知り合いました。素晴らしい活動をしている一方で、団体の運営が厳しい話を伺い、所有していたビルの空室を改装してNPOの方向けにシェアスペースの運営をスタートしました。現在は8団体に利用いただいており、イベントやセミナーなどの目的でご利用いただいております。このシェアスペースは、事業的な価値として利益を優先するのではなく、社会的な価値を優先したいと思っています。スペース=場を提供することで社会が善くなるお手伝いをしたい、支えたいという思いから続けています。

「笑顔が増えた」と思うことができたよろこび

 3つの活動を通じて自分が変わったと思えるのは、「笑顔が増えた」ことです。仕事ではいつも肩に力が入っていて、自分がやらなければという気持ちが強すぎ、周りが見えなくなっていましたが、今では人の話を聞き、人に任せることは任せ、一緒になって取り組むことの良さを深く理解することができました。人の上に立つ監督の立場では、ときに厳しく、ときに優しく接することを学び、褒めることで人が成長する経験をしました。NPOの皆さんとの関わりでは、自分の内面にある気持ちを信じて行動する人たちは笑顔が絶えないと感じました。そして、自分のやりたいことを見つけ、それを実行できる人の笑顔は周囲の人にも伝わり、温かい空気に包まれていると感じました。笑顔でいることはとても大切だと意識できたことで、さまざまな活動を通じて笑顔になれる自分に出会えたことが一番の喜びです。

インタビュー:古野庸一 テキスト:米川青馬

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