ボス充とは

ボス充とは 2018/1/18

社外活動が充実している「ボス充」上司は
周囲に良い影響を与え部下に信頼されています

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「ボス充」とは、リクルートマネジメントソリューションズが新たに打ち出した新語です。弊社は2018年、人材マネジメント領域でボス充がトレンドになると考えています。しかし、「ボス充とはいったいどのような状態のことですか?」「その背景にはどのような社会の動きがあるのですか?」と疑問を抱く方が多いことと思います。このページでは、そうしたことを詳しくご説明します。

多くの若手社員がボス充上司を支持しています

 「ボス充」とは、一言でいえば、マネジャーが生活を楽しみ、社外活動が充実している状態のことを指します。ボス充の状態にあるマネジャー(ボス充上司)は、会社や社会に良い影響を与え、多くのメンバーから信頼されています。ここでいう「社外活動」とは、副業、趣味、NPOやボランティアなどの活動、家族を大切にすること、勉強などのことを指します。社外活動は何でもかまいませんし、1つでも複数でもまったく問題ありません。とにかく、現在の仕事に直接関わること以外のことを行ったり、楽しんだりすることが大切なのです。ボス充上司は、仕事での経験・スキルを社外で活かすと同時に、社外での経験を仕事に活かしています。その好循環が、人間的な余裕や優しさなどにつながり、部下の信頼につながっていくのです。

 社外活動といわれると「ハードルが高い」と思う方が多いかもしれませんが、かまえる必要はまったくありません。ちょっとしたボランティア活動や地域活動、少年野球のコーチやPTA役員など、比較的簡単にできること、日常の近くにあってスタートしやすいことで十分です。会社の仕事や研修をきっかけに始めてもよいですし、プライベートの延長線上にあってもかまいません。また、家族を大切にする行動も十分な社外活動です。もちろん、NPOやNGOなどで本格的に活動したり、社会人大学院に通ったりするのはすばらしい活動ですが、最初の一歩は何もそこまででなくてもよいのです。

 ボス充の重要性を裏づけるデータについては別のページで詳しくご紹介しますが、ここで少しだけ触れておくと、弊社が2017年に行った「ボス充実態調査」では、
(1)社外活動が充実している上司の方が、そうでない上司よりも、若い部下には魅力的に映っている
(2)多くの若い部下にとって、理想の上司は人間的な幅が広く、かつ早く帰る人である
(3)若い部下は、上司の社外活動の話を聞きたいと思っている
という調査結果が出ています。つまり、多くの若手社員が、ボス充上司を支持しているのです。

1社だけ、1つの仕事だけに賭けるのはリスクが高い社会になりました

 では、なぜ若手社員はボス充上司を支持するのでしょうか。ごく簡単にいえば、それは、若手社員の「考え方」が、上司世代と違うからです。例えば、いまの若手社員の目には、「上司や先輩方の世代は仕事の比重が重すぎる」「自己実現の場は仕事以外にもあるはずなのに、仕事だけの上司・先輩方が多すぎる」「家族を大事にできない上司は、部下も大事にできないのではないか」というふうに見えています(リクルートマネジメントソリューションズ「長時間労働実態調査」2017年)。いまの若者の多くは多元的な自己を持っており、社内での充実だけでなく、社外での充実もかなり重視しています。そんな彼らの目から見れば、いわゆる「仕事人間」は決して魅力的ではないのです。

 では、なぜいまの若者が多元的な自己を持っているのかというと、「1社だけ、1つの仕事だけに賭けるのはリスクが高い社会になった」からです。現代はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代。いまの日本社会を見ても分かるとおり、大企業ですら、あっという間に経営が傾くかもしれない世の中になったのです。また、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが『ライフ・シフト』で書いたように、いまの若者は「人生100年時代」になる可能性が十分にあります。そうなれば、1つの仕事をずっと続けるのではなく、セカンドキャリア、サードキャリアが当たり前になり、その間に何度も学び直すような人生シナリオが一般的になるでしょう。さらに、高齢化・地方の衰退・格差・貧困・教育などの社会問題が山積みで、これを解決する人材が足りないという側面もあります。一方で、AIやロボット技術などの発展で働く時間そのものが減っていき、これからは余剰時間が増えるという予測もあります。それに、いまや共働きが極めて普通になりました。

 このような社会では、1社に尽くす、1社にとどまるという生き方は、もはや主流にも憧れにもなりえません。むしろ、仕事とプライベートの両方を充実させ、さまざまな変化に合わせて柔軟に働き方や生き方を変えていくのがスタンダードという社会になりつつあるのです。それを裏づけるように、経営学では「ワーク・ライフ・エンリッチメント」の研究が増加しています。「ワークとライフには良い意味での相乗効果がある」という科学的な証拠も揃いつつあるのです。

企業側も、働き方改革や人材育成の観点からボス充上司の存在を歓迎しています

 当然、企業側もボス充上司の存在を歓迎しています。そこには大きく2つの直接的な理由があります。1つ目は「働き方改革」で、すでに残業や労働時間の削減を実施した企業、あるいは実施中の企業が増えています。そうしたときに、余剰時間を社外活動に充て、そこでの経験を社内にフィードバックする社員が増えることは、企業にとって間違いなくプラスになるのです。2つ目は、「教育研修の進化」です。最近は、従業員に社会の変化を知ってもらうため、異業種の仕事を体験したり、地域や海外などで異文化を体験したり、ボランティアなどを通して異次元を体験したりする研修プログラムを採り入れる企業が多くなっています。個人の社外活動は、これらの研修と同様の効果を発揮する可能性が高い。そして、上司が社外活動に力を入れれば、部下もまた社外活動を頑張るようになると考えるのが自然です。人材育成の観点から見ても、ボス充上司の存在は大きいのです。

 加えて、そもそも多くの企業の経営そのものが、単に儲ければよいという考え方から、ビジネスを通して社会的責任を果たすことが大事だという考え方に変わってきており、いまや社会貢献活動をポジティブに捉える企業が大多数になっています。さらに、今後は複数の仕事、すなわち「複業」を奨励する企業が増えることも想定できます。さまざまな意味で、ボス充上司に追い風が吹いているのです。

ネーミング・理論構成:古野庸一 テキスト:米川青馬

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