メンタルヘルス不調を予防する 健康でイキイキとした個と組織づくりに向けて

一昔前まではメンタルヘルス不調と言うと、特定の個人の問題という受けとめ方をされることがよくありましたが、最近では、メンタルヘルスケアは組織の持続安定的なパフォーマンス発揮のベースであるという視点から、重要な経営課題の一つとして積極的に取り組んでいる企業が出てきています。弊社では、メンタルヘルス不調の発症を予防するために、職場とそこで働く従業員のメンタル面の活性状態を明らかにするサーベイを開発し、お客様にモニター提供させていただいています。今回はその事例もまじえ、今後の企業におけるメンタルヘルスのあり方について考えます。


企業におけるメンタルヘルスを取り巻く現状

最近3年間の数字を見ると「心の病」は約6割の企業で増加傾向にあります(※1)。メンタルヘルスケアが課題になっているという企業は56.9%、特に従業員1,000人以上の企業では79.1%が問題視しています(※2)。また、精神障害等の労災請求および認定の件数も年々増加しており、企業が数千万円から1億円を超える損害賠償金を支払うケースも出ています。

※1 『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果,社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所)
※2 労政時報3652号アンケート調査

しかし企業におけるメンタルヘルスケアと言うと、うつ病などのメンタル不調を患ってしまった社員への対処という認識がいまだ一般的な状況です。具体的な対策としてはカウンセリング、電話やEメールでの相談窓口の設置、管理職に対するメンタルヘルス教育(特に知識ガイダンス、積極的傾聴法)が主となっています(図表01;労政時報3652号アンケート調査)。

一方でメンタルヘルスケアに積極的に取り組む先進的な企業では、このような対症療法だけではなく、組織の集団治癒力の向上や職場コミュニケーションの重視を掲げ、組織的に予防活動を推進している例もみられます。

メンタルヘルス不調を予防するための視点

企業の経営者や管理者は、従業員のメンタルヘルスへの配慮と同時に、高い成果を生み出す組織づくりを目指しています。両者を効果的に実現するためには、従業員のメンタルヘルスが組織の持続安定的な成長のベースであることを理解し、企業全体で取り組むべきマネジメント課題としてメンタルヘルスをとらえることが求められます。自社の従業員が気持ちよく、健康的に働いているか、仕事に向かってやる気100%で取り組んでいるかなど、従業員のメンタル面をトータルでマネジメントする(メンタルマネジメント)視点でメンタルヘルスケアに取り組むことがポイントになります。弊社ではメンタルマネジメントのポイントとして、以下の2点が重要と考えています。

(1)メンタル面が健全な状態とは、心身が健康であり仕事に意欲的に取り組んでいる状態

弊社では、メンタルマネジメントを効果的に行うために、図表02のように心身にあらわれるストレス状況と仕事に向かう意欲・エネルギーの両面から、従業員と職場のメンタル面の状況をとらえることを提案しています。つまり、メンタルヘルスが健全な状態とは、心身にあらわれるストレス状況が健康であり、かつ、仕事に意欲的に取り組んでいる状態=「イキイキ」状態であると定義します。

さらに、図表02のように「心身にあらわれるストレス状況」と「仕事に向かう意欲・エネルギー」という2軸でとらえることで、精緻に個人と組織の現状をとらえることができ、的確な手を打つことが可能になります。例えば、ストレスが多く心身が疲労しているにも関わらず、仕事には一生懸命、責任感をもって取り組んでいるような「ギリギリ」状態の場合には、まずはストレスの原因となっている事柄の低減に向けて手を打つことや、少し休養をとるなどの対応が必要でしょう。一方、心身は健康なものの、いまひとつ仕事に力を注げていない「マイペース」状態の場合には、いかにして仕事へのやる気を高めていくかがメンタルマネジメント上の課題となるでしょう。

(2)ストレスの緩衝要因としての職場風土、個人の強さ・しなやかさが予防にとって重要

「イキイキ」状態や「ギリギリ」状態などの組織や個人のメンタルヘルス状況の背景には、図表03のようにストレス要因とそのストレスを緩衝(もしくは促進)する要因が存在すると考えられます。従来のメンタルヘルス対策の多くは、ストレス要因を低減するという対応に重きがおかれてきました。しかし、現実には簡単に減らすことができないストレスも多く、むしろ予防の観点からはストレス要因を低減するだけではなく、「ストレスを乗りこえていける職場と個人」づくりを目指していくことが重要と考えられます。

例えば、仕事のプレッシャーが大きくて傍から見るととても大変そうなのに、なぜかみんな意気揚々として仕事を楽しんでおり、高いパフォーマンスを挙げている職場が存在します。そのような職場にはどんな特徴があるのでしょうか。おそらく、明確な目標に皆の意識が向かっていて、お互いに助け合い、そして切磋琢磨するような職場の風土があるのではないでしょうか。そして職場を構成するメンバーは、ストレスを乗り越えるこころの強さとしなやかさを一定の水準で備えている個々人であると思われます。ただし、個々人の強さとしなやかさは図表03にあるように、もともとの資質だけで決まるのではなく、ストレス対処につながるビジネススキルをどのくらい発揮できているか、家族・友人などからのサポートをどのくらい受けているか、睡眠などからだのケアをしっかりとできているかなどの影響を受けるものです。

予防の第一歩としての組織診断
「メンタルマネジメントサーベイ」

弊社ではメンタルヘルスに関する組織診断ツール「メンタルマネジメントサーベイ」を開発し、一部のお客様にモニター提供させていただいています。図表02、図表03にあるようなメンタルヘルスに対する考え方にもとづき、職場と個人の活性状態を把握する目的で設計されたサーベイです。個別具体的な発症事例に対応するだけではなく、予防のためには、全社の現状を同じ視点から把握するための材料が必要です。メンタルヘルス不調の予防に向けた第一歩として、自社の各職場や従業員の現状を的確に把握することが重要です。

サーベイでは、自社の職場のメンタルヘルス状況は健全なのか、特にどの年齢層や職場が早急な対応を必要としているのか等を明らかにします。その上で、会社として取り組むべきこと、各職場で取り組むこと、従業員が自分自身で対応すること等の対策について考える材料にします。取り組みの効果を確認する意味でも、定期的に組織の活性状態を把握していくことが重要と考えています。

A社での取り組み事例

サービス業を営む従業員数約500名のA社での事例をご紹介します。A社は数年前より人事主導でメンタルヘルス対策に取り組んでおり、全従業員向けのストレスマネジメント研修、新任・既任マネジャー向けのメンタルヘルス研修、さらに新入社員向けにもストレスマネジメント研修を実施しています。メンタル不調者数はほぼ世間一般水準(全従業員の約5%)ですが、休職を経て復職支援中の従業員も多く、職場全体でメンタルヘルスに関する理解を深め、メンタルヘルス不調を予防するような風土を醸成したいと考えていました。

今回は安全衛生活動の一環として、各職場の現状把握を目的とし全職場(約70職場)を対象にメンタルマネジメントサーベイを実施しました。図表04は「心身にあらわれるストレス状況」と「仕事に向かうエナジーレベル」のマトリクスにおける全職場の分布状況です。「イキイキ」に該当する職場が多い一方で、エナジーレベルが低下している職場や、ストレス状況が注意を要する職場も一定数見うけられました。また、ストレス状況が悪化しエナジーレベルも低い、早急に何らかの対応が必要と思われる「沈滞」職場も3職場確認されました。

図表05は「イキイキ」「ギリギリ」「マイペース」「沈滞」の4象限に分布した職場のうち、4つの特徴的な職場の状況をストレスモデルの枠組みに沿って簡略に図示したものです。「イキイキ」職場は、職場の状態や、個人のビジネススキル、ストレス解消状況、ストレス耐性ともに良好で、仕事へのストレスを感じているもののそれを乗り越えて活躍している様子がうかがえ、持続安定的にパフォーマンスを挙げていくことができる組織と思われます。これに対して「ギリギリ」職場は、仕事へのストレスを感じていることは「イキイキ」職場と同じですが、職場の状態が良好とはいえず、個人の強さ・しなやかさのレベルも低いために、心身が疲労し押しつぶされそうになっている様子がうかがえます。そして「沈滞」職場は、仕事に関するストレスよりも人間関係や会社の方針へのストレスが多くなっています。職場も個人も健全な状態とは言えず、まさに組織全体が停滞してしまっている様子がうかがえます。一方、「マイペース」職場は、ストレスはそれほど感じていないものの、仕事に対する意欲がいまひとつ上がらないまま、こぢんまりと仕事を進めていると思われます。メンタルヘルスマトリクスの4象限の情報だけからはわからない、職場と個人の詳細な状況が明らかになり、どんな対応が必要なのかを的確に検討できると考えられます。

なお、A社ではサーベイ実施後のステップとして、各部門別に部長と課長で集まり、職場の現状に対する認識のすり合わせと今後の方策について話し合いを行う予定です。その後、人事が主導して会社全体の状況をまとめ、会社として取り組むことについても明らかにしていきます。なお、職場の状況を改善するために今後どうしたらよいか、部長や課長が人事や専門機関にも相談できる体制を整えています。

今後に向けて

メンタルマネジメントは、サーベイの実施による現状の把握に終わるのではなく、サーベイ結果から見えてきた組織の課題をどう解決していくのか、次の打ち手がカギとなります。どのような取り組みがメンタル不調を予防する上で有効であるのか、取り組みの効果をどのようにとらえていくかについても、サーベイデータの蓄積を通じて今後明らかにしていきたいと考えています。またこちらのHPでもご紹介をさせていただきたいと思います。

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