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将来の組織や人材への展望について見えたモノ

最新調査報告 これからの人材マネジメントへのヒント

  • 公開日:2013/11/11
  • 更新日:2024/04/11
最新調査報告 これからの人材マネジメントへのヒント

弊社組織行動研究所では、「RMS Research 人材マネジメント実態調査2013」として、主に大手企業を対象に人材マネジメントに関する調査を実施しました。今回は、現在の経営課題や人材マネジメント課題に関する経年比較に加えて、将来の組織や人材への展望についての調査を行いました。
今月の特集では、最新の調査結果から見えてきた今後の人材マネジメントへのヒントについてご報告します。

目次
現在と未来を重ね合わせる
経営課題は、新規事業・海外事業の展開へシフト
事業の成長を舵取りする人材の育成・確保が課題
人材の多様化と選抜に向き合う
動機づけ要因は、多様な働き方?

現在と未来を重ね合わせる

日本を取り巻く海外情勢の変化、日本国内の政権交代後の経済環境の変化、2020年の東京オリンピック開催の決定……この1~2年に目を向けるだけでも、さまざまなトピックがありました。このようなトピックは、企業が取り組む経営課題や人材マネジメント課題にも影響を与えていると考えられます。

では、昨今において人材マネジメント課題にはどのような変化があったのでしょうか?
また、さらなる将来にはどのようなことが人材マネジメント課題となり得るのでしょうか?

そのヒントを得るために、現在~今後の人材マネジメントについて、次の2つの調査を実施しました。

図表1. 2つの調査の概要

図表1.2つの調査の概要

まず2・3ページでは、「人材マネジメント実態調査」をもとに、日本企業の経営課題や人材マネジメント上の問題意識に焦点を当て、人事部門の認識の変化をご報告します。
そして4・5ページでは、「今後の人材マネジメントに関する調査」をもとに、予測される組織や人材の変化と、その時に求められる「動機づけ」についてご報告します。

経営課題は、新規事業・海外事業の展開へシフト

はじめに、経営課題に関する認識について確認してみましょう。

図表2. 経営課題に対する認識の経年比較

図表2. 経営課題に対する認識の経年比較

※出典:「人材マネジメント実態調査」

2013年度、2010年度とも、「特に重要度が高い」の選択率が最も高かったのは、「利益の拡大」(2013年度43.2%、2010年度38.8%)でした。

また、2013年度の「特に重要度が高い」の選択率が20%を超えていたのは、「海外事業の展開」(28.0%)、「人的資源の強化」(24.2%)、「売上の拡大」(21.2%)、「新規事業の展開」(20.5%)という結果となりました。

経年変化に着目すると、「海外事業の展開」( 7.6ポイント)、「新規事業の展開」( 7.2ポイント)の選択率が大幅に上昇しました。

これらの結果には、リーマンショックの余波もあり積極的な投資よりも原価削減などに取り組まざるを得なかった2010年度に対し、現在は新たな利益を生み出すための新規事業、海外事業に積極的な投資に踏み切るようになった企業の姿勢が反映されていると考えられます。

続いて、人材マネジメント課題を確認していきます。

事業の成長を舵取りする人材の育成・確保が課題

2013年度、2010年度とも選択率が最も高かったのは「次世代経営人材の育成・登用」(2013年度87.9%、2010年度82.9%)で、2013年度には選択率が5ポイント高まっています。また、経年変化に着目すると、「グローバル人材(日本人を含む)の採用・育成の強化」( 16.6ポイント)の選択率向上が顕著でした。

利益の拡大のために、海外展開や新規事業の展開を加速するにあたって、その舵取りをする経営人材やグローバル人材の育成・確保が急務となっていることが、この結果に反映されていると考えられます。

図表3. 人材マネジメント課題に関する認識の経年比較
図表4. 会社で表出している問題についての認識の経年比較

図表3. 人材マネジメント課題に関する認識の経年比較  図表4. 会社で表出している問題についての認識の経年比較

※出典:「人材マネジメント実態調査」

では、会社で表出している問題についてはどのように認識されているのでしょうか?

「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」について「よくあてはまる」の選択率は引き続き高くなっています(2013年度39.4%、2010年度39.2%)。

また、「次世代の経営を担う人材が育っていない」についても「よくあてはまる」の選択率は絶対値が高いだけでなく、3年間で約12ポイントと急激な高まりを見せています(2013年度38.6%、2010年度26.7%)。

先述の通り、これからの経営の舵取りをする人材の育成が企業にとって急務となっている傍ら、それがなかなかうまくいっていないという認識がこの結果に表れているようです。

ここまでは、経営や人材マネジメントについての現状認識、また過去からの認識の変化について確認してきました。

では、国内人口の減少、高齢化、グローバル化など、さまざまな環境変化が進む将来、組織・人材についてはどのような見通しが持たれているのでしょうか?
次ページでは、今から約10年後、2025年頃をターゲットとした場合の組織・人材に関する見通しを確認してみましょう。

人材の多様化と選抜に向き合う

人員構成について、「従業員に占める外国人の比率が、現在より高まっている」「従業員に占める女性の比率が、現在より高まっている」「従業員に占める高齢者の比率が現在より高まっている」と回答した企業は70%を超える結果*となっています。(*「よくあてはまる」「ややあてはまる」の選択率の合計。以下同様)

採用については、「優秀な人材の確保が、現在よりも難しくなっている」と回答した企業は約80%となっています。

図表5. 組織・人材マネジメントの見通し

図表5. 組織・人材マネジメントの見通し

※出典:『今後の人材マネジメントに関する調査』

これらの結果からは、日本の人口が減少する中、優秀な人材を確保するために、企業はこれまで以上に女性、中高年、また外国人というリソースを重視しようという意図を持っているということがうかがえます。

また、経営層については、「経営ボードが、現在より若返っている」と回答した企業は60%程度となっています。一方、「経営ボードの多国籍化が、現在より進んでいる」については、予測が割れています。

処遇については、「給与格差が、現在より大きくなっている」と回答した企業は70%を超える半面、「給与水準が、現在より高くなっている」と回答した企業は40%を切っています。

教育投資については、「従業員の教育に対する投資が、現在よりも積極的に行われている」「教育投資の対象となる従業員と、そうではない従業員のメリハリが、現在よりも強くなっている」と回答した企業はともに70%を超えています。

これらの結果は、経営人材の早期選抜がより進む可能性、またそのような「選抜された人材」に対して、高い処遇を与えることや重点的な教育投資を行おうという意図の表れと考えられます。

さらに組織・制度については、「従業員が、現在よりも多様な働き方を選べるようになっている」「外部の企業や研究機関とのコラボレーションが、現在よりも多くなっている」と回答した企業は70%を超える結果となっていました。

今後企業は、組織内外のさまざまな多様性をもとに、新たな価値を生み出そうとしていることが、これらの結果からうかがえます。

このように組織・人材の状況の変化が予測される状況において、働く人の力を引き出す「動機づけ」のために重要なものについては、どのような認識がなされているのでしょうか?
現在と2025年頃、2つの時点を対象にした質問の結果から、次のページでその答えを探っていきます。

動機づけ要因は、多様な働き方?

選択率が最も高いのは、「仕事のやりがい」(現在89.5%、2025年頃76.6%)でした。それに続くのは、現在を対象にした場合、「自分の成長の実感」(現在57.3%、2025年頃46.0%)です。いずれも選択率は高いですが、今後は重要性が低下すると考えられているようです。

図表6. 従業員を動機づけるもの

図表6. 従業員を動機づけるもの

※出典:『今後の人材マネジメントに関する調査』

同様に、2025年頃に「動機づけ」の要因として重要性が低下すると考えられているものは、「自分の成長の実感」に加え、「社内の人間関係の良さ」(現在33.9%、2025年頃15.3%)、「高い給与」(現在23.4%、2025年頃15.3%)、「出世や昇進」(現在16.9%、2025年頃5.6%)です。
反面、現在に比べて2025年頃に重要度が特に高まると考えられている要因があります。それは、「多様な働き方の選択」(現在3.2%、2025年頃48.4%)です。

2025年頃、「多様な働き方の選択」が動機づけのために重要になるという認識には、大きく2つの背景があると考えられます。

一つは、「働く期間の長期化」です。
今後段階的に年金支給年齢が後ろ倒しになり65歳、またはそれ以上の年齢になるまで、より多くの人々がより長い期間働くようになると考えられます。そのような場合、出産や介護といったライフイベントに直面する人はますます増えます。また、長く働くためには環境変化に対応すべく、新たなことを学ぶこと、または継続的に学び直しをすることも求められるようになります。
このような状況を想定し、ライフステージに応じて働き方を選べることが、個人に対する動機づけ要因として重要になる認識がされているのではないでしょうか。

もう一つは、「成長パラダイムに基づくインセンティブが保障できない」ことです。
日本の人口が減少し、それに伴い事業規模が縮小した場合、高い給与や、ポストを伴う出世を保障することは、企業にとって現在以上に難しくなると考えられているのではないでしょうか。また、事業の成長と個人の成長が重なり「やりがいや成長感を感じる」機会も、今後は減ってしまうと考えられているのかもしれません。
結果として、それらに代わるものとして、必ずしも積極的な理由のみからではなく、「多様な働き方の選択」を今後動機づけ要因にせざるを得ないと認識されているのかもしれません。

このように「多様な働き方の選択」が動機づけのために今後ますます重要になるだろうという見通しの背景には、このような「悩ましい」将来に対する予測が見え隠れします。

このほかにも変化し続ける環境に呼応して、企業の経営課題、また人材マネジメント課題は変化を続けていきます。本報告が、皆様が今後の人材マネジメントのあり様について考える一つの参考になれば幸いです。

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