部長に求められる役割を考える
〜経営人材として活躍できるために部長職で求められるチャレンジ〜
部長としての「真価が問われる」3つの活動〜その3〜
3.継続的に革新し続けられる組織力を開発する
事業の継続的な発展に向けて組織の現状を変えていく過程で、組織風土の変革は避けて通れない課題です。組織風土とは、その組織の構成員の間で、暗黙のうちに共有されている行動パターンであり、知らず知らずのうちに人々の考え方や行動を規定し組織固有の秩序を作り出しているものです。組織の動き方を変えようとする時、組織風土は見えない壁のように立ちふさがることが多くあります。組織としての動き方を変えるとは、既存の組織内の秩序を壊すことでもあるのです。さらに、事業の継続的発展を考えれば、自身がその組織を離れても自走できるような組織風土を開発することは、特定の機能組織の責任者であるがゆえにできる重要な役割です。
「継続的に革新し続けられる組織力を開発する」とは、“従来のやり方や成功パターンに固執せず、変化を取り込みながら自分たちの動き方を変えていくことが常態であるという組織風土を開発する”活動です。ここでのポイントは、「混沌を作り出す」ことと「小さな新しい動きを孵化する」ことです。よく見られる誤解は、組織風土が人間関係から形成されていると考え、「風通しをよくしよう」「もっとコミュニケーションをとろう」といった関係性の改善に着手するというものです。こうした打ち手自体は悪いものではありませんが、これだけで新しい動き方の障害となっている壁を打破することはありません。組織風土の変革では、前項で述べた戦略的な介入によって、それまでのやり方を考え直さざるを得ないような状況を作りだし、組織にある種の混沌を生み出す過程が必要です。そして、その後の一時的な生産性の低下を乗り越えて発生してくる新たな動き、望ましい変化につながる小さな変化を見逃さず、組織全体に伝播させていくプロセスを繰り返すことによって初めて変化対応力のある組織風土に近づくのです。
「真価が問われる」3つの活動が要求するのは、広範囲の不確実性と相互依存性への対処能力です。それはミドル・マネジャーのステージで培ってきた経験だけでは対応が困難であり、マネジメントスタイルの変更や新しいマネジメント能力の開発が求められるものです。しかし、たいていの場合、そうしたチャレンジの存在は明確に意識されておらず、多くの部長は昇格後直面するさまざまな状況に、それまで自分が強みとしていたやり方で対処しようとし、試行錯誤を繰り返します。そうした状態が一定期間続くと組織のパフォーマンスが思うように上がらず、役割機能不全に陥ることとなります。