「管理職≠組織長」時代の管理職とは?
〜事例から読み解く、今の時代に求められる管理職の役割〜
現実と役割定義の乖離で意識転換は困難
前頁で示したように、管理職になるということは3つの意識転換をするということであり、それに応じて期待や求める役割を定義して人事制度を各企業ごとに運用している状況です。ところが、管理職がこれまでと同様の行動をしており、何も変わっていないという声を多くの企業の人事担当の方から聞きます。
では、管理職自身はどう感じているのでしょうか。
新任管理者へのインタビューを行ない、代表的な声を図表2に整理しました。
【図表2】管理職昇進者の声
組織長 | 非組織長 |
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部下育成をしなくてはならないが、自らもプレイヤーとしての高い業績目標を抱え、その中に埋没してしまい、他のことが手につかない状況に陥っている | 仕事内容が変化せず、異動や配置換えもなく、そのまま以前と同じ仕事を続けており、組織長のように部下をもつ、評価権が与えられるなどの変化がほとんどない |
部下育成は大事だとは思っているし、頭ではわかっているものの、目先の業務に追われ、後回しにせざるを得なくなってしまう | どこかで変わらなくてはいけないのではないかという漠然とした不安を抱えつつも、日常の仕事に忙殺され、いつの間にか時間ばかりが過ぎている |
コンプライアンス、メンタルヘルスなどを意識して、部下を叱れない、要望ができずに自分で仕事を抱えてしまい、仕事に忙殺され、自分自身が何を実現したかったのかを見失ってしまう | 制度上の役割定義を読んではみるものの、それが日常場面で、何をどのようにすることなのか、何を大切にして何を実現していけばよいのか、ということを実感できていない |
つまり、組織長、非組織長にかかわらず、現実と役割定義との乖離が大きく、企業側が役割定義を示すだけでは実際に動けない、何をどのように行動することになるのかがわからない、という状況がうかがえます。
組織長、非組織長を含めて「管理職」としての役割意識の転換を実現するためには、実際の職場において、どのように動いていくことになるのか、というイメージまでを伴った自覚を促すことが必要だと考えられます。
それでは、具体的にどのように意識転換を実現すればよいのか、事例を通してポイントを見ていきます。