「管理職≠組織長」時代の管理職とは?
〜事例から読み解く、今の時代に求められる管理職の役割〜
管理職になることは3つの意識転換をすること
管理職になることは、どのようなことなのでしょうか。
昇進者である本人にとっては、処遇が変わり、会社に認められたことを実感する、職業人生における重要なトランジッション(転換点)です。もちろん、企業側でも、組織長であれ、非組織長であれ、管理職となることは大きなトランジッションであると位置づけています。それは、昇進試験において、筆記試験や面接などのプロセスを経た上で、選抜された者のみが管理職に昇進できる事実からも見て取れます。
図表1は企業の人事担当の方々とディスカッションを行いながら、管理職に対して求めることについて、主任・係長層との違いを整理したものです。
【図表1】管理職とは 〜主任・係長層と管理職との違い〜
主任・係長 | 管理職 | |
---|---|---|
業務遂行の範囲 | 自部署内で完結 | 他部署・上位経営層も巻き込んで遂行・完結 |
仕事の仕方 | これまでの延長で成果を積み上げる | これまでの延長とは異なる新しい価値を創造する |
影響力の発揮 | 上司を巻き込み、周囲を動かす | 自部署代表として、対外折衝を進める 他部署の上層部を動かす |
業務遂行のあり方 | 確実に責任をもって業務を完遂できる | 大きな成果だけでなく自社らしさ(会社の理念、大事な価値、強み)を体現し、中堅層の見本・手本になる |
成果を見る視界 | 自部署、部分成果 | 全社最適、全体最適、業界・マーケットにおける成果 |
意識の持ち方 | 自部門の担当職務の意味・価値を理解し、その基準に沿った仕事をする | 自事業や企業の社会的な意味・価値を理解し、その基準をつくる、見直す 戦略上期待されていることを実行する プレイヤーもしくはマネジャーとして影響力を発揮する |
成果のレベル | プレイヤーの中でも相対的に高い成果を上げる | 圧倒的に高い成果を挙げる継続的に成果を挙げる、次の時代に繋がる仕事の成果を挙げる、新商品開発や戦略テーマで成果を挙げる |
図表1の主任・係長層と管理職の違いは、大きく次の3つの意識の転換をすることに集約できます。
・「経営資源として活用される」から「経営資源を責任を持って活用する」
・「与えられた仕事を完遂する」から「自ら仕事を創り出す」
・「環境の変化に適応している」から「自らを変え、環境を変える」
つまり、管理職とは「自らの意思と責任で、現場を改革・成長させて全社的な業績・価値創造に貢献する」存在であるといえます。