効果的な次世代リーダーの育成法
〜国際的リーダー育成機関の研究から〜

影響力を持つ「研修以外の経験」 (2)

2.成長を促す人間関係

経営幹部の回顧録などには、「このとき、○○さんからの薫陶を受けたことが後の自分に大きく影響した」といった記述がよくみられます。これこそ、リーダーの「成長を促す人間関係」の典型的な例です。人々は仕事そのものからも成長しますが、仕事を通じた関係者(これは何も社内に限りません)とのやり取り(数分の会話から長期にわたる関係まで)からも多くのことを学びます。

近年、多くの企業で活用されているコーチングやメンタリングの仕組みも、この「成長を促す人間関係」という経験の提供にあたります。成長を促す人間関係は、例えば、前述のチャレンジングな仕事に取り組んでいるときのサポートを提供しますが、それだけでなくアセスメントやチャレンジの要素も含んでいます。例えば、学習に取り組んでいる過程での他者からのフィードバックはアセスメント・データの提供になりますし、自分とはまったく異なる見解を持つ相手の主張は自分のものの見方を見直すというチャレンジを提供します。 

また、成長を促す人間関係は、なにも優れたリーダーとの接触だけからもたらされるものではありません。上司や同僚、部下、ときには家族や友人から重要な学習がもたらされることもあります。そこでは他者が、その人の成長を促す重要な役割を担っているのです。


【「成長を促す人間関係」において他者が担う役割】

要素 役割 機能
アセスメント フィードバック提供者 学習や改善に取り組んでいる間の継続的なフィードバック
壁打ち相手 戦略を実施する前の、戦略評価
比較ポイント 自分自身のスキルやパフォーマンスを評価する際の基準
フィードバック解説者 他者のフィードバックをまとめたり、理解できるようにするためのサポート
チャレンジ 対話の相手(ダイアローグ・パートナー) 自分と異なる見解や観点の提供
任務の仲介者(アサインメント・ブローカー) チャレンジングな任務(新しい仕事、あるいは現在の仕事への追加)の提供
会計係(アカウンタント) 能力開発の目的達成をするためのプレッシャー提供
ロール・モデル(手本となる役割) 能力開発中の分野における高い(あるいは低い)能力の実例
サポート カウンセラー 学習や能力開発を難しくしている要因の分析
チアリーダー 成功できるという自信の喚起
補強者 目標に向けた前進に対するフォーマルな報奨
戦友 苦労しているのは自分だけではないという意識、また他人が目標を達成できれば、自分にもできるはずだという意識の喚起

3.修羅場

修羅場とは予期せず逆境に直面するという経験です。仕事上での失敗、キャリアにおける挫折、個人的な心の痛手(病気や離婚、死別など)がそれにあたります。修羅場の経験は、それが、意図的、計画的に経験できるものではないという点で、また、非常に強い喪失感を伴うという点で、前出の1)2)の経験とは異なります。なぜ、こうした経験がリーダーを育てるのでしょうか。修羅場は、人々に、「自分はなにか間違っていたのだろうか?」という深い内省と、仕事や人生で何が大切なのかについての熟慮を引き起こします。そして、長い時間をかけて現実を受け入れ、その後の自分を変える努力を導き出すのです。研究によれば、修羅場は自己への気づきをもたらし、自分の限界を認識し、円熟さを備えたリーダーへの成長に重要な影響をもたらすとされています。


【修羅場の五類型とその教訓】

修羅場 学ばれる教訓
業務上の間違いや失敗 人間関係の手綱捌き
謙虚さ
ミスや失策への対応のしかた
キャリアにおける挫折 自己への気づき
組織内の政治
本当にやりたいこと
個人的な深い心の痛手 人に対する神経の細やかさ
コントロールの範囲を超えた出来事に対処すること
あきらめずにやり通すこと、忍耐
限界を認識すること
問題のある従業員 いかに立場を貫くか
真正面から対峙するスキル
人員削減 対処するスキル
何が重要なのかを認識すること
組織内の政治
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