効果的な次世代リーダーの育成法
〜国際的リーダー育成機関の研究から〜
影響力を持つ「研修以外の経験」 (1)
CCLの研究ではさらに、リーダーとしての成長を促す経験として、研修のような「仕事から離れたイベント」以外の重要な経験が明らかにされています。これらの経験は日常の中にあるという点で、対象者の能力開発に研修よりも強い影響力を持つといえます。これらの経験とは「仕事の割り当て」、「成長を促す人間関係」、そして「修羅場」です。
1.仕事の割り当て
「仕事が人を育てる」というのは、馴染みのある考え方です。おそらく洋の東西を問わず普遍的な真理ではないでしょうか。しかし、「リーダーを育てる」仕事となると、一考を要するはずです。CCLによればリーダーとしての成長を促す仕事の割り当てとは、表1のような5つのチャレンジを内在する仕事とされています。
【仕事上のチャレンジの例】
仕事上のチャレンジ | 例 |
---|---|
異動 |
・経験の浅いメンバーとしてプロジェクトチームに加わる ・別機能(部門)の臨時任務を引き受ける ・経営管理全般の仕事への異動 ・よく知らない集団や専門領域をマネジメントする ・ライン部門から全社スタッフへの異動 ・別事業部門への水平的な(昇進、降職を伴わない)異動 |
変化を生み出す |
・新製品、プロジェクト、システムの立上げ ・リエンジニアリングのチームの一員として働く ・新しいビジョンやミッション・ステートメントの展開を推進する ・ビジネスの危機への対処 ・人員整理の取組み ・新スタッフの採用 ・新規の作業工程/業務プロセスへの着手 ・組織の再編成 ・部下のパフォーマンスにおける問題の解決 ・製品や設備の清算整理の指揮監督 |
高レベルの責任 |
・厳しい締切りをもつ全社レベルの任務 ・マスコミや影響力のある外部者に対して組織を代表する ・複数地域にまたがるマネジメント ・事業規模の縮小に付随する職責を引き受ける ・同僚が不在の期間、その職責を引き受ける |
権限外での影響力 |
・トップ・マネジメントに提案を行う ・全社スタッフの仕事 ・クロス・ファンクショナル・チームの一員として働く ・会社の行事やオフィスの改装のような、社内プロジェクトのマネジメント ・コミュニティや社会的団体とのプロジェクトに取組む |
障害物 |
・難しい上司のもとで働く ・シニア・マネージメントの指示がほとんどないか明確でない状況で働く ・非常に競争的なマーケットに直面している事業や製品ラインの職責 ・新規プロジェクトを乏しい資源でスタートさせる |
Handbook of leadership development, Center for creative leadership, 1998, Jossey Bass より抜粋引用
「仕事の割り当て」で鍵となる要素はチャレンジであり、なによりも当人にとってチャレンジングな仕事がその人を成長させるわけですが、同時にこの経験はアセスメントやサポートの要素も含んでいます。新しい仕事が、当人の現状のスキル面での強み・弱みを明らかにする場合、それはその人にアセスメント・データを提供することになります。未経験の仕事に取り組んでみてはじめて、自分が何が得意で何が不得意かに気づくことは多々あることです。この場合、仕事が、その人に、能力開発が必要な分野を「指摘」したことになるのです。
また、成長につながるような仕事を任せられること自体が、その人に自信と動機づけを与えることもあります。重要な仕事を任されることは組織がその人の力量を信じ、期待していることの表れであり、当人の学ぶ意欲も高まるのです。しかし、仕事におけるチャレンジがことのほか困難で、仕事が進むにつれて、他の人たちからのサポートが必要となる場合もあります。