効果的な次世代リーダーの育成法
〜国際的リーダー育成機関の研究から〜

リーダーを育てる経験が持つ3つの要素

リーダーの成長を促す経験には、アセスメント(評価・測定)、チャレンジ(困難を伴う課題)、サポート(支援)の3つの要素が含まれていることが、CCLの研究から明らかになっています。どのような種類の経験であれ、これらの3つの要素が備わっている場合にはリーダーの能力開発に最も効果的であるというものです。言い換えれば、こうした3つの要素がバランスよく組み込まれた経験をする機会を作り出すことで、リーダーの成長を加速することができるということです。


【リーダーを育てる経験が持つ3つの要素】

リーダーを育てる経験が持つ3つの要素

アセスメントの要素とは、経験の中に、個人が置かれている状況や現在の強み・弱み、能力レベルなどに関するデータを受け取る機会が含まれていることをさします。つまり、自分がいまどういう状況にあるのか、何はうまくやれていて、何はうまくやれていないのかを知らせてくれるようなデータが豊富にある経験がリーダーの成長を促すのです。ここでいうデータには、人事考課や360°アセスメントなどの公式のものもあれば、顧客の反応や同僚からの指摘、上司からの注意など日常の中で受け取る非公式なものもあります。経験の中にアセスメントの要素があることで、人々は自分に変化が必要であることを知り、現在の自分と望ましい自分とのギャップを埋めたいという気持ちになることができます。

チャレンジとは、言葉のとおり、個人が慣れ親しんだやり方や居心地のよい場所から一歩踏み出さざるを得ないような課題への取り組みです。未経験の課題や強いプレッシャーを伴うような課題に直面したとき、人々は不安定な状態となり、それまでのやり方や考え方の見直しを迫られ、新しい能力を身につける必要性に駆られるのです。経験の中にこうした要素が含まれていることで、人々は困難を克服しなければならないと感じ、新しいスキルや方法を試そうとします。

3つ目の要素であるサポートとは、学習や成長のための努力が「価値あることなのだ」というメッセージを人々に送ることです。また、経験が困難を伴うものであるほど、人々には心の支えとなる励ましや承認が必要となります。経験の中にサポートの要素があることで、人々は、自分にはチャレンジを乗り切る力があり、成長できる価値ある人間なのだというポジティブな姿勢を維持することができるのです。

これら3つの要素を効果的に組み合わせた経験の例を考えてみましょう。例えば将来の幹部候補と目される中堅リーダーに問題解決力を身につけてもらうための研修を企画している場合、前述の3つの要素を勘案することで、研修という「経験」は対象者の能力開発により寄与するものとなります。

アセスメントの要素 チャレンジの要素 サポートの要素
研修を実施する前に、対象者の現在の問題解決力をチェックリストなどを用いて上司に回答してもらい、対象者本人にフィードバックしてもらう。加えて、現在の仕事や将来のキャリアにとって問題解決力がいかに必要かを説明してもらう。 研修の中身としては、講義中心ではなく、対象者が慣れ親しんでいる状況とは異なる、個人の能力が試されるような複雑なケーススタディや模擬演習に取り組んでもらう。未経験の課題に取り組み、自分の能力が試されるような状況を作り出す。 研修の運営面では、支援的な環境をつくる。講師は参加者の質問を奨励し、失敗を許容する。参加者同士が協力し、相互に学び合う関係をつくる。研修が進むにつれて、参加者が自分の進歩を確認できるようなしかけをつくる。研修後は必要に応じて講師や上司からコーチングを受けられるようにする。

3つの要素は、研修という「経験」に限らず、後述する(研修以外の)さまざまな経験に適用されるべきものですが、研修という経験だけを考えても、これらの3つの要素を勘案することで、事前事後のしかけや研修そのものの内容を考える上でたくさんのヒントが得られるはずです。

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