主体性を引き出しエンゲージメントを高める 能動的に企業価値の創造を志向するガバナンスとは
事例:現在の危機を正しく認識し、その危機を乗り越えるための改善目標を現場に落とし込む 〜飲料メーカーB社〜
状況:製品ブームの終焉に伴う売上の低下
B社は危機に直面していました。B社が供給する製品のブームが終わり、業績が急降下していたのです。売上にブレーキがかかり(非常に大きなPL上の赤字を記録しました)、B社も含めた業界には、製品在庫があふれかえっていました。このまま手をこまねいていてはB社がその存続を問われるような状態に陥るのは目に見えていました。
課題:自社の現状課題への薄い認識
経営陣の間で自社の状況が十分に共有されていませんでした。製品ブームの終焉は明らかで、経営陣は、「このままではいけない」とはなんとなく思っていましたが、「今すぐ行動を起こさなければならない」というほどの切迫感を抱いていませんでした。また、当然のことながら、経営陣以上に、現場には危機的な状況と課題は浸透していませんでした。
取り組み:経営陣による現状の再確認と、現場に踏み込んだ経営改革の徹底遂行
ヨーロッパの先進企業の社外取締役を経験していたB社の社長は、現状を把握し、経営陣と危機感を共有する必要を感じました。そのため、まず、財務分析、ポートフォリオ分析でB社が明らかに危機に陥っていることを理解し、正しい企業努力により生き残ることが可能であることを確認しました。次に、全社に向けて現状を何度も発信しながら、事業再編などの戦略面にとどまらず、成果を明示して評価に結びつけるなど、社員全体のガバナンスに関わる改革が徹底的に行われました。
成果:サプライチェーン改革の実現によるキャッシュフローの改善
社長や経営陣の現状認識とそれに基づく明確な目標が何度も共有された結果、社員は目標達成をそれまで以上に重視して活動するようになりました。厳しい市場環境のもとで、売上はなかなか伸びませんでしたが、社員は必死になってサプライチェーンの改革に挑み、在庫の適正化を行いました。それにより、経済紙でも批判を浴びた過大な資産は大きく減少し、キャッシュフローの改善が見られました。同社はその後は順調な経営を行っています。
成功の要因:社長・経営陣の決断と現場への具体目標の提示と共有
社長や経営陣が現在の危機を正しく認識し「腹決め」をした上で、社員に現在の危機と今後への課題を訴え、そして状況を正しく認識することのできる新しい経営指標が今後生き残るためにどうしても必要だ、ということを繰り返し伝えました。
成果が分かりやすく表される新しい経営指標により、全社員がサプライチェーン改革による在庫の適正化を数値として確認することが可能となり、社員のエンゲージメントを高めました。