キーワードは「女性」「若手」「50代」 データが語るキャリアデザインの可能性
どのようなテーマが寄せられているか
1.テーマ別の傾向
弊社では企業からサービスの導入をご相談いただく際に、どのようなテーマで施策を導入したいかをお聞きした上でサービスを提供していますが、そのいただいたテーマに基づいて伸び率が著しい研修の受講者数を集計したのが下の表(表5)になります。今回便宜的に分類をしましたが、多少重なるテーマの場合(50代女性など)は、いずれか重きを置いているテーマに分類をしています。
グラフ1をご覧いただいてお分かりのように、受講者の数でいえば、「30〜40代」がボリュームゾーンとなりますが、「女性(対前年比:267%)」、「中高年(50代)(同:210%)」 、「若手(同:200%)」、 「有期雇用(同:189%)」、「管理職(同:180%)」の伸び率が著しい状況を示しています。以下、その各テーマの特徴をみていきたいと思います。

2.伸び率が著しいテーマ
【女性】
以前の特集(「女性活躍推進の先にあるもの」)でもご紹介していますが、昨今多くの企業が、女性の活躍できる環境づくりに取り組んでいます。
施策を整える一方、女性従業員の意識醸成が重要だという認識が広がっています。
しかし一方で、女性従業員からは「制度が変わったからといわれて、急にこれから先のことを考えろといわれても、何を手がかりにどう考えてよいか分からない」、「ロールモデルとなる先輩と接する機会がないのでこれからどう取り組んでいけば良いのか見えない」「これまでの働き方を変えるのは怖さがある」などの声があります。
このような状況下、会社としても支援のための施策(昇進の可能性の拡大や先輩社員との交流会など)を展開するので、個人側の意識の醸成のための手立てとしてキャリアデザイン研修が位置づけられてきています。
「これまで以外の選択肢を考えるのも悪くなさそう」と考え始めたり、「改めて自分らしい働き方をはっきりさせて前向きに仕事に取り組みたい」などといった自分の可能性を広げるような意識を醸成する方策として、キャリアデザイン研修に期待が寄せられています。
【50代】
50代を対象とした研修は、これまでは年金・保険などのファイナンシャルプランニングなども含んだ、退職後の生活を考えるライフデザイン色の強い研修がほとんどでした。
この層が増えた背景には、高年齢者雇用安定法の改正に伴い、企業ごとに定年制度の変更、再雇用・継続雇用の制度を整えつつあることがあります。それに加え、団塊の世代の引退が企業の労働力や技術伝承の観点からも大きな影響を与えることが予測されているなかで、従業員に再雇用や継続雇用も含めた60歳以降の働き方・生活を考えてもらう必要性が高まってきています。
そのため、多くの企業がこれまで50歳代に提供していたライフデザイン的な研修とは趣を変えて、その人自身が自分の60歳以降の働き方を含めたキャリアについて考える研修が望まれるようになってきています。
【有期雇用】
雇用形態の多様化に伴い、終身雇用の従業員以外の契約社員の形態で働く従業員も増えています。
あえて契約社員を選択している従業員は、その限られた期間の中でどのような力を身につけたいかを考え、それを意識した上でどのようなパフォーマンスを示していくかを考えることが重要となります。ある意味、その期限の限られた期間のなかで有期雇用の従業員側がその会社や組織をどう有効に活用できそうかを考えることが重要となってきます。
そういった関係性の中で、企業側も有期雇用の従業員を単なる労働力としてみるのではなく、限られた期間にどれほど充実した職業生活を送ってもらうかが施策を継続する上でも重要となっています。
その意味合いからも企業側でもそれをサポートする必要性がめばえてきています。
【若手】
以前より若手社員の離職問題が人事上の課題として多くの企業で取りざたされていますが、若手社員に対してのキャリアデザイン研修を導入し、「改めて自分らしい働き方とは何だろうか」、「今の仕事を見直してみると将来につながりそうなことがありそうか」などを考え、働くことの意味をとらえ直すことによって、結果としての離職を防ぐことを意図して実施されている企業もあります。
また最近の特徴として挙げられるのが、いったん全社的にキャリアデザイン施策を各節目となる世代(30歳前後、40代半ば、50歳など)に導入している企業の中で、それら節目の世代に加えて若手に実施されることも増えてきています。前述のように自分の仕事の意味をとらえ直すためもありますが、そこで中心となるテーマは、『なぜキャリアを考えることが会社で求められているのか』、『キャリアを考えることの重要性』といったテーマへの意識付けを行うことを主眼に置く企業も出てきています。
早い段階からキャリアを考えることの必要性を喚起することにより、今後の節目節目でのキャリアデザインについての意識を高めていくことも、重要な施策となってきていると思われます。
3.管理職のキャリアデザイン
【多様な人材を支援する管理職のキャリアデザイン】
以上述べてきたようなテーマの層とともに増えているのが、管理職対象のキャリアデザイン研修です。
その背景の一つはこれまでの流れをご覧いただいてお分かりの通り、女性従業員であったり、若手社員がキャリア自律支援施策の一環としてキャリアデザイン研修を受講した後に、そのメンバーが『今後このような方向性で自分自身のことを考えていきたい』と考えていたとしても、上司自身が『メンバーはどのような研修を受けてきているのか』『なぜキャリアを考えることが必要なのか』などをしっかり押さえた上でないと、これまでの旧来の価値観・パラダイムで対応してしまい、せっかく研修でメンバーが考えてきたキャリアプランを「無理だ」とか「これまでの経験から君はこうなるはずだ」など、メンバー個人のプランを簡単に否定してしまったりすることもあり得ます。
メンバーの直接の支援を行うのは、やはり職場の上司といえます。そのために上司自身が自分のキャリアも考え、そこで得られた視点をメンバーとの面談に生かしたり、さまざまなメンバーの支援に携わることを期待して、管理職向けのキャリアデザイン研修の数が増えている状況です。
また、管理職である上司がリーダーシップを発揮する上でも、自分自身のビジョンを物語り、人をひきつけていくことも求められます。そのときにもベースとなるのは個人の「どうありたいか」、「何をしたいか」の想いだったりします。そのためにも、管理職である上司が自分自身のキャリアをしっかり考える必要性も高まってきています。