3つのタイプから学ぶ活用のポイント その意識調査、本当に活用できてますか?
進化を続ける調査
●段階的に展開する調査
ここまで調査に関する3つの活用しきれていない事例と、その解決方法について紹介しました。
■プランニング:実施の目的や課題を整理しておく。
■フィードバック:少なくとも全従業員に全社単位、マネジメント層には部門単位の結果をフィードバックする。
■アクション:どう課題を設定し、どう対応していこうとしているのか伝えていく。各職場で意見交換する場を設ける。
各ステップのポイントを整理するとこの3つになります。いずれも重要なポイントではありますが、時間や費用などの面で負荷がかかる部分もあり、最初からすべてを満たすことは難しいというのが現実ではないでしょうか。
そこで、意識調査をうまく活用している企業を見ると、「年ごとに調査の内容を見直す」「結果のフィードバックをする対象者を徐々に広げる」といった段階的な取り組みをされています。
【図表4 調査の進化イメージ】

例えば、初回実施ですべての職場に対して各職場単位のデータを返していくのは、「どんな結果が出るか不安に感じる」「すべての職場の状況を把握しフォローするのは大きな負荷がかかる」というような不安を感じられる方も多いでしょう。このような場合は、初年度はまず管理職に自職場の結果を返し、従業員全体には全社の結果を中心に広報し、次年度に職場単位の結果を返していくといった方法があります。
初回はそもそも自社はどれくらいの得点になるのか、他社と比べて高いのか低いのかが特に気になるでしょうし、2年目は、初回と比べてどこがどれくらい変わったのかどうかの、数値の変化が気になるでしょう。3年目ともなると、施策を実践し続けた職場と、何も実践していない職場の差が拡大し、もっと有効な施策に展開すべきだと思うことも多くなるようです。このように意識調査も回数を経ていく中で、自社にあった形に徐々に進化させていけばよいのではないでしょうか。
●継続することの必要性
また、そのためには一連の活動を継続していくことが必要です。コスト削減により予算が確保できないといった状況もありますが、限られた予算の中で優先順位をどうつけるかは、経営層からのメッセージそのものといえます。
厳しい環境下でも従業員の声を聞きながら経営戦略の舵取りをしていこうという姿勢は、従業員に対する経営層の信頼の表れであり、その声に応えていく事で従業員の会社への信頼感も高めていくことができるでしょう。
さいごに
意識調査は使い方によっては、「会社側が行っている施策が正しいことを確認したいだけではないか」といったうがった見方をされてしまうこともあります。その一方で、「今まで改めて話し合うことがなかった自分たちの組織に対して、お互いがどう思っているのかがよく分かった」というように、相互理解を深め、職場の風土を変えていくきっかけとして使うこともできます。職場や会社について思ったことを自由に発言することができるかどうかは、話し合うコンテンツの問題だけでなく、場への安心感や信頼といった要素が重要になります。結果のフィードバックの場を課題解決的なアプローチのみに終わらせるのではなく、フィードバックをきっかけに、定期的な対話の機会を設けるなどの活動に広げ、職場について思っていることを気楽に、でもまじめに語り合えるような風土づくりにつなげていただくことを推奨します。