個人と向き合うタレントマネジメント 一人ひとりを主役に
なぜタレントマネジメントなのか?
タレントという言葉が人材マネジメントの領域で注目されたのは、今から10年以上前にさかのぼります。1997年にマッキンゼー&カンパニー社が「The War for Talent」を提唱。リーダー候補人材を始めとしたトップタレントをいかに獲得し、育成できるかが企業の成長を左右する最大の要因になると警鐘を鳴らしました。同じタレントという言葉を使いながらも、今日の「全社員をタレントと見なす」という考え方とはかなり異なったものといえるでしょう。
もともとアメリカは日本と比較にならないくらい外部労働市場が発達しており、必要な人材をコストと時間をかけて育成するより、必要なタイミングで必要なだけ調達した方が効率的であるという、ジャストインタイムでの人材調達戦略が主流でした。
しかしながら、これから20年間で4600万人がリタイアするといわれている労働人口の減少をはじめとした外部環境変化の中で、一部のトップタレントはもちろん、業務の最前線を支える社員の採用やリテンションすらままならない状況に追い込まれていきます(図表2)。
【図表2 タレントマネジメントが生まれた背景】

タレントマネジメントは、従来の人材戦略が行き詰る中、その処方箋として生まれてきた新しい人材マネジメントの概念で、その特徴は下記のようにまとめることができます。
■社員一人ひとりの特徴に着目したマネジメントにより
■キャリア開発と適材配置を進めることで、社員のエンゲージメントを高め
■戦略推進と持続的成長につなげる全社的かつ統合的な取り組み
欧米では、タレントマネジメントの効果として、離職率の低下や一人当たり生産性の改善、目標やプロジェクトの完遂率の向上などが報告されています。