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ハードの統合からソフトの融合まで M&Aの組織・人材マネジメント<前編>

公開日:2006/04/01
更新日:2017/11/08

評価制度の統合と運用

評価制度の統合

人事制度の中心となる等級制度が定まった段階で、次に評価制度を統合していくことになります。

人事評価制度の内容や名称は各社各様ではありますが、最近では「目標管理制度(MBO)」と「行動評価(コンピテンシー評価)」の2つの評価制度を取り入れている企業が多いようです。(その他、「知識・スキル評価」「情意評価」などを実施している企業もあります。)

ここでは最近の「目標管理制度(MBO)」と「行動評価(コンピテンシー)」を統合する場合のメリットと課題を記します。

目標管理制度(MBO)は、制度そのもの(シートや評語、標準分布等)を統一するのは簡単であっても、運用方法を統一するには注意が必要となります。この点は次の「評価制度の運用」で別途説明します。

一方、行動評価(コンピテンシー)に関しては、制度そのものを統一する事が比較的困難と言えます。何故ならば、「片方の企業は行動評価(コンピテンシー)を導入しているが、もう片方は能力評価を導入している」という場合や、「両社とも行動評価を導入しているものの、それぞれの項目・内容が異なる」という場合など、様々なケースが存在するからです。

とはいえ、いずれの場合においても、新たに行動評価(コンピテンシー)の制度を構築し、統一することが現実的です。その際、統合新会社での人材マネジメントポリシーや経営環境を踏まえた上で目的・狙いを明確にし、以下のいずれかのアプローチで統合していく方法が非常に有効です。

(1)バリュー浸透・意識づけ
・バリューそのものを熱く伝えると同時に、できるだけ具体的な行動の形で表現。バリューによる切り口であるため、網羅性にとらわれる必要はない。「何を大事にするか」を絞り込むことが肝要
・すでに明文化したものがあれば、それに沿って項目化。表面的に捉えることのないよう、ヒアリングや資料の読み込みにより背景やこだわりをしっかり理解した上で設計することが必要

(2)今すぐ行動変容!
・両社のハイパフォーマーたちの行動を、事例をもとに深く聞き出し、共通する「成果をあげるためのポイント」を抽出。
具体的な行動例を項目と紐づけて象徴的に紹介することも有効、メンテすることで統合会社のコアコンピタンスに直結
・「統合後の業務プロセスでは通用しなくなっている」という場合もあり、トップや上司からの情報も重視することが必要

(3)キャリア開発支援
・社員が自分のキャリアを考える上で役立つよう「この職種の仕事をするにはどんな能力が必要か」を整理して提示
・「プロセス」や「場面」よりも「能力」の切り口でフレームを設計。インタビュー等の情報を分析し最適なフレームを導き出す
・階層の違いも明確化が必要。階層の違いは「レベル差」よりも「視点の違い」が効果的


評価制度の運用

統合前の各社ごとの制度運用の相違が最も色濃く出るのが、評価制度の運用場面です。制度(評価フォーマット・評語・標準分布等)の統合は比較的簡単にできても、実際の運用の場面では、目標の設定から、実際の評価・フィードバック方法まで、評価者がこれまで慣れ親しんできた価値基準や評価方法がそのまま表出することがよくあります。

ただでさえ、評価者の評価マインドとスキルのバラツキを一定範囲に抑えることは困難である上に、統合時は新たな制度による運用プロセスを、両社で統一していく事が求められます。新制度に関する丁寧な説明会を実施し、詳細なハンドブックを配布しても、制度の主旨通りの運用を実現するのは非常に難しいといえます。

そこで、統合時に必要となるステップとして、評価者間で以下の3点を実際に経験していただく機会が必要になります。

1.【違いを知る】
これまでの評価基準・評価方法、実際にどのようにフィードバックを実施してきたのかを共有し、お互いの相違点を認識する

2.【違いを無くす】
お互いの違いを知った上で、新たな評価制度における評価基準・評価方法を理解し、お互いの違いを無くす

3.【理解を深める】
1,2で評価基準や評価方法を統一していく過程で、お互いの価値観や考え方に触れ、お互いの理解を深める

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