描くことだけでなく確実な実行へ 戦略実行の「アクセル」を踏み込め! 〜実行力強化プログラム〜
戦略実行がうまくいかない7つの理由
(1) 目的地とは全く違う方向にアクセル全開
〜本来の目的と異なった目標設定をしてしまっている〜
顧客価値の最大化を掲げた斬新な戦略が打ち出されたのに、現場の目標はなぜか「売上高」のみのままである。
新たな戦略が打ち出されたのに、それが部門や職場の目標に落とし込まれたものを見ると、昨年度と何が異なるのかが分かりづらい……まして個人の目標になると全く同じである……というような経験をした人はいませんか?
新規性に富んだ戦略も、部門の論理や職場の論理のフィルターを通した時点で、従来のものと何ら変わらない部門目標に変換されているケースが多く見られます。それは、今までの価値観や思考回路から抜け出すことの難しさを端的に示すものといえます。
また、中長期的な戦略が朝令暮改であったり、誰にでも具体的で分かりやすいものに落とし込まれていないような場合には、万が一に備え職場の「裏目標」が設定されるようなケースがあります。 売上重視から利益重視に変わったのに、方針転換の際の保険として、従来型の売上重視の活動を続けているというようなことが顕著な例です。
(2) 明確な地図が無い状態でアクセルを踏もうとしている
〜戦略の可視化・共有化の軽視〜
社員を意識してわかりやすくすること、共有することよりも、アカデミックで体裁の良いものにすることに、労力やコストをかけてしまっている。
崇高でアカデミックな戦略と、社員の誰にでも分かりやすい戦略があるとして、どちらの戦略に価値があるでしょうか?「コンサルタントに戦略案を作ってもらいました。本当に素晴らしい、目からうろこが落ちるようなものなのですが、どうすれば実行に移せるのか分かりません。どうしたらよいのでしょうか?」。 これは実際にクライアントから受けた相談です。経営層や、そこに近い立場にいる社員との議論共有までは問題なかったのですが、現場の社員に伝える段階で、足踏みをしていました。分かりやすく伝える術が無かったのです。
戦略はその実行の担い手である社員のために「可視化」され「共有化」されなければ、いつまでも検証されない「仮説」で終わってしまいます。明確な地図が無い中で、社員がアクセルを踏む勇気を持つことは難しいことです。
(3) サイドブレーキをかけたまま、アクセルを踏もうとしている
〜戦略実行の阻害要因のおきざり〜
戦略を実行に移す前に阻害要因の洗い出しをせずに、対症療法的な「もぐらたたき」を行うことでしのいでる。
新たなことを実施する際に、十分な検討が無いまま見切り発車をしてしまったため、後で大変な思いをしたという経験をお持ちの方はいませんか?
それが、会社の浮沈を左右する戦略に関するものであれば、さらに大変な事態へと陥ります。戦略は成功をイメージして作られるものですが、それと同時にその阻害要因をあぶり出し、そうした芽を事前に摘む必要があります。「ほころびが生じると対症療法的なもぐらたたきでトラブルをつぶす」というような悪循環に陥ると、そこから立て直すのは至難の業です。
特に、新たな取り組みが増えることによる業務負荷の増大や、新たな行動に踏み出すことへの社員の心理的負荷は、必ずといってよいほど発生します。それらの発生状況を予測し、どのように対処するかを事前に考えておく必要があります。
(4) ギアが入っていないのに、アクセルを踏もうとしている
〜ミドルの主体性を活かしていない〜
戦略推進の全てのプロセスが、ミドルマネジメントにとっては「受身の出来事」であり、戦略に対するコミットメントや当事者意識を持つことができない。
ミドルマネジメントの主体性を引き出すことがうまい会社と、うまくない会社とで、どちらの方が戦略実行力が高いと思いますか?
この質問には、ほぼ100%の割合で「主体性を引き出すことがうまい会社」という答えが返ってくると思います。しかし、「主体性をうまく引き出していますか?」「具体的にどのように引き出していますか?」という問いに、自信を持って答えることができる企業は少数派ではないでしょうか?
ミドルのコミットメントの強さは一般社員の実行力に直接的な影響を及ぼします。経営と一般社員を噛み合わせるギアに相当するのがミドルということになります。ミドルを本当の意味で経営サイドに位置づけさせ、そのコミットメントを促すことが、戦略の実現を左右する重要なターニングポイントとなります。
(5) 個々のパーツの状態など、車全体のコンディションに無頓着である
〜従業員の巻き込みの軽視〜
従業員に戦略の狙いや目的が説明されることは無く、趣旨が良く分からない「TO DO」が矢継ぎ早に降ってくる。
社員は一度伝えればある程度理解をしてくれるに違いない、いざとなれば行動をとってくれるはずである……といった希望的な観測に基づいて活動を進めている会社は無いでしょうか?
企業と一般社員との間には、コミュニケーションの質と量という観点からも「ギブ&テイク」の関係が存在します。質量ともに十分なコミュニケーションを施せば、社員のモチベーションは比例的に高まり、不十分な状況においては、社員の懸念や不安が高まります。そうした懸念や不安は、不信感や抵抗を生み、戦略推進に際して大きなボトルネックになるでしょう。
一般社員に対して十分なコミュニケーションをとること、社員の心理状況や物理的な負担など、そのコンディションについて注意を払うことが重要となります。
(6) 気がついたらガス欠、あるいはガス欠を恐れてペースダウン
〜経営資源の枯渇、現場の疲弊〜
戦略遂行に必要な経営資源(マンパワー)を把握せずに、最後は従業員の心意気に社の命運を託してしまっている。
戦略を実行に移すため、十分なマンパワーが確保されているかどうかをシミュレーションすることはあっても、シミュレーション結果を基に対応策を具体化している会社はどのくらいあるでしょうか?
新たな負荷は増えたけれども、現行のマンパワーでなんとか乗り切ろうという形で、最後は社員一人一人の頑張りに依存してしまうケースは、特に新卒入社のプロパー社員の比率が高い企業において良く見られるケースです。会社に対するロイヤルティに全てを委ねるのではなく、必要なマンパワーを掌握するとともに、部門によるマンパワーの囲い込みが行われないよう、部門間の垣根を越えて協力し合える状態をつくりあげることが必要となります。
また、現場の状況をタイムリーに把握し、燃え尽きる前に対処することの必要性は言うまでもありません。疲弊した状況は、実行力やモチベーションの劣化をもたらします。長く放置しておくことに何一つメリットはありません。
(7) スピードメーターが壊れている状態で、アクセルを踏んでいる
〜定量化、モニタリングの軽視〜
抽象的な目標が掲げられているだけで、定量化された目標や先行指標が設定されていない。そのため、戦略が浸透しているかどうか誰も把握できていない。
戦略が浸透できているかどうか、タイムリーに把握できている企業はどのくらいあるでしょうか?
ゴールが決まっていたとしても、それまでのペース配分や中間チェックの方法を定めていなければ、それはスピードメーターをはじめとする、さまざまな計器が無い中で運転をしているようなものです。売上高や利益といった結果系指標のみならず、結果系指標の「先行指標」となるような顧客満足度や業務の生産性、あるいは従業員のモチベーションの状態をとらえる指標を設定し、定期的に把握することで、必要な軌道修正が可能となります。
なかなか結果が伴わないけれども、何が悪いのかが分からないという状態にならないためにも、適切な指標を設定し、現場の状況をモニタリングできるようにしていくことが必要です。