自律的なキャリア開発を支援 人材開発におけるカウンセリングの活用
キャリアカウンセリングの現場から
■第三者が相手だからこそ、「今起こっていること」に向き合える
弊社が運営している「リクルートキャリア相談センター」は、様々な業種・規模の企業と契約し、キャリアカウンセリングサービスを提供しています。提供方法は、センターにお越しいただく来訪型もあれば、契約企業の事業所内で行う派遣型もあります。対象も、若手、管理職、役職定年や雇用延長の相談に訪れる50代の従業員の方など、様々です。相談内容も身近な同僚・上司との人間関係から、将来への不安・あせり、経営・上司への不満が出ることももちろんあります。
会社・上司への不満や人間関係など、社内を知らない社外のキャリアカウンセラーが解決できることなどないといわれることもあります。実際にカウンセリングをしていると、はじめは憤りやあきらめ、時には他者を攻撃するような強い感情が噴出することもあります。 しかし、散々話をし、感情的になったあとに出てくるのは、「とは言っても、自分も○○しないといけないんですけどね」「そんなこと言っていても何も始まらないんですけどね」と言った一言。結局は、自分が何かを変えないと、状況は変わらない、という、現実を見つめる状態に自然と変わって行きます。
これは、利害関係のない、第3者にだからこそ、さまざまな感情を、理屈抜きに、順序も気にせず、話し続けたからこその効果とも言えると思います。
同じように最近強く感じていることの一つは、管理職の方々へのキャリアカウンセリングの必要性・有効性です。実際にいくつかの企業で行っているケースでは、カウンセリング後のアンケート等において、気付きや、その後の行動の変化だけではなく、カウンセリングという場があることそのものに対する感謝の気持ちや、とても楽になった、という安堵の気持ちが聞かれることが特徴的です。
考えてみるまでもなく、管理職ほど「役割機能」として他者(部下・同僚など)と関わる機会が多くなり、自身のこと、特に「好き」「嫌い」(やりたい、やりたくない)といった嗜好や、興味関心、自身の将来についてなどを話す機会も、話せる相手も少ないからではないか、と推測できます。
確かに、組織を考えれば明らかなように、マネジメントの立場にある人は一人であり、その業績に対する責任や、数多くの部下の育成・指導など役割を抱え、どうしても自身のことは後回し、もしくは押さえつけて日常を過ごさねばならないことが多いように見えます。
一方で、若手〜中堅社員の方は、ポスト不足や、ブロードバンド化・フラット化により、なかなか次のステージが見えなくなり、何を目指すのか、何を身につけていくべきなのかを迷い、あせっているケースも多いように思います。何に向かっていくのか、何を目指すのかを、会社から与えられるのではなく、自分自身で決めなくてはならなくなってきたからともいえます。
選択型のスキルアップ・能力開発のメニューを提示しても、なかなか手が上がらない、もしくは逆に、とにかくいろいろなメニューにチャレンジするものの、それが仕事にどうつながるのか見えない、と言った現状もあるようです。本来は、自身がどうなりたいのかを、ひとり一人が考え、それに合ったオリジナルの能力開発プランを立てなければ、選択する(させる)意味がないとも言えます。
今後、企業内個人にとっても、自身で選択し意思決定する機会が増えてゆきます。 一方で、思うようにならず、現実を見つめて折り合いをつけることも重要になってくるでしょう。このような中で、年代や職種・職務を問わず、個人に対するサポート役として、キャリアカウンセリングがますます必要かつ有効になると考えています。