自律的なキャリア開発を支援 人材開発におけるカウンセリングの活用
自律的なキャリア開発をキャリアカウンセリングで支援する(3)
■カウンセリングは問題解決を支援するもの
先にも触れましたが、多くの方が「働く人の問題解決にカウンセリングは役立たないのではないか?」と疑問を感じておられるようです。「社外のカウンセラーでは、社内の問題に関れないから、カウンセリングでウチの社員の問題は解決しない」といった声も耳にします。確かに、カウンセリングやカウンセラーは、万能ではありませんから、そういう側面もあるでしょう。しかしながら、これは大変な誤解です。カウンセリングの目標は、相談に来られた方の抱えている問題解決です。
役に立たないと疑問を感じている方のお話をよくよくお聴きすると、カウンセリング=傾聴と誤解されていることがわかってきます。静かに黙って聴くことがカウンセラーだという理解です。これは大きな誤解です。確かにカウンセラー教育では傾聴は重要な要素として教育されていますが、それだけで終わるわけではありません。
傾聴が重要な要素として教育されている理由は、カウンセリングでは、クライアントとカウンセラーの信頼関係を築くことがカウンセリングの成立要件となるためです。なぜ信頼関係を築く必要があるかというと、カウンセリングの目的は、クライアントが主体的に自分自身の問題に向き合い、問題解決行動をとれるようになることです。主体的になってもらうためには、カウンセラーを信頼し、自分自身のことを伝えていただかなくてはなりません。
初対面のクライアントは、自分の問題を見ず知らずのカウンセラーに、ベラベラと喋るわけではありません。話してもらうために、まずは、クライアントに「この人は自分の話を表面的ではなく、しっかりと聴いてくれる」と安心感を持ってもらわなければならないのです。そのため、相手の話を理解するために傾聴が重要となるのです。
さらに、カウンセリングには以下のようなプロセスがあります。

カウンセラーは、さまざまな技術・手法を駆使して、これらのプロセスを進めていきます。この流れを見ると、カウンセラーの仕事は、コンサルタントのコンサルティング、営業職のセールスプロセスなど、クライアントの問題解決を行う職業のコミュニケーションプロセスと大きな違いは無いといえます。異なるのは、クライアントへの態度・姿勢、使われている技術や知識、ツールです。