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EVA導入による価値創造経営の意義 企業経営のための指標としてどの点でEVAは優位性があるのか

公開日:2005/02/01
更新日:2017/02/24

経営におけるEVAの役割

1. 共通言語としてのEVA
最近ではEVAの指標としての有効性が認識されつつあり、EVAを経営指標として導入する企業もかなりの数に上ります。しかし、EVAを経営指標に使用することと、価値創造につながるような仕組みをつくりあげることは別の問題です。一般的によく見受けられるのは、EVAの財務指標としての側面のみに注目し、自社や部門のEVAを計算することだけで満足しているという状況です。もちろん、各期の業績を把握するという意味において、企業価値に結びついたEVAを算出するというのはそれなりに意味があることですが、EVAを計算するだけで価値創造につながるというわけではありません。EVAを経営指標として活用し、企業の実際の価値創造につなげるためには、単にその企業のEVAを計算するだけではなく、経営の中に正しい方法で組み込んでいくことが必要です。

EVAによる価値創造経営(EVA経営)においては、目標設定、計画策定、投資評価、報酬制度など、経営の各プロセスにおいて、損益計算書や貸借対照表の数値をすべて内包し、企業価値に結びついたEVAを使用します。EVAを経営上の「共通言語」として位置づけることによって、全員参加型の価値創造運動を目指すのです 。

2. 改善の重要性
EVAを意思決定に使用していく際に、認識しておくべきことは、EVAの水準は実はそれほど重要ではなく、その「改善額」こそが重要だということです。一般的によくいわれているのは、EVAがプラスであることは「良い」ことであり、EVAがマイナスであることは「悪い」ことであるという考え方です。典型的な例を挙げれば、EVAがマイナスの事業からは撤退すべきであるというような議論です。

しかし、実はEVA経営において重要なのは、このようなEVAの「絶対額」に注目することではありません。現在のEVAの水準・絶対額は、過去に行われた価値創造の状況を表しているだけであり、今後の価値創造とは関係がないからです。企業経営において重要なのは、過去の業績がどうであったのかということよりも、今後その企業がどのように発展していくのかということです。意思決定の観点から言えば、現在の業績はすべてサンクです。現在までの業績はもう起きてしまったことであり、意思決定の余地はありません。意思決定を行うということは、現在の状況に何か変化を起こすことです。その意思決定の結果は今後のEVAの改善(あるいは悪化)となって表れるのです。言い換えると、「追加的な(経済学的に言えば、限界的に)」EVAをプラスにすることこそが重要なのです。

価値創造の結果はEVAの改善額となって表れますから、価値の創造を目的とするEVA経営のすべてのプロセスにおいて活用・重視していくべきことは、EVAの「絶対額」ではなく、EVAの「改善額」ということになるのです。EVAの改善額を重視することは、現在従事する事業のEVAが黒字であろうと赤字であろうと、等しく報酬(ボーナス)を得る機会が与えられることを意味します。EVAのプラスの部分を改善することだけが改善ではありません。EVAのマイナス幅を縮小した場合も、プラスのEVAを改善した際と同等の報酬を得るべきなのです。この枠組みは、業績が著しく異なる複数の事業を有する企業においても、公正・公平な動機づけのツールとして確立できます。有能な社員が大きなEVAの改善が見込める困難なプロジェクトに取り組むための動機づけともなるでしょう。EVA経営が目指すのは、全社的なEVAの改善運動を通じた価値創造なのです。

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