EVA導入による価値創造経営の意義 企業経営のための指標としてどの点でEVAは優位性があるのか
企業価値プレミアムとしてのMVA
まず、企業価値を説明するために、MVA(Market Value Added、市場付加価値)を紹介します。企業は銀行や資本市場から資金を調達し、事業活動を行うために資本として投下します。この資金調達額が投下資本であり、負債および株式資本の帳簿上の価値つまり簿価の合計額です。それに対し、企業全体の市場価値は通常簿価と乖離しています。MVAはこの差の部分を表します。

企業の株式時価総額、市場価値に注目が集まることはよくありますが、企業が創造した価値は市場価値のみならず、その元手としての資本の調達額(投下資本)との比較で考える必要があります。MVAがプラスの企業であれば、その企業の市場価値は調達額以上の価値になっており、マイナスの企業であれば、調達額以下の価値になっているということを意味します。リクルートマネジメントソリューションズが行ったランキング分析 では、2004年3月時点において日本企業の約7割はプラスのMVAとなっているのに対し、残りの3割の企業はマイナスのMVAとなっています。このMVAの大小、プラス・マイナスは、企業の将来的な業績に対する投資家の期待に基づいて形成されます。投資家が企業に対し「将来的に経済的利益を生み出してくれる」と期待すれば、MVAはプラスになり、その期待が大きいほどMVAは大きくなります。逆に投資家が「将来的に経済的利益を生み出せない」と考えれば、その企業のMVAはマイナスになります。ここでいう、「経済的利益」がEVAです。MVAは将来にわたる期待EVAに基づく企業価値プレミアムなのです。
企業の市場価値 = MVA + 投下資本
= 将来のEVAの現在価値合計 + 投下資本
企業価値とEVAの間には、「企業に投下されている資本(投下資本)と、将来の期待EVAの現在価値の合計が、企業の市場価値に等しくなる」という密接な関係が存在します。MVAがある一時点での価値創造の状況を表すストック指標であるのに対して、各期にどれだけの価値が創造されたのかを表すフローの指標として考案されたのがEVAなのです。したがって、各期のEVAを高めることが、MVAの増大をもたらし、中長期的に企業の価値創造や株価の上昇につながるのです。