経営理念を現場で実践していくためには 事例から見る管理職がリードする経営理念の共有・実践法!
事例1. IT産業A社 〜経営理念をマネジメント行動に活かす
【置かれた状況】急成長により、従業員100名から600名へと拡大
IT業界で急成長を遂げてきたA社では、成長とあわせて組織規模も急拡大してきていました。従業員数100名前後までは社長と従業員の距離も近く、大事にしている価値観・行動基準は"あうんの呼吸"で理解されていましたが、600名前後の規模になった現在、社長はじめ創業メンバーが大事にしていることが伝わらなくなっていました。そこで、役員を中心に大事にしていることを経営理念としてあらためて明文化し、さらなる事業発展に向けたマネジメントに活かしていこうとしていました。しかし、管理職は部長クラスでも30代前後と若く、それぞれの経験と勘に頼ったマネジメントがなされていました。そうした属人的なマネジメントは、現場での瞬発力を生み出してきたという面では従来の成長を支えてきた強みでもありました。一方で、共通の経営理念をマネジメントに活かすための目線が揃っているとは言えず、基本に照らして自身のマネジメントを棚卸しすることから手をつける必要がありました。
【取り組み】「マネジメント道場」を起点とした習得・実践・内省のサイクル
経営理念を事業発展に向けたマネジメントに活かすために、3年かけて取り組んでいく計画を立て、初年度を「マネジメントの確立」と位置づけました。具体的な施策として、本部長・部長を対象に毎月1回、半年かけて「マネジメント道場」と称した研修をくり返し、その間「マネジメント概念の習得」「職場での実践」「周囲のフィードバックを踏まえた内省」というサイクルを通じて、経営理念を体現したマネジメントを体感し、身につけていきました。
特に、マネジメント習得と経営理念の共有を分けて施策展開せず、自分たちのマネジメントに経営理念を一つ一つ落とし込んでいったことがポイントです。

【成果】職場における経営理念の共通言語化
管理職は従来の属人的なマネジメントから脱却し、経営理念に基づいた共通の言語・判断基準でマネジメントするようになりました。また、そうした管理職の影響を受け、職場内でも「理念で掲げていることは、意外と既に実践しているものだね」 「それは理念で大事にしていることと一致するよね」など、経営理念をベースとした共通の言語で会話される場面が増えてきました。
現在も、評価制度や育成体系などの制度・仕組み面を整えたり、事業における指標への展開など、より事業の発展に寄与するための取り組みが継続されています。