調査から導き出した育成の課題とポイント! 「ミドル・リーダー選抜・育成」という戦略人事のヒント
本人、上司、人事の協働で成長機会を創出する
育成のポイントの2つ目は、ミドル・リーダー候補に、挑戦的な仕事機会を意図的に与えることです。職場において、経験を通じて学ぶという「経験学習」の考え方が普及しつつあるのです。あるべき姿に近づくためには その力を発揮することが求められる機会(仕事経験)を与える必要があります。なかでも、主任・係長クラスのように、現在ミドル・リーダーの役割を期待されていない従業員に対して、早期育成を行いたい場合はなおさらです。
仕事機会の提供は上司や各部門の仕事と捉えられがちですが、人事がサポートできることも実は多くあります。例えば、上司が意図的に仕事を割り当てるためのガイドラインの作成は、人事が主導して行うことができるのです。「他部署との調整」「業務の改善提案」「後輩の育成」など、能力を高めるために有効な仕事をリストアップしている先進企業も存在します。
特に、「経験学習」研究の第一人者である北海道大学教授 松尾睦先生は、成長し続けるミドル・リーダーは、「変革参加」「部門間連携」「部下育成」といった経験から多くのことがらを学びとっていたことを報告しています。こういった研究は、候補者が能力を高めるために有効な、経験しやすい仕事を抽出する際にも大いに参考になるでしょう。
職場によっては能力を高める経験を積みにくいところもあるかもしれません。そういった場合、人事部門が異動・配置にまで踏み込んで支援する企業も現れています。具体的には、リーダー候補者である人材の今後の育成計画を関係者で議論する「人材育成委員会」を設置するという方法です。「人材育成委員会」で上司・各部門が目線を合わせることで、ミドル・リーダーの育成を会社全体で進めていくことが可能になり、各部門での「抱え込み」の問題を抑制できます。
環境変化を乗り越えるミドル・リーダーを育成していくためには、本人の努力だけでなく、上司や各部門・本社人事が協働し、有機的な施策を立案・推進していくことが望ましいです。取り組みの効果を高めるために、どのような協働が考えられるのか、弊社も交えてディスカッションする機会をいただければ幸いです。